第26回 冬がお似合い、キャラメルとチョコレートのお菓子|くらしの本棚

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第26回 冬がお似合い、キャラメルとチョコレートのお菓子

takako@caramel milk tea稲田多佳子さんがお菓子を焼く日々のあれこれを綴るエッセイ。
おまけのおいしいレシピもご紹介します。

年の瀬もいよいよ押し詰まったクリスマス間近。今年は例年以上に楽しいイベントごとが目白押し、慌ただしいながらも少しばかり華やいだ気分で過ごしている12月です。

誰かと会う約束事があるにつけ、手土産にするお菓子をいそいそと焼いては嬉しい気持ちで届けたりと、贈るお菓子を作る機会に多く恵まれた今月。相手の顔を思い浮かべながら、「そう言えばあの人いちじく好きって言ってたなぁ」「キャラメルケーキに入れるキャラメル、かなり苦めにしたいんだけど大丈夫かしら?」「この間ココアのクッキー食べてもらったから、今回は紅茶にしてみよう」 どんなお菓子を焼こうか、どんな風に焼こうかとあれこれ考えるのも心躍るひと時だし、焼き上がったお菓子を包み、お菓子に合わせてリボンの色を選ぶのも、満ち足りた幸せなひと時。

今月は、プレーンなキャラメルバターケーキから始まって、キャラメルフィグのバターケーキ、くるみとキャラメルコーヒーのバターケーキ、ピーナッツバターとキャラメルのダブルマーブルマフィン、キャラメルクリームのロールケーキ、プレーンなガトーショコラ、ラムレーズンショコラ、塩チョコレートのバターケーキ、バニラホワイトチョコのバターケーキ、しっとりショコラなどなど、キャラメルとチョコレートのお菓子をたくさん焼いたひと月でした。

毎年冬の足声が聞こえ始めると、キャラメルとチョコレートのお菓子が特段に恋しくなります。キャラメルとチョコレート、いつ食べてもおいしい素材なのだけれど、冬がことのほかよく似合う。空気の澄んだ冷たい季節に映える、こっくりとディープな色が包み込む濃密な香ばしさ、ピリッと刺激的な苦みだったり、まろやかなほろ苦さだったり、ほのかな酸味や、複雑にもストレートにも感じられる甘み。どちらの素材も似たような魅力を共通して持っているように思うのです。

とりわけキャラメルへの愛は、海よりも深く空よりも広いと自負しているほどで(笑)、思い立った時すぐにキャラメルのお菓子を作り始められるようにと、いつでも冷蔵庫にはたいていひと瓶、キャラメルクリームを作り置いています。これさえあれば、どんなお菓子もたちまちキャラメル風味へのアレンジが可能、パンケーキやワッフル、アイスクリームに回しかけるカフェ風の演出だって簡単にできてしまうから、頼りになるんです。

ちょっと横道に逸れますが、小さなエピソードをひとつ。2000年にスタートしたホームページの名前も、好きすぎるキャラメルのお菓子にこれまた大好きなミルクティーを足して、「caramel milk tea」としたのが本来の所以。「キャラメル風味のミルクティー」ではなくて、あくまでも「キャラメルとミルクティー」、なのでした。

お砂糖を火にかけて溶かし、褐色に焦がす。ただそれだけのことなのに、あの濃厚でいてキレと奥行きのある味わいはどうして生まれるのか、本当に不思議。これまでどれだけキャラメルを作って来たのか見当もつかないほど回数を重ねているはずなのに、真っ白なお砂糖がゆっくりと薄茶色に変わり、茶色から焦げ茶色へと移り変わる様子には、未だに興趣が尽きることありません。

お砂糖をどこまで焦がすのか。その見極めのちょっとしたさじ加減で、まあるい甘みのソフトなキャラメルにも、甘さより苦みの際立つ大人のキャラメルにもなるなんて。魅惑的でいてこの上なくエキサイティングな世界。これだからお菓子作りはやめられないのです。

2017年、最後にご紹介するお菓子は、ベイクドキャラメルショコラ。やわらかなチョコレート生地にキャラメルクリームをとろりと回しかけ、湯煎にしてしっとりと焼き上げたチョコレートケーキです。冷やすと生地がきゅっと締まり、ほろっとした食感。常温だとじゅわっと緩んで、くしゅっと解けるような食感。無糖で泡立てた生クリームがよく合うので、あればぜひふわっと添えて、一緒に味わってみてください。

回しかけるキャラメルクリームの分量は、淡めに仕上げたクリーミーブラウンのキャラメルならたっぷりめ、強く焦がしたダークブラウンのビターなキャラメルなら少し控えめに。そんな感じがバランスよいかなと思いますが、作る人食べる人の好みに合わせて加減してみてくださいね。

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「ベイクドキャラメルショコラ」

材料 (21×16.5×高さ3cmのバット 1台分)

A製菓用チョコレート60g
 バター(食塩不使用)50g
 牛乳35g

B薄力粉10g
 アーモンドパウダー20g
 塩少々

全卵1個
卵黄1個
グラニュー糖30g

キャラメルクリーム 40~50g ※作り方は下記参照。

仕上げ用の粉砂糖 適量

下準備

・製菓用チョコレートは細かく刻む。
・Bを合わせてふるう。
・バットにバター(分量外)を薄く塗る。
・オーブンを180℃に温める。

作り方

①耐熱のボウルにAを合わせ、湯煎か電子レンジにかけてなめらかに溶かす。

②別のボウルに全卵と卵黄を入れてハンドミキサーでほぐし、グラニュー糖を加え、白っぽくもったりふんわりした状態に泡立てる。①を加え、ゴムベラで底からすくうようして混ぜ、チョコレートの筋が少し残るくらいでBをふり入れ、ムラなく手早く混ぜる。

③バットに流し入れ、表面にキャラメルクリームを好みの量回しかけ、菜箸などでぐるぐるっと軽く混ぜる。

④オーブンに入れ、バットの高さ1/2程度まで天板に熱湯を注ぎ、180℃で20~23分湯煎焼きにする。冷めたら好みで粉砂糖をふって仕上げる。

キャラメルクリーム(作りやすい分量)

グラニュー糖80g
水大さじ1/2
生クリーム100g

作り方
①小鍋にグラニュー糖と水を入れて中火にかけ、鍋を揺らさずに溶かす。茶色く色づいて来たら、鍋を揺すって色を均一にし、好みの焦げ茶色まで焦がして火を止める。電子レンジか別の小鍋で沸騰前後くらいまで熱した生クリームを少しずつ注ぎ(沸き上がるので注意)、ヘラでムラなく混ぜる。
②清潔な瓶などに入れて冷蔵庫で保存する。冷えると固くなるので、使う分だけ取り出して室温に置いたり、電子レンジでほんの数秒温めると、とろりと扱いやすい状態に戻る。

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プロフィール

稲田多佳子(著者)
京都に生まれ育ち、現在も京都で暮らす。
HP「caramel milk tea」 で手作りお菓子の写真を掲載したのがきっかけとなり、2004年にお菓子のレシピ本を出版。以来、年に数冊のペースでお菓子やお料理のレシピ本を出版している。代名詞といえば、焼きっぱなしの焼き菓子とロールケーキ。ひとくち食べると思わず心も笑顔になるような、毎日でも食べ飽きず作り飽きることのない、簡単でやさしい味わいのお菓子作りがモットー。
日本茶インストラクター、ティーアドバイザー、ジュニアオリーブオイルソムリエを取得。