第1期マイナビ女子オープン 本戦1回戦第7局
山田久美女流三段vs船戸陽子女流二段

自戦記 船戸陽子


「楽園という名のバッグ」

何故だかいつも荷物が多い。
携帯と財布しか入らないようなプチバッグの生活は、女の子らしくてとても可愛いと憧れているのだが、現実は「これからご旅行ですか」と言われる次第。
扇子だのひざかけだのペットボトルだの、対局の日はなおさらだ。
今日はバルパライソと名づけられた巨大なバッグをひっぱりだした。
このバッグを選んだのは、本棋戦の予選で3連勝できたあの日も
このバッグだったから。ささやかなげんかつぎ。
パライソ(楽園)なんて勝ちの向こう側にしかないのにね。

▲船戸 陽子△山田 久美
持ち時間3時間(チェスクロック使用)
  初手からの指し手
▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩
▲6六歩 △6二銀 ▲5六歩 △3二金
▲7八金 △4一玉 ▲2六歩 △3三角
▲5八金 △2二銀 ▲4八銀 △5四歩
▲6九玉 △5三銀 ▲3六歩 △7四歩
▲7七銀          (第1図)

尊敬する先輩
ずっと前から山田久美さんのファンだった。
もちろん尊敬する先輩ではあることに間違いないもののそれ以上にファンです、と断言したい。
山田さんの魅力は私の拙い文章力では到底表現することはできない。
すごい美人、きっぷがいい、など当たり前のつまらない説明しかでてこない。
だが、とにかく会えばわかる。
きっと誰もがファンになる。そんな山田さん。
とにかくファンであるので、お仕事をご一緒させていただくときには、
いつもときめくし小躍りして喜んでしまう。

では、そんな相手と対局するのはやりにくくないのか。
むしろとてもうれしい。
ベッカムや中村とプレイできるサッカー少年のように。
井上雄彦の生原稿を拝む漫画家の卵のように。
カールラガーフェルドの仕事を間近で見る服飾専門学校生のように。
大好きな山田さんとの対局だから、私は相手の得意戦法に踏み込むことに決めた。
そう、矢倉だ。

第1図以下の指し手
△5一角 ▲7九角 △5二金▲6七金右
△4四歩 ▲6八角 △3三銀 ▲7九玉
△3一玉 ▲8八玉 △2二玉 ▲3七銀
               (第2図)

私の迷い
 互いに矢倉に入城したところで私は悩んでしまう。
指したい手が多すぎて絞れないのだ。
▲1六歩もついてみたい。
飛車先はこのままか、もうひとつ伸ばすか。
右銀は3七と5七どちらに上がるのがよいのか。
桂はいつ、どのようにして活用すべきか。

そもそも仕掛けはどうするのか。

私は迷ったあげく▲3七銀(第2図)と上がった。
これがベストとは決して思わなかったけれど
▲4六角、あるいは▲3五歩△同歩▲同角という順を残しておきたかった。
そろそろ局面が動いてきそうである。

  第2図以下の指し手
△7三角 ▲1六歩 △4三金右▲1五歩
△8五歩 ▲4六銀 △4五歩 ▲3七銀
△4四銀右▲4八飛 △5五歩 ▲同 歩
△5二飛 ▲5八飛 △5五銀 ▲5六歩
△4四銀引▲1八香 △6四歩 ▲5九飛
               (第3図)

 

 

     

 

山田−船戸戦の棋譜
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