第1期マイナビ女子オープン 本戦1回戦第6局
石橋幸緒女流王位vs斎田晴子女流四段

観戦記 雨宮知典


短手数で決着かと思われた将棋が、第5図で100手になった。
斎田はやっと飛車を5筋に振り=A勝ちを意識した。


第5図からの指し手
▲4八銀 △4九銀 ▲4五銀 △3三歩
▲2四桂 △2二玉 ▲6二飛成△3四歩
▲4四角 △3三銀 ▲5一龍 △6五馬
▲4六玉 △5一金 ▲3三角成△同 桂
▲3二飛 △同 馬 ▲同桂成 △同 玉
▲5四角 △4三金 ▲4四銀打△8六飛
▲5六歩 △2四角     (投了図)
まで126手で斎田の勝ち

残酷な投了図
第5図で駒の損得はなくなっていた。
しかし、駒の効率には大差がついている。
もう斎田に妙手は必要なかった。

筆者には△3三歩が決め手に思えた。
粘りが利かない石橋は玉砕するしかなく、
それが斎田にとって最も安全で確実な勝ち方だった。
最後は合駒がない石橋の玉に、飛車と角で王手を掛け、トドメを刺した。
石橋は駒台に手を添え、はっきりとした声で「負けました」と告げた。



投了図は残酷だった。
石橋が粘り強い指し回しでいったんは優勢になったが、
その痕跡などかけらも残っていない。
パズルや芸事の作品などではなく、戦火に焼き尽くされた廃墟のようだ。

記録係のペンの音が、妙に大きく聞こえた。
石橋と斎田は盤面を見つめたまま、しばらく動かなかった。

     

 

石橋−斎田戦の棋譜

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