坂田栄男九段 ~実利、スピード~
歴史に名が残る大棋士、坂田栄男九段。
タイトル獲得数は64個に及び、他を寄せ付けない絶対王者だった坂田先生の大きな特徴といえば「実利」「スピード」ではないでしょうか。
どのようにスタートダッシュをかけ、早い段階でリードを奪っていったのか、ご覧いただきましょう。
テーマ図
坂田先生といえば三々。
坂田先生には様々な代名詞があります。
白番は、坂田先生のライバルである藤沢秀行先生。
厚み派の最右翼と言える先生です。
ここまでは、まだ両先生の特徴が現れている展開ではありません。
次の坂田先生の一手から大きく特徴が現れます。
1図
1図の黒1とツメてみるのはどうでしょう?白2と出られると黒3は省けそうにありません。白4の大場に回られると、コミの負担が重く感じそう…。もう一つは白2が来たことで、aの狙いが厳しくなるかも。
ということで、黒1はイマイチでしょうか。
2図
では、2図の黒1とツメるのはどうでしょうか? 左下の白はとても強く、狙いもないので価値が低い場所でしょう。
白2から8くらいでも、中央の価値のほうが大きそうです。
実際の進行
坂田先生が選んだのは、黒1の打ち込みでした。白4まではほぼ必然ですが、ここで黒5を一本打ってから7に戻ったのが緩まない打ち方です。白8の守りを催促し、黒9へ回って実利を得ながらスピードで優位に立っています。
3図
黒5を打たずに、3図の1と単に戻ると、白2とブツカられて黒の形が窮屈になり、白地も実戦より大きくなります。さらに、白aの嫌味も残ってしまいます。