【番外編】街飲み 行こうよ。1度注ぎ VS 3度注ぎ
2017.07.19
こんにちは、日本ビール文化研究会の大登貴子と申します。仕事場ではビールの知識を深め・広める日々を送り、自宅では高校生と中学生の球児2人の弁当作りに頭がいっぱいな母です。
早速ですが、みなさんは、定番ビール派ですか?それとも、いろいろ試す派ですか?
定番ビールの安定感も大事ですが、私は、試す派です。
気分によっても、時間帯によっても、天気によっても、料理によっても、飲みたいビールは変わってきます。
最近は、飲食店やスーパー・コンビニに置かれるビールの種類が豊富になったり、インターネットで遠方のクラフトビールを購入できるようになったりと、選べるビールがどんどん広がるありがたい時代です。
そんな時代を思いきり満喫するために、このエッセイでは、いろいろなビールの違いを味わう、「飲み比べの楽しみ」をご提案していきます。
皆様にとって、今年の夏も素晴らしいビール日和になりますように!
夏本番、やってきましたね。この時期の喉の渇きは「ビールのため」と断言できるほど、一杯目がたまらない季節です。
今回は、趣向を変えて、街飲みに出かけます。
自宅と違って、街飲みの楽しみは、なんといっても樽から注がれた生ビールですよね。滑らかな泡、グラスの底から立ち上る気泡、ビールの液体は妖艶さも兼ね備え、酷暑と労働から我が身を解放してくれます。
樽のサイズは様々ですが、10Lぐらいのものから、大型店では500L、1000Lなどのタンクがあります。樽生ビールは専用のサーバーから注がれますので、ここが、自宅とは違うポイント。泡、液体、温度が三位一体となり、極上のビールが完成します。
サーバーからの「注ぎ方」には、ビールの種類によって違いがあり、お店ごとに“こだわり”があります。熟練の技から生み出される違いを比べてみましょう。今回は、銀座にあるサッポロライオン2店を訪ねました。
昭和九年創建、現存する日本最古のビヤホール「ビヤホールライオン 銀座七丁目店」におじゃましました。戦火から免れたビルには、ビールを愛する人々の思いが受け継がれております。
メインカウンターでは、熟練の技「1度注ぎ」を見ることができます。
「1度注ぎ」とは、その名の通り、生ビールを一度に注いでしまう注ぎ方。「1度注ぎって、どこが難しいの?」と思っていませんか。だって、缶ビールは誰でも一回で注げるんですから。
しかし実は、生ビールでの「1度注ぎ」は、名人しかできないスゴ技です。一気に液体と泡の比率を7:3に、ピタリと合わせて注いでしまうのですから。しかも、かかる時間はたったの3秒という、早技でもあります。
では実際に、見てみましょう、これが「1度注ぎ」です!
ここまでで3秒です。
写真1枚目でビールが勢いよく出てきて、2枚目では液体がぐるぐる回転して泡をつくっています。3枚目では、泡が落ち着きつつあり、4枚目でフィニッシュ。
この間、左手はビールのカランから放れています。ビールの出てくるスピードが変わっていないという証拠ですね。この変わらないスピードで、すべてのジョッキが液体:泡=7:3、圧巻です。
ちなみに、私のカメラではなかなかこの早技を捕えられず、最後、奇跡的にフィニッシュを撮影できました。(撮影にはなんと40分かかっています。)
味は、「まろやか」が第一印象です。その理由は、「1度注ぎ」の勢いの良さにより、余分な炭酸ガスを抜き、雑味を泡に閉じこめることで、すっきりとしたのど越しと苦みの少ないビールに仕上げるから。泡も均一で柔らかさがあります。泡付け機能があるサーバーからでてくるクリーミーさとは別物で、泡の一つ一つに存在感があります。
続いて、銀座七丁目から、銀座五丁目へ移動します。次のお店は「銀座ライオン GINZA PLACE店」です。昨年オープンしたGINNZA PLACEの地下1階にあります。
「3度注ぎ」は、3度に分けて注ぐ方法です。
1度目はグラスの6割ぐらいで止めて、いったん置きます。泡をあえて多めにつくったあと、泡が落ち着いたら、2度目を注ぎます。2度目で完成に見えますが、まだまだ。2回目の泡も落ち着かせるため、小休止させます。最後の3度目では、泡が持ちあがるようにいれて、ぴったり完成します。
「1度注ぎ」と違って、時間がかかる注ぎ方ですね。
さて、早速飲みたいところですが、「3度注ぎ」のときは、飲む前に是非やっていただきたいことがあります。それは、香りを楽しむこと。
「3度注ぎ」で注がれたビールは、時間をかけたことよって、香りがとても豊かになるんです。ホップの青々しい香りと、麦芽からくるパンっぽい香りが、ほどよく立ち上っています。
この香りをたっぷり浴びて、それでは、いただきましょう。 グラスを口につけると、柔らかな泡がリラックスさせてくれます。さらに一口飲むと、麦芽のずっしりと重く甘い味わいと、ホップの苦味がミックスして、重厚なビールとなっています。この注ぎ方は、二酸化炭素が程よく逃げてまろやかな味わいながら、苦味のバランスも感じることができます。泡きりもしませんので、自然な山形をした泡が美しいです。
今回は、写真撮影のため特別に、カウンターの中に入らせていただきましたが、スタッフの方のお仕事の多彩さには目を見張ってしまいました。注ぐことだけでも集中力を要するのに、グラスの洗浄、炭酸ガスボンベの調整、グラスを冷やすために氷の補充、樽がなくなると交換する等々……。ビール1杯が注がれるまでこんなにたくさんのお仕事があるのか、と感心しっぱなしで、お店を後にしました。
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