少なくとも、
『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット 著/池村 千秋 訳/東洋経済新報社 刊)を読むと、これからの未来、将来が楽しみでワクワクがとまりません。
『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』
(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット 著/池村千秋 訳/東洋経済新報社 刊)
『LIFE SHIFT』は、400ページもある大著で、最後まで読むのもたいへんですが要約すると、医療の進歩によって100歳まで生きるのが当たり前の長寿時代が到来する。
その時代に適応するためには、「お金」や「時間」の使い方、「資産」の持ち方、「働き方」など、「生き方」を今までとは大きく変える必要がある、ということです。
「平均寿命は大幅に伸びる。いま先進国で生まれる子供は、50%を超える確率で105歳以上生きる」というのです。私は、52歳ですが、「人生の3分の2を生きてしまった」と思っていたわけですが、これからさらに50年、生きられるかもしれない。これは、大きな希望です。
ただ、お金や資産も仕事もなく、貧困状態ですごす老後は、むしろ地獄です。さらに、認知症になった状態で長生きしたとしても、本人も家族も大変でしょう。つまり、100歳まで生きられる時代を、「楽しく」生きるためには、間違いなく「備え」が必要なのです。その「備え」とは、必ずしも金銭的な資産に限りません。
この本の中で、私が最も共感したのは、
「健康も資産である」という考え方です。病気で長生きをしても意味がありません。健康に生きられる年数を長くしないと。そのためには、今まで以上に、健康に留意し、健康を維持する活動をしなくてはいけません。
特に身体の健康も大切ですが、「脳を鍛える」というとも重要です。これから、再生医療が進歩して、身体の臓器は入れかえ可能な時代が来るでしょうが、唯一、入れ替えられない臓器が「脳」だからです。脳の老化がすすみ、認知症になってしまったら、最新の医療でも対処は困難です。
長寿時代を健康に生きるために、「脳を鍛える」ことは必須の条件と言えるのです。
私は、精神科医なので、こうした健康面の記述に注意がいくのですが、経済が専門の方は「資産形成」「資金計画」のシフトに注目するかもしれません。あるいは、AIやロボットの進化にともなう「ワークスタイル」のシフトに注目する人もいるでしょう。
『LIFE SHIFT』は、長寿時代に起きるであろう、将来予測を多彩な側面から論じていますから、人によって全く異なる気付きが得られるはずです。また、その将来予測は悲観論にならずに、不安をあおることもなく、公平、公正な視点で記述されている。おそらく読んだ人の多くは、長生きすることが楽しみになるはずです。
ただし、長寿社会の楽しい老後を享受できるのは、しっかりと「準備した人」だけです。「健康」「ワークスタイル」「人とのつながり」など、これからの時代に備えて、どのように変えていくべきか。本書を通して、将来のシュミレーションしておくことは、とても意義あることだと思います。
執筆者の近著
ムダにならない勉強法
樺沢紫苑 著/サンマーク出版 刊
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価格:1,274円
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