第1期マイナビ女子オープン 本戦1回戦第1局
中井広恵女流六段vs里見香奈女流初段

観戦記 週刊将棋編集長  日比生 康弘


「イナズマの角一閃」

10月20日、第1期マイナビ女子オープン予選一斉対局を勝ち抜いた8人が、

本戦トーナメントの枠を自ら決める公開抽選に臨んだ。

予選決勝を一番早く通過した中井が最初にくじを引く。

中井はにっこり笑って、手にしたくじを隠すふりをしておどけてみせた。

こうして注目の初手合かつ1回戦屈指の好カードが決定した。

 

▲中井 広恵△里見 香奈
持ち時間各3時間(チェスクロック使用)

初手からの指し手
▲7六歩 △5四歩 ▲2六歩 △5二飛
▲2五歩 △3四歩 ▲2二角成△同 銀
▲9六歩 △9四歩 ▲7八銀 △6二玉
▲4八銀 △7二玉 ▲4六歩 △3三銀
▲4七銀 △8二玉 ▲6八玉 △7二銀
▲7九玉 △2二飛     (第1図)


第1図以下の指し手
▲6六歩 △4四銀 ▲5八金右△3三桂
▲8八玉 △8四歩 ▲3六歩 △8三銀
▲5六銀 △7二金 ▲6七銀引△2一飛
▲7五歩 △4二金 ▲7七銀 △2五桂
               (第2図)

 

 私が里見香奈です


先に入室し下座に座って待つ里見。

前日、学校を早退し飛行機で上京、将棋会館に宿泊した。

翌日も学校なので、当日の深夜バスで出雲に帰る、相変わらずの強行軍。

特に会話を交わすこともなく対局は始まった。

「強い人と指せるのはうれしい」と話していた里見の第1手は△5四歩。

「私が里見香奈です」と挨拶するかのような堂々の中飛車宣言である。
対する中井は、実戦例も多い角交換+端歩付きから左美濃に構える手法を採った。

第1図は、里見が5筋から2筋へ飛車を回ったところ。

この手で△3二金と上がったのが、2月8日に行われた

第29期女流王将戦本戦トーナメント2回戦の対石橋幸緒女流四段(当時)戦だ。

その一戦は里見が制したが、本局は手を変えてきた。

男性棋士の棋譜を勉強して、△2二飛と回るほうが有力と思ったからだという。

 

     

 

中井−里見戦の棋譜
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