第1期マイナビ女子オープン 本戦1回戦第5局
村田智穂女流初段vs鈴木環那女流初段

自戦記 鈴木環那


徐々にポイントを稼いで、この辺で決め手が出る予感がしたのが第3図。

なにかあるはず…! 

そう、この時のために時間を沢山残しておいのだ。

この局面は色々手が見えた。

第一感は▲5四桂。

銀が逃げれば▲4三金があるけれど、3三玉が気になった。

以下▲4二桂成、△4四玉。

 

こうなってみるとなかなか後手玉を捕まえるのは容易ではない。

これで悪いはずはないと思ったけれど、持将棋になる気がした。

大事なことは後手玉を3三に上がらせないこと。

次に発見したのが▲2五桂だった。

発見した時はあまりピンとこなかったが、読んでるうちに自分らしい決め方を見つけた。

そして△2一桂に▲3三歩〜▲5三金(第4図)! 

これが▲2五桂からの読み筋だった。

指した瞬間ガッツポーズをしたくなるくらい、気持ちの良い一手だった。

▲5三金を指した瞬間、村田初段は一瞬時間が止まったように動かなくなった。

そして数分経ってから溜め息が聞こえた。

あとは落ち着いて、寄せるだけ…!

正直、この後はいつ投げてもおかしくない状況だった。

でも、村田初段は1パーセントの確率だとしても、最後まで戦う。

特に私が心を打たれたのは、投了寸前の△8四歩(第5図)。

 

もちろん▲同龍で詰みだけれど、▲同銀成なら玉を取られて大逆転だ。

絶対に負けたくないという気持ちがすごく伝わってきた。

きっと、村田初段とはこれからもずっと、宿敵として戦って行くんだろうな

と感じさせられた一局だった。

 

会館をでると、ちょっと肌寒い、でもすごくいい風が待っていた。


そうそう、タイムカプセルに入れた20歳の自分へのメッセージの書き出しは

「あなたはきっと今ごろ女流の一番になって幸せに暮らしているね。よく頑張ったね」。

もしタイムカプセルが返ってきたら、また埋めて、5年後に迎えに行きたい。

 

 

     

 

村田−鈴木戦の棋譜
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