第15回 ハンドシェイプクッキーと、クッキーの保存のこと|くらしの本棚

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第15回 ハンドシェイプクッキーと、クッキーの保存のこと

takako@caramel milk tea稲田多佳子さんがお菓子を焼く日々のあれこれを綴るエッセイ。
おまけのおいしいレシピもご紹介します。

ウチ用の普段のおやつ、気楽なおもてなしのお茶菓子、さり気なく差し入れたい小さなお菓子をすぐに用意したい時、ドロップクッキーや手丸めクッキーをよく焼きます。抜き型や絞り出し袋が要らず、手近にあるスプーンや手だけで成形できるラクさはやっぱり作りやすくて、また、きちっと整えられた端正な形よりも、不揃いに少し歪んでいるくらいが逆に可愛く見えるのもありがたいんですよね。型にはまらない緩い形をした小さなクッキーを見ていると、気持ちまでぽわんと緩んで来るような、そんな気がします。

生地をしっかりと冷やし固めて形を決めるアイスボックスタイプのクッキーのように、生地を休ませる必要がないので、作ろう!と思い立ってから焼き上がりまでノンストップ。一連の時間の流れに乗って途切れずに作業が進むストレスのなさは、心地よいもの。

大きなボウルはひとつ、バターと砂糖をふわっと合わせたところに、卵や少しの水分、粉を順に加えて混ぜるという、シンプルな手順。粉気が少し残るくらいのところに何らかのプラス素材を加えれば、バリエーションを増やすのも簡単。ナッツやチョコレート、ドライフルーツ、胡麻、甘納豆など、その時にあるものを何でもざくざく入れて、変化を楽しんでいます。この「その時にあるものを何でもざくざく入れてみる」というのが、いい加減な行為に思えて、案外「これは!」という組み合わせの発見にも繋がったりするから、面白いんですよね。

すぐに焼き上がるだけではなく、日持ちもするのがクッキーのよいところ。クッキーの作り置き、うちではわりと欠かせないものになっていて、日々のお茶の時間に、急な来客時のお茶菓子にと、重宝しています。

特に、一日に何度となく味わう一人のお茶時間。朝、頑張って動き出す前に。午後、気持ちを切り替えるために。夜、ほっと一息つきたい時に。カップ一杯の飲み物で過ごす短い時間は大きな和みのもとで、私にはなくてはならないものと言い切れるくらい、偏愛している時間です。そこに、ちょこっとつまめる小さなお菓子がひとつかふたつ。このサイズ感がことのほかよくて、幸せ度がより一層上がる。それに、空きっ腹に濃いめのコーヒーや紅茶をいただくと、逆に体調がよろしくなくなる、なんてことがたまにあったりするのですが、ほんの1枚のクッキーがそれを防いでくれる効果も。

保存について、うちの場合、短期間のうちに食べ切ってしまいそうな時は、乾燥剤と共に瓶や密閉容器に入れ、常温に置いています。ちびちびちょこちょこ長く食べたい時や、不意に必要になるいつかの日に慌てないための作り置きとしては、冷凍庫へ。

クッキーの冷凍保存で、アイスボックスクッキーなどは、「焼く前の生地を棒状にまとめて冷凍保存しておけば、食べたい時にカットして焼くだけ。いつでも焼き立てを楽しめておすすめ。」と、よく言われますが、私、焼き立てよりも少し時間が経ってからくらいの方が、味がなじんでいるように感じられて好きなんです。なので、アイスボックスタイプでも、その他のタイプでも、焼いてから冷凍保存という形を取っています。たいていのクッキーは冷凍庫に入れてもガチガチに凍ってしまうことはないので、冷凍庫から出してそのまま解凍せずに、ひんやりおいしく食べられるんですよ。食べたい時は焼く手間すら惜しい!なんて思ってしまう、横着な私にぴったり(笑)。

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さて、今回は、さっくり食感の生地にマカダミアナッツとチョコレートをザクザク混ぜ込んだ、手で形作るクッキーのレシピをご紹介します。ナッツの種類は、何でもお好みのものに置き換えてOK。くるみ+アーモンド+マカダミアナッツ、というように、いくつかのナッツを合わせても風味が複雑になって楽しいですよ。

マカダミアナッツとチョコチップの手丸めクッキー

材料(約42個分)

  • A  薄力粉 140g
  •   アーモンドパウダー 30g
  •   ベーキングパウダー 小さじ1/8
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  •   バター(食塩不使用) 90g
  •   グラニュー糖 40g
  •   塩 ひとつまみ
  •   卵黄 1個分
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  •   マカダミアナッツ 60g
  •   チョコチップ 60g

下準備

・バターは室温においてやわらかくしておく。

・Aを合わせてふるう。

・マカダミアナッツはポリ袋などに入れてめん棒で粗く砕く。

・天板にオーブンシートを敷く。

・オーブンを170℃に温める。

作り方

① ボウルにバターを入れ、ハンドミキサーでクリーム状に混ぜる。グラニュー糖と塩を加え、白っぽくふんわりとした状態に泡立てる。卵黄を加えて混ぜる。

② Aをふり入れ、ゴムベラでさっくりと混ぜる。粉っぽさが少し残るくらいで、マカダミアナッツとチョコチップを加えて混ぜ、ひとまとめにする。

③ ②を約大さじ1/2ずつ取って丸め、厚みを軽く押しつぶす。天板に間隔をあけて並べ、170℃のオーブンで16~18分焼く。

※ここでは小さなコイン状の製菓用チョコレートをチョコチップとして使いました。
※マカダミアナッツは160℃程度のオーブンで8分ほど空焼きしてから使うと、より香ばしく焼き上がります。

プロフィール

稲田多佳子(著者)
京都に生まれ育ち、現在も京都で暮らす。
HP「caramel milk tea」 で手作りお菓子の写真を掲載したのがきっかけとなり、2004年にお菓子のレシピ本を出版。以来、年に数冊のペースでお菓子やお料理のレシピ本を出版している。代名詞といえば、焼きっぱなしの焼き菓子とロールケーキ。ひとくち食べると思わず心も笑顔になるような、毎日でも食べ飽きず作り飽きることのない、簡単でやさしい味わいのお菓子作りがモットー。
日本茶インストラクター、ティーアドバイザー、ジュニアオリーブオイルソムリエを取得。