第22回 蒸しパンの季節到来。基本のレシピと簡単なアレンジの楽しみ方|くらしの本棚

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第22回 蒸しパンの季節到来。基本のレシピと簡単なアレンジの楽しみ方

takako@caramel milk tea稲田多佳子さんがお菓子を焼く日々のあれこれを綴るエッセイ。
おまけのおいしいレシピもご紹介します。

もうすぐ11月。涼しいを通り越して、朝晩ぐっと冷えるようになりました。寒くなって来ると、そわそわするほどに作りたくなるのが蒸して作るお菓子、蒸しパンです。蒸しパン自体が好きなのはもちろん、それ以前に、温かな蒸気の上がった蒸し器のある台所の風景に、何とも心落ち着かされるのです。

バターや生クリームを使ったり、全卵を泡立てたり、メレンゲを加えたり、様々なレシピでも作る蒸しパン。配合をリッチにし、作り方に少し手間を掛けると、蒸しパンというより蒸して作るケーキのような生地感になって、おいしさのレベルも上がってくるのですが、蒸しパンと呼ぶお菓子に求めるのは特別なおいしさじゃなく、親しみやすい材料とシンプルな手順で作れるごく普通の素朴なおいしさなのではないかしら? と常々思っているので、「さて、蒸しパンでも作ろうかな」という時、基本にしているレシピはこんな感じです。

直径約7cmのココットやプリンカップ6個分で、A(薄力粉90~100g、ベーキングパウダー小さじ1)、B(牛乳120g、砂糖40~50g、植物性油25g前後、塩少々)。作り方は、ボウルにBを入れ、泡立て器でよく混ぜたところにAをふるい入れて混ぜるだけ。あとは型に入れ、蒸し器に並べたら、12分そこそこで出来上がり。

簡単なアレンジの楽しみ方としては、基本のレシピそのままに、刻んだチョコレートやドライフルーツを混ぜ込んだり、生地を型に入れたあと、焼き芋、蒸し栗、缶詰のフルーツなどを差し込んで蒸したり。また、牛乳を豆乳やアーモンドミルクに替える、牛乳+プレーンヨーグルトで120gにする、砂糖をきび砂糖、黒糖、メープルシュガーなどにして作る、植物性油を溶かしバターに替えるなどで、生地のニュアンスを変化させることができます。

卵の入らないレシピだから取りかかりやすく、少しだけ食べたい時や少量ずつ数種類作りたい時、分量を半分にして3個だけ作る、なんてこともしやすいんです。蒸しパンのいちばんおいしいタイミングは作りたて。うちで食べる分には、食べ切れる分だけをその都度作れると嬉しいですよね。
ちなみに今回のイメージカットでは、ほうじ茶の蒸しパンを6個と、抹茶、甘納豆入り、ラム酒漬けドライフルーツ入り、こしあんマーブルの蒸しパンを、各3個ずつ作りました。

子どもの頃、母が作ってくれた蒸し菓子の中でいちばんに思い出すのは、蒸しパンではなく、蒸した本物のパン、です(笑)。バターロールに切れ目を入れ、バター(じゃなくてマーガリンだったかも?)、マヨネーズ、和辛子を塗って、スライスオニオンと缶詰の味付けまぐろを挟んで蒸し上げたものを、おやつや休日のお昼ごはんに時々作ってくれていました。蒸したてほかほか、しっとりと蒸気を含んだやわらかなロールパンの食感が限りなくやさしくて。パンってトーストするだけじゃなく蒸してもおいしいんだということを、このスチームロールサンドに教わりました。甘辛いまぐろとマヨネーズに和辛子のアクセントも絶妙で、私には忘れられない思い出の味です。

うちで使っている蒸し器は、ピカピカステンレスの大きな長方形のお鍋。フタがガラス製なので中の様子が確認できて安心、お手入れもラクな上、丈夫で美しい。気に入って長いこと愛用しています。
天然素材の蒸籠のある暮らしに憧れながら、果たして私に本当に必要なものなのだろうかと、ずっと二の足を踏み続けています。蒸籠は一生もの、蒸籠のよさを知ると二度と手放せない、おいしくて食生活が一変する可能性を秘めている、などと聞くので、いずれいつかはと小さな野望を抱いてはいるのだけれど。いつも台所の戸棚の上の方にしまっている蒸し器を出すのが面倒だと、手近にあるお鍋やフライパンで蒸して、それでも充分に満足している私。あまり必要ないのかも知れないですね(笑)

今回は、基本の蒸しパンをほうじ茶の蒸しパンにアレンジしたレシピをご紹介します。ほうじ茶を紅茶の葉に置き換えれば紅茶蒸しパンも作れるので、アールグレイなど香りのよいお茶の葉で試してみてくださいね。

「ほうじ茶の蒸しパン」

材料 直径約7cmのココットやプリンカップ6個分

  • A薄力粉90g
  •  ベーキングパウダー小さじ1
  • B牛乳100g
  •  プレーンヨーグルト20g
  •  きび砂糖50g
  •  植物性油25g
  •  塩少々
  • ほうじ茶の葉5g

下準備

・ほうじ茶をフードプロセッサーやミルなどで粉末状にする。
・型に紙カップを敷く。
・蒸し器に水を張り、火にかける。

作り方

①ボウルにBとほうじ茶の葉を入れ、泡立て器でよく混ぜる。

②Aをふるい入れ、なめらかになるまでぐるぐると混ぜる。

③型に入れ、蒸気の上がった蒸し器に並べ、12分ほど蒸す。

※ほうじ茶の葉は、フードプロセッサーやミルなどがなければ、すり鉢ですりつぶして。または、ポリ袋に入れるかベーキングシートなどで挟み、めん棒で押さえるようにして転がすと、細かくつぶれます。

プロフィール

稲田多佳子(著者)
京都に生まれ育ち、現在も京都で暮らす。
HP「caramel milk tea」 で手作りお菓子の写真を掲載したのがきっかけとなり、2004年にお菓子のレシピ本を出版。以来、年に数冊のペースでお菓子やお料理のレシピ本を出版している。代名詞といえば、焼きっぱなしの焼き菓子とロールケーキ。ひとくち食べると思わず心も笑顔になるような、毎日でも食べ飽きず作り飽きることのない、簡単でやさしい味わいのお菓子作りがモットー。
日本茶インストラクター、ティーアドバイザー、ジュニアオリーブオイルソムリエを取得。