序盤はたんたんと進み、第1図。
ここで迷った。
後手の△8五歩~△9五歩と突いてある形は穴熊に組みやすくなる。
△8五桂~△9六歩の端攻めが消えているからだ。
ただ、▲1五歩と端を詰めている分、
▲2五桂~▲3五歩と攻め合いに持ち込むのも有力。
すでに少し作戦勝ちを意識していた局面、ここは慎重に慎重に…。
どちらもある、という局面が一番迷う。
序盤はいつも通りの早いペースで進めたけれど、ここで時間を使うことにした。
「いつものように穴熊に組めば勝利間違いなし!」。
突然頭の中でこの言葉がBGMのよう流れた。
朝届いた、ファンの方から頂いた一通のメールに書いてあった言葉。
…これは、やるっきゃない!(笑)。 私は穴熊に決めた。
小学生の時の思い出は、将棋に関するものばかり。
でも、そんな中で一つだけ、なぜかずっと記憶に残っていることがある。
それは小学6年生の時に皆で埋めた、タイムカプセルのこと。
題は20歳の自分に送るメッセージ。
ただ、タイムカプセルなのに、私はその内容をほとんど暗記してしまっている。
たぶん、忘れよう忘れようと自分に強く暗示をかけたせいで、
逆に気になって脳に深く刻まれてしまったのかもしれない(笑)。
20歳の自分に言いたいことが沢山ありすぎて、
書ききれなかったことがとても懐かしい。
ふとそんな事を思い出して、また盤に集中した。
昼休前の第2図。
▲3五歩を突いて、確かな手応えを感じた。
「これは行ける!」しかし、銀で取ったのは意外だった。
▲同角~▲3四桂があるので、取れないと思っていたから。
けれどよく読んでみると、それでは単調過ぎてなかなか攻めが繋がらない。
そこで感覚的に▲5五歩が良いと思った。
△5五同歩なら今度こそ▲3五角~▲3四桂がある。
対局中、村田さんの呼吸や表情で「苦しい」と思っているんだなと思った。
でも、まだまだ気を抜いてはいけない。
良くなってからが勝負なのだ…!