第1回 小麦対決! 酵母入り VS 酵母無し|くらしの本棚

くらしの本棚

第1回 小麦対決! 酵母入り VS 酵母無し

こんにちは、日本ビール文化研究会の大登貴子と申します。仕事場ではビールの知識を深め・広める日々を送り、自宅では高校生と中学生の球児2人の弁当作りに頭がいっぱいな母です。
早速ですが、みなさんは、定番ビール派ですか?それとも、いろいろ試す派ですか?
定番ビールの安定感も大事ですが、私は、試す派です。
気分によっても、時間帯によっても、天気によっても、料理によっても、飲みたいビールは変わってきます。
最近は、飲食店やスーパー・コンビニに置かれるビールの種類が豊富になったり、インターネットで遠方のクラフトビールを購入できるようになったりと、選べるビールがどんどん広がるありがたい時代です。
そんな時代を思いきり満喫するために、このエッセイでは、いろいろなビールの違いを味わう、「飲み比べの楽しみ」をご提案していきます。

皆様にとって、今年の夏も素晴らしいビール日和になりますように!

フルーティーで、スパイシーで、余韻が心地いい! 今回は、小麦のビール同士の対決です。同じ小麦のビールのなかでも、酵母の入ったビールと、酵母の取り除かれたビールを飲み比べします。

 

ヒューガルデンホワイト

水曜日のネコ

日本でお馴染みの黄金色のビールは大麦を使いますが、小麦を原料に使うビールもあるんです。この小麦を使うものを「ホワイトビール」と言います。

左:大麦 右:小麦

 

ホワイトというからには、色が黄金色ではなく、白色なんですね。そして、泡がフワフワ。

そして、白い色からは想像できないような、エキゾチックな香りが漂います。

私が初めて飲んだのは、20数年前。地ビールをつくっている醸造所に併設されているレストランでした。

酵母入りのホワイトビールを飲んだときの印象は、「スパイスの味だ」。それまで知っていたビールとは全く違う味わいに、衝撃を覚えました。

今日選んだ2品は、【ヒューガルデンホワイト】と、【水曜日のネコ】です。

【ヒューガルデンホワイト】は、小麦を使ったベルギービールの代名詞と言われるビールであり、ビールを発酵させた酵母がそのままビールの中に残っています。

対して、長野県佐久市にあるヤッホーブルーイング社がつくっている【水曜日のネコ】は、小麦を使っていますが、発酵を終えた酵母はろ過して取り除いています。

まずは、【ヒューガルデンホワイト】から、注ぎ入れ開始! 

モコモコと盛り上がってくる泡。これぞ、小麦のビールの特徴です。

クリーミーな泡で長持ちするため、3分後にようやく、泡が落ち着き、上半分となりました。そこから、注ぎ足しの2度目へ。

次に【水曜日のネコ】です。

【ヒューガルデンホワイト】の泡に比べると控えめですが、それでもモコモコさ健在です。しかし、クリーミーな泡に対し、出てくるビールは、清い!透明に澄み切っています。

どちらも、小麦ビールらしく泡持ちが良いですね。泡がなかなか消えません。

ヒューガルデンホワイト(左)と水曜日のネコ(右)

そして、二つを並べて完了です。

少し酵母の説明をいたしましょう。

酵母はビールづくりには欠かせないアイテムです。その正体は……「微生物」。酵母は糖を分解する「発酵」という働きによって、アルコールと炭酸ガスを生み、ビールのビールたる骨格を決めてくれます。

ビールの酵母は、その任務を終えると製造工程でろ過され、取り除かれるのが一般的です。酵母を取り除かないものは「無ろ過」といわれ、「酵母入り」ともいわれます。

二種類のビールを並べて、ライトアップしてみましょう。

左が【ヒューガルデンホワイト】(酵母入り)、右が【水曜日のネコ】(酵母無し)。

一目瞭然です。 

酵母入りのほうが、淡く霞んでおり、この霞がまさしく酵母の正体です。

いよいよお楽しみの飲み比べタイムです。

どちらも香りが複雑です。原料には、小麦のほかに、コリアンダーシード、オレンジピールが使われています。これらが発酵や貯酒など、長い時間をかけて製造工程を進んでいくうちに、バナナやマンゴー、スパイスなどの多彩な香りを生み、複雑に混ざり合います。

この日は、【水曜日のネコ】のほうが、香りがたっているように感じました。

次に味です。【ヒューガルデンホワイト】は、酵母がもたらすまろやかさ、炭酸が馴染んでいる落ち着き感が秀逸。酸味もさらっと心地よく、甘い南国のお花をイメージしました。

【水曜日のネコ】は、その透明さから、キレが鋭いビールかと思いきや、一口目がスパイシー。炭酸は【ヒューガルデンホワイト】より強いので、ゴクリと喉を通っていくのがわかります。けれど、強さばかりではなく小麦の甘味もあり、そのバランスに癒されました。

第1回目の小麦対決、いかがでしたでしょうか。

どちらもベルジャンホワイトという、ベルギーが産んだ有名スタイルのビールです。酵母入りと酵母無しという切り口での飲み比べ、おススメします!

 

*日本の酒税法上では、【ヒューガルデンホワイト】・【水曜日のネコ】は「ビール」ではなく「発泡酒」に該当します。世界的にはベルジャンホワイトタイプは、ビールの一種と考えられているため、今回はビールと表現しています。

プロフィール

大登貴子(著者)
1970年北海道生まれ。慶應義塾大学卒業。サッポロビールに入社後、広報業務に従事。2012年、ビール文化を更に発展、普及させることを目的として「日本ビール文化研究会」を立ち上げる。
現在、同会・理事事務局長。活動は、日本ビール検定(愛称:びあけん)主催、出版、セミナー開催など。びあけんは、本年で第6回となり、過去5年で19,000名がチャレンジしている。今年は9月24日(日)全国5都市で開催予定。
びあけん公式HP http://www.beerken.com/