第1期マイナビ女子オープン 本戦2回戦第3局
山田久美女流三段vs千葉涼子女流三段

観戦記 佐藤啓 


「雪化粧の日の熱い戦い」

前日の予報が見事に当たり、この日の東京は朝から雪。
2年ぶりの積雪で、千駄ヶ谷もうっすらと雪化粧。
最低気温は1.1度まで下がり、とにかく寒い1日だった。

ストップウォッチとにらめっこしていた記録係から
「それでは時間になりました」の声が掛かり対局開始。
先手の千葉は20秒ほどでスッと▲2六歩と突くと、山田はピシッと△3四歩。
このリズムは終局まで続いた。

▲千葉 涼子△山田 久美
持ち時間3時間(チェスクロック使用)
  初手からの指し手
▲2六歩△3四歩▲7六歩△4四歩
▲2五歩△3三角▲4八銀△8四歩
▲7八銀△8五歩▲7七銀△2二銀
▲5六歩△4二角▲7八金△5四歩
▲6九玉△6二銀▲3六歩△3三銀
▲4六歩△3二金▲4七銀△5二金
▲3七桂△4一玉▲6六銀△4三金右
▲5八金△6四歩▲5五歩△6三銀
▲4五歩△同 歩▲2四歩(第1図)

昼休前の駆け引き
△3三角を指して山田はスッと席を外す。
すると千葉は窓の方へ歩み寄り部屋のカーテンをしっかり閉めた。
確かに寒い。
少しでも保温性を上げようとしたが効果はなく、結局クローゼットから自前のパープルのタオルマフラーを取り出して肩に掛けた。

先手の急戦矢倉に対し、後手の山田は取りあえず守勢にまわる。
ただ「ずっと攻められて、そのまま潰されるのだけは避けよう」と思っていた。

千葉は22分考えて▲5五歩と仕掛けた。
控え室では既に先手ペースとの評判。
指された瞬間、山田も「きたか」という感じで少し上を見上げた。

このあたりお互い一手一手に熟考を重ねている。特に千葉の長考が目立つ。
▲4五歩に14分使い、△同歩と取られてまた考え込む。
昼休まであとわずか。
雰囲気からして、もう指しそうにないと思っていたら、
5分前になって▲2四歩(第1図)と突いた。

山田も意表を突かれたか、チラッと見て時間を確認している。
後はお茶を口に運んだりして、もう手を読むというより時間の経過を待っている感じだ。

記録係がチェスクロックに目をやり「昼食休憩です」。
2人は無言で盤の前に座っていたが、先に山田が席を立つ。
千葉はそのまましばらく対局室に残っていた。
雪は一層激しくなり、昼食に外に出るのもおっくうになる。

 第1図以下の指し手
△2四同歩▲4五桂△4四銀▲4六銀
△3一玉▲3五歩△同 歩▲5四歩
△同 銀▲5五銀左△同銀左▲同 銀
△5七歩        (第2図)

     

 

山田−千葉戦の棋譜
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