第3回 フルーツビール対決! オレンジ VS 山葡萄
2017.07.12
こんにちは、日本ビール文化研究会の大登貴子と申します。仕事場ではビールの知識を深め・広める日々を送り、自宅では高校生と中学生の球児2人の弁当作りに頭がいっぱいな母です。
早速ですが、みなさんは、定番ビール派ですか?それとも、いろいろ試す派ですか?
定番ビールの安定感も大事ですが、私は、試す派です。
気分によっても、時間帯によっても、天気によっても、料理によっても、飲みたいビールは変わってきます。
最近は、飲食店やスーパー・コンビニに置かれるビールの種類が豊富になったり、インターネットで遠方のクラフトビールを購入できるようになったりと、選べるビールがどんどん広がるありがたい時代です。
そんな時代を思いきり満喫するために、このエッセイでは、いろいろなビールの違いを味わう、「飲み比べの楽しみ」をご提案していきます。
皆様にとって、今年の夏も素晴らしいビール日和になりますように!
今回は、梅雨のジメジメした気分を一気に吹き飛ばしてくれる、フルーツビールを飲み比べします。最近は、フルーツビールがたくさん出てきましたね。ありがたいことです。
フルーツには旬があるため、季節限定や数量限定などが多いです。見かけたときの幸運を逃さないでくださいね。
今回は、桃やベリー、レモン、などの定番フルーツビールではなく、果汁自体もレアな商品を取り上げました。さっそく写真左の【山葡萄ラードラー】から……となりそうなところですが、まずは写真右の【湘南ゴールド】から試します。理由がありますが、後ほどお伝えしますね。
神奈川県厚木にあるサンクトガーレンの、その名もずばり【湘南ゴールド】。神奈川県産オレンジの品種の名前が、そのままビールのネーミングになっています。同社が毎年作っている、超人気アイテム。世界のビールコンテストでも、多数の受賞歴があります。最近では樽生で提供してくれるビアバーがあり、楽しみが広がり続けています。
私がこのビールに出会ったのは3年前。湿度の高いこの時期の気分をすっきりさせてくれたため、それから毎年この時期の必須ビールになっています。今年は、我が家で毎週頼んでいる食材宅配サービスのチラシでも取扱いされていました。人気の高さがうかがえます。
ひまわりを思い起こさせる澄みきった黄色、そして純白の泡。缶では味わえない、瓶ビールの口元からゆっくりと注がれる時間に、一杯目への期待が募ります。
味は、黄み鮮やかな色からは軽い感じを想像するのですが、飲んでみると、がっしりとした麦の甘さを感じます。それでいて、ホップの苦味と湘南ゴールドのオレンジの酸味が気持ちよいです。
オレンジの香りは注ぎ立てよりも、時間が経ってからの方が増していく印象です。少し温度が上がってきたときなど、ふと薫ってくるオレンジの香りが、爽やかな風を一緒にもってきてくれます。
喉の渇きをいやしてくれる役割も果たし、少し泡が落ち着いてきたころには、湘南ゴールドオレンジの味わいをゆっくり楽しめます。
さて次は、岩手県、ベアレン醸造所の【山葡萄ラードラー】。お色や香りが気になりますね。
岩手県産の山葡萄果汁「紫雫(しずく)」を使って、同社がどのように作っているか気になっていて、前から注目していた商品です。今回、初テイスティングしてみました。
山葡萄の実がそのまま映し出されたような、赤みを帯びた真紫。グラスから30センチほど離れた鼻先には、葡萄の香りがいっぱいに漂ってきます。泡までしっかり色がつき、泡立ちも良く、ビールとして相応しい佇まいです。
味はというと、色から想像するとおり、葡萄の甘酸っぱさが美味しいです。また、麦芽とホップを原料としたビールが、山葡萄と上手に交じりあい、アルコール度数が2.5%と低いのに、ボディがあります。
レモン果汁を使用しているので、葡萄の渋みがほどよく抑えられ、すっきりした後味が印象的でした。
なお、「ラードラー」とはラドラーともいい、ビールにレモンやレモネードを混ぜ合わせた、いわゆるビアカクテルのこと。フルーツを入れるので、アルコール度が低く、2~3%のものが主流です。
今回は、グラスの形にもこだわってみました。【湘南ゴールド】は、オレンジの香りを逃さず、気泡やビールの色合いの良さを際立たせるフルート型のグラスで。
一方、【山葡萄ラードラー】は華やかな香りを広げるために、口が開いたチューリップ型のグラスをセレクトしています。
そうそう、飲み比べする順番が、【湘南ゴールド】→【山葡萄ラードラー】な理由について。山葡萄の余韻はお口を虜にしてしまうからです。すっきりした【湘南ゴールド】からお先にどうぞ。