第1期マイナビ女子オープン 本戦1回戦第5局
村田智穂女流初段vs鈴木環那女流初段

自戦記 鈴木環那


序盤はたんたんと進み、第1図。

ここで迷った。

後手の△8五歩〜△9五歩と突いてある形は穴熊に組みやすくなる。

△8五桂〜△9六歩の端攻めが消えているからだ。

ただ、▲1五歩と端を詰めている分、

▲2五桂〜▲3五歩と攻め合いに持ち込むのも有力。

すでに少し作戦勝ちを意識していた局面、ここは慎重に慎重に…。


どちらもある、という局面が一番迷う。

序盤はいつも通りの早いペースで進めたけれど、ここで時間を使うことにした。

「いつものように穴熊に組めば勝利間違いなし!」。

突然頭の中でこの言葉がBGMのよう流れた。

朝届いた、ファンの方から頂いた一通のメールに書いてあった言葉。

…これは、やるっきゃない!(笑)。 私は穴熊に決めた。


小学生の時の思い出は、将棋に関するものばかり。

でも、そんな中で一つだけ、なぜかずっと記憶に残っていることがある。

それは小学6年生の時に皆で埋めた、タイムカプセルのこと。

題は20歳の自分に送るメッセージ。

ただ、タイムカプセルなのに、私はその内容をほとんど暗記してしまっている。

たぶん、忘れよう忘れようと自分に強く暗示をかけたせいで、

逆に気になって脳に深く刻まれてしまったのかもしれない(笑)。

20歳の自分に言いたいことが沢山ありすぎて、

書ききれなかったことがとても懐かしい。

ふとそんな事を思い出して、また盤に集中した。

 

昼休前の第2図。

▲3五歩を突いて、確かな手応えを感じた。

「これは行ける!」しかし、銀で取ったのは意外だった。

▲同角〜▲3四桂があるので、取れないと思っていたから。

けれどよく読んでみると、それでは単調過ぎてなかなか攻めが繋がらない。

そこで感覚的に▲5五歩が良いと思った。

△5五同歩なら今度こそ▲3五角〜▲3四桂がある。

対局中、村田さんの呼吸や表情で「苦しい」と思っているんだなと思った。

でも、まだまだ気を抜いてはいけない。

良くなってからが勝負なのだ…!

 

     

 

村田−鈴木戦の棋譜
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