第25回 お菓子と土ものの和食器|くらしの本棚

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第25回 お菓子と土ものの和食器

takako@caramel milk tea稲田多佳子さんがお菓子を焼く日々のあれこれを綴るエッセイ。
おまけのおいしいレシピもご紹介します。

お料理が好きだからうつわが好きなのか、うつわが好きだからお料理が好きなのか。卵が先かニワトリが先か的な疑問、答えはもはや必要ないよねと思うくらいに、そのどちらかを取ることは難しい。気に入ったうつわや新しいうつわは台所に向かうモチベーションにもなってくれるので、もしかしたら若干うつわ優位なのかしら、いやいや、うつわだけあってものせるものがなくちゃ何も始まらないわけだから。両者支え合ってひとつ、どちらかが欠けると成立しない、私の中で暮らしを楽しむために大切な2つの要素です。

まずは日常使いするうつわについて。洋食器と和食器のどちらがスタメン的存在になるのか、数年単位で変化する気分の波にゆらゆらと身を任せ、その時々でお気に入りを取り出しやすいよう、ああでもないこうでもないと頭を悩ませつつ、食器棚の整理、入れ替えをしています。
去年あたりから、しばらく静まっていた和食器熱が再燃。台所から離れたところに収納している和食器たちを、LDKの食器棚に呼び戻しました(うちの食器収納は、LDKのスペースだけに収まらないため、仕方なく家中の数箇所に分けて置いているという、不便な現実)。そして、「増やしても収納するところがないし」と言い聞かせ、長いこと買い控えていた土もののうつわ、胸に響くものに出会った時に限り、厳選しての購入を自分に許すことにしたので、お気に入りがまた少し増え、嬉しいこの頃です。食器棚は悲鳴を上げているような気がしなくもないけれど、とりあえず聞こえないふりで(笑)。

夏には夏使いの美しさがあり、通年通して楽しめる土もののうつわも、目で見て手で触れて気持ちをも温かく和ませてくれる威力をまざまざと実感するのは、やはり冬のこの季節。
ここぞとばかりに大いに活躍させたいと、日々の食事だけでなく、お茶の時間、おやつの時間にも自由に合わせ、素晴らしき手仕事の世界から生まれた土のぬくもりを堪能しています。

ぽってりと厚地のフリーボウルや蕎麦猪口に、カフェオレやミルクティーを淹れたり、丸みのあるご飯茶碗でお抹茶を点てたり。マグカップでトライフルやミニパフェ、小鉢や湯呑みにレアチーズケーキやムースを固めたり、ティラミスを作ったり。大きなところでは、ホールケーキやタルトを盛り付けたケーキトレイのようなフラットな丸い大皿、パンやチーズを並べたカッティングボードのような大きな長角皿を、テーブルの真ん中にどーんと据えた時の存在感たるや、目を見張るものがあります。

最近印象に残っているお菓子とうつわの景色をひとつ。焦がしキャラメルみたいなダークブラウンの釉薬がかかった中皿に、大きく焼いたプリンをさくっとすくって盛り付け、泡立てたクリームをぽとんとのせて、砕いたナッツとシナモンパウダーをふった時のこと。洋と和が溶け合ったひと皿が醸し出す、あの空気感と言ったら。何気ない普段のお茶時間でしたが、お菓子とうつわから生まれるささやかだけど満ち足りたひと時に、「これだからうつわは大事なのだわ。」と再確認、深く納得したわたしでした。

これから季節は厳しい寒さに向かうけれど、暖かなお部屋でいただく冷たいお菓子のおいしさは格別。この時季だからこそおすすめなのが、温かみのある土ものの和のうつわと冷たいお菓子とのマリアージュです。10月の末に出版したお料理の本、「簡単、絶品おつまみ」に掲載しているいくつかのお菓子も和食器と合わせ、こんな感じに撮りました。どちらかというと夏よりも冬が似合うスタイリング、ですよね。

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今回ご紹介するレシピは、ホリデーシーズンからバレンタインデー、冬の華やかなシーンに似合う、ちょっとお洒落なチョコレートの冷たいお菓子。ほにょほにょのマシュマロ、サクサクのビスケット、しっとりレーズン、異なる3つの食感が賑やかな味わいを織りなすテリーヌショコラです。溶かしたチョコレートを泡立てるように混ぜて空気を抱き込ませているから、ねっとり濃厚ではなく、ほろっと軽やか。ついもうひとつと食べたくなるような生地に仕上がります。栗とナッツ、ラム酒をオレンジリキュールに代えシンプルにオレンジピールのみにするなど、混ぜ込む材料は自由にアレンジしても大丈夫。コーヒーにもお茶にもお酒にも合うショコラ、作ってみてくださいね。

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「テリーヌショコラ」

材料 (17.5×5.7×高さ6cmのパウンド型 1台分)

製菓用チョコレート 100g
生クリーム 80ml
ラム酒 大さじ1/2

レーズン 50g
ラム酒 大さじ1/2
マシュマロ 20g
ダイジェスティブビスケット 2~3枚

下準備

・製菓用チョコレートを細かく刻み、ボウルに入れる。
・型にオーブンシートを敷く。

作り方

①レーズンをザルに入れ、熱湯を回しかけた後、キッチンペーパーで水気を拭き、ラム酒を合わせてなじませておく。マシュマロは粗く刻む(キッチンばさみが便利)。ダイジェスティブビスケットは粗く砕く。

②生クリームを火にかけるか、電子レンジで加熱して沸騰させ、熱々の状態でチョコレートの入ったボウルへ一度に注ぎ入れる。泡立て器で静かに混ぜながら溶かし、ラム酒を加えてなめらかに混ぜる。

③ボウルの底を氷水に当てて、静かに混ぜながら粗熱を取る。人肌~少し冷たいくらいになれば氷水から外し、軽く泡立てるようにして混ぜる。チョコレートに泡立て器の筋が残るくらいになれば(具材が沈まない程度の状態)、①を加え、ゴムベラで全体に混ぜる。

④型に入れてしっかりと詰め、表面を平らにし、ラップをかけて、冷蔵庫で冷やし固める。しっかりと固まったら、好みの厚さに切り分ける。

※ここではマクビティのダイジェスティブビスケット(バニラクリームサンド)を、クリームをつけたままで使用しました。

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プロフィール

稲田多佳子(著者)
京都に生まれ育ち、現在も京都で暮らす。
HP「caramel milk tea」 で手作りお菓子の写真を掲載したのがきっかけとなり、2004年にお菓子のレシピ本を出版。以来、年に数冊のペースでお菓子やお料理のレシピ本を出版している。代名詞といえば、焼きっぱなしの焼き菓子とロールケーキ。ひとくち食べると思わず心も笑顔になるような、毎日でも食べ飽きず作り飽きることのない、簡単でやさしい味わいのお菓子作りがモットー。
日本茶インストラクター、ティーアドバイザー、ジュニアオリーブオイルソムリエを取得。