徐々にポイントを稼いで、この辺で決め手が出る予感がしたのが第3図。
なにかあるはず…!
そう、この時のために時間を沢山残しておいのだ。
この局面は色々手が見えた。
第一感は▲5四桂。
銀が逃げれば▲4三金があるけれど、3三玉が気になった。
以下▲4二桂成、△4四玉。
こうなってみるとなかなか後手玉を捕まえるのは容易ではない。
これで悪いはずはないと思ったけれど、持将棋になる気がした。
大事なことは後手玉を3三に上がらせないこと。
次に発見したのが▲2五桂だった。
発見した時はあまりピンとこなかったが、読んでるうちに自分らしい決め方を見つけた。
そして△2一桂に▲3三歩~▲5三金(第4図)!
これが▲2五桂からの読み筋だった。
指した瞬間ガッツポーズをしたくなるくらい、気持ちの良い一手だった。
▲5三金を指した瞬間、村田初段は一瞬時間が止まったように動かなくなった。
そして数分経ってから溜め息が聞こえた。
あとは落ち着いて、寄せるだけ…!
正直、この後はいつ投げてもおかしくない状況だった。
でも、村田初段は1パーセントの確率だとしても、最後まで戦う。
特に私が心を打たれたのは、投了寸前の△8四歩(第5図)。
もちろん▲同龍で詰みだけれど、▲同銀成なら玉を取られて大逆転だ。
絶対に負けたくないという気持ちがすごく伝わってきた。
きっと、村田初段とはこれからもずっと、宿敵として戦って行くんだろうな
と感じさせられた一局だった。
会館をでると、ちょっと肌寒い、でもすごくいい風が待っていた。
そうそう、タイムカプセルに入れた20歳の自分へのメッセージの書き出しは
「あなたはきっと今ごろ女流の一番になって幸せに暮らしているね。よく頑張ったね」。
もしタイムカプセルが返ってきたら、また埋めて、5年後に迎えに行きたい。