第14回 迷った時には、ボックスケーキを|くらしの本棚

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第14回 迷った時には、ボックスケーキを

takako@caramel milk tea稲田多佳子さんがお菓子を焼く日々のあれこれを綴るエッセイ。
おまけのおいしいレシピもご紹介します。

スポンジ生地、生クリーム、好みのフルーツなどを、容器の中に重ねたレイヤーケーキ。スコップケーキやスクープケーキなどとも呼ばれますが、箱の中に作るということで、ボックスケーキという呼び方が気に入っている私です。

スポンジ生地さえ焼いておけば、後はもう本当に簡単。スポンジ生地を器の大きさに合わせてカットしたり、手でちぎったりして、適当に泡立てた生クリームとフルーツを適当な割合で、適当にただただ重ねるだけ。適当過ぎてスミマセンと、作っていて謝りたくなるほど(苦笑)。レシピはあってないようなもの、そのくらい気楽に作れるおおらかさがとても好きです。出来上がったらそのまま器ごとテーブルへ出せるのも合理的だし、切り分けず、大きめのスプーンでざっくりとすくって、お皿やグラスにぽとんと落とすように盛り付けるだけで何だかサマになるのもいいですよね。

生クリームをきれいな模様に絞り出して、フルーツも端正に並べて、といったエレガントな仕上げ方も当然素敵なのだけれど、きっちりと作り込まない、手作り感に溢れるラフな雰囲気にほっとできるのが、家庭で楽しむ普段着のお菓子作りのよいところ。美しさより、可愛らしさのあるお菓子に惹かれます。

誰もが好きなふんわりスポンジ×クリーム×フルーツの組み合わせだから、おもてなしや持ち寄りで何を作ろうか迷った時に。簡単に作れるのにちゃんと見映えもするから、時間がない時や手間暇かける気持ちの余裕がない時に。困った時、このスタイルのケーキを作ることが本当に多くて。ボックスケーキは私にとって、頼れるお悩み解決アイテムでもあるんです。

使用する容器は、何だって大丈夫。うちでは、やや深さのあるオーブンウエアや、ホーローバット、ガラスのフタ付き保存容器などによく作っています。前もって作り置く場合、フタ付きの保存容器に作るのが便利でして、出来上がったらパコッとフタをして冷蔵庫へ入れればOK。持ち寄りや差し入れには、フタの上に保冷剤をのせて、クーラーバッグへ。箱の中にきっちりと作っているから、少しくらいガタガタしたって平気。崩れたりし難く、持ち運びに気を遣わないのも、このお菓子の大きな魅力なんですよね。

クリームとフルーツは、器の高さよりはみ出すようにこんもりのせると立体感が出ておいしそうに見えるものですが、フルーツを一面に、平らに賑やかに散らした様子も、負けないくらいにチャーミング。イメージは、ボックスに入ったフラワーアレンジメントギフト。フタを開ける前のワクワクや、フタを開けた時の「わ!」と目を見張る感じ、いいですよね。箱の中にお菓子というのが、花より団子な私にはツボだったりします(笑)。

ちょっと面白いのは、お鍋の中に作る方法。小さな可愛い琺瑯のお鍋に作って、そのままテーブルに出し、フタを開けたらまぁ、ケーキ!という演出。女子会向けかな?
プレゼントにするなら、しっかりとしたきれいな紙の箱にワックスペーパーを敷き込んで作ってもいいし、逆の発想で、プレゼントは器が主役、その中にケーキを作ってそのまま贈る、というのも面白いと思います。

前回のさくらケーキに続いて、3月の2つめにご紹介するお菓子も、うんと春らしく。アールグレイの香りを纏わせた紅茶スポンジに白いクリームと真っ赤ないちごを重ねたボックスケーキです。春を過ぎたら、オレンジやグレープフルーツ、桃、洋梨など、季節のフルーツでアレンジも楽しんでみてくださいね。

生クリームにはお砂糖やリキュールを加えずに泡立てて、グランマルニエで作ったアイシングをソース代わりにとろりとかけていただくスタイルにしてみました。アクセントになるくっきりとした甘みが少し加わることで、エッヂの効いた味わいになり、よりおいしくなるように感じます。小さなお子さんと一緒におやつタイムという時には、グランマルニエソースの代わりに、はちみつやコンデンスミルクをかけて。

残ったスポンジ生地は、グラスやココットを使ってトライフル風のミニデザートにしてもいいし、ラップに包んでとりあえず冷凍保存しておき、後日のおやつ作りに活用、という手もあります。

また、はじめに、スポンジ生地さえ焼いておけば、と書きましたが、焼いておかなくても大丈夫。市販のスポンジ生地やカステラでも充分おいしく作れます。余裕のない時は、市販品を上手に取り入れることも大事。毎日のおいしい時間、無理せず楽しく手作りしたいですものね。

いちごと紅茶のボックスケーキ

材料(生地は24cm角の天板1台分。出来上がりは10×19.5cm、高さ4.5cmの容器1個分)

  •   薄力粉 25g
  •   グラニュー糖 40g
  •   卵黄 2個分
  •   卵白 2個分
  •   植物性オイル 20g
  •   塩 ひとつまみ
  •   紅茶の葉(アールグレイ) 4g(ティーバッグなら2袋)
  •  
  • 仕上げ用
  •   生クリーム 150g
  •   いちご 約1/2パック
  •   ミントの葉
  •   粉砂糖(溶けにくいタイプ) 各適量
  •  
  • グランマルニエソース
  •   粉砂糖 15g
  •   グランマルニエ 約小さじ1

下準備

・紅茶の葉を細かく刻む(ティーバッグならそのままでOK)。

・天板にオーブンシートを敷く。

・オーブンを180℃に温める。

作り方

① 生地を作る。ボウルに卵白と塩を入れ、グラニュー糖を少しずつ加えながらハンドミキサーで泡立てて、角がスッと立つくらいのツヤのあるしっかりとしたメレンゲを作る。卵黄、植物性オイルを順に加え、ハンドミキサーから外した羽根を使い、その都度均一になじむように手早く大きく混ぜる。

② 薄力粉をふるい入れ、紅茶の葉も加え、底からすくい返すようにしてゴムベラで混ぜる。粉気がなくなり、ふんわりとなめらかでツヤのある状態になればOK。

③ 天板に流してカードでならし、180℃のオーブンで10分ほど焼く。天板から外してケーキクーラーに取り、完全に冷ます(乾燥しないよう、粗熱が取れたらラップをかけておくとよい)。

④ 仕上げる。スポンジ生地を容器にちょうど入る大きさに2枚切り分ける(ここでは約10×19cm)。いちごはランダムに小さく切る。ボウルに生クリームを入れ、泡立て器かハンドミキサーで七~八分立て程度にふんわりと泡立てる。

⑤ 容器にスポンジ生地を1枚敷き、生クリームを塗り広げ、再びスポンジ生地、生クリームの順に重ね、いちごとミントの葉を散らす。粉砂糖とグランマルニエをとろりとなるまで混ぜ合わせてグランマルニエソースを作り、ケーキにかけて粉砂糖を軽くふる。

プロフィール

稲田多佳子(著者)
京都に生まれ育ち、現在も京都で暮らす。
HP「caramel milk tea」 で手作りお菓子の写真を掲載したのがきっかけとなり、2004年にお菓子のレシピ本を出版。以来、年に数冊のペースでお菓子やお料理のレシピ本を出版している。代名詞といえば、焼きっぱなしの焼き菓子とロールケーキ。ひとくち食べると思わず心も笑顔になるような、毎日でも食べ飽きず作り飽きることのない、簡単でやさしい味わいのお菓子作りがモットー。
日本茶インストラクター、ティーアドバイザー、ジュニアオリーブオイルソムリエを取得。