くらしの本棚

56324_ext_02_0.jpg

第21回 愛しのロールケーキは24cm角の天板で

takako@caramel milk tea稲田多佳子さんがお菓子を焼く日々のあれこれを綴るエッセイ。
おまけのおいしいレシピもご紹介します。

しっとりふんわりやわらかなスポンジ生地と、とろけるようなクリームからなる繊細なお菓子なのに、フォークやスプーンがなくたって、そのまま手でつまんで食べられる。焼き菓子みたいに気取りのない、普段着のお菓子。ロールケーキを溺愛しています。

ロールケーキ用のスポンジ生地は、薄手のシート状に焼き上げるため高さを出す必要がなく、いわゆるデコレーション型でジェノワーズを焼くよりも簡単に作れて、短時間でさっと焼ける上、冷めるのも早い。スポンジ焼いて、クリーム塗って、くるっと巻いて、ハイ、出来上がり! この軽快なリズムにのれるプロセスの単純さ、作りやすさが、私の心を捕らえて離さないのです。

おいしそうな生地の質感や焼き色を隠してしまうのはもったいないと、外側を生クリームで覆ったりするデコレーションはほとんどしないのですが、くるんとしたのの字だったり、くるくるっとした渦巻きだったり、カットした時に現れるその表情だけで、もう十分に可愛い。焼き菓子では、焼きっぱなしのお菓子という言葉が時々使われるように、ロールケーキも巻きっぱなし、その素朴さが大きな魅力と強く感じています。
スポンジでクリームを巻いただけのシンプルな構成は、持ち運ぶ際について回る型崩れの心配も一切不要。ちょっとした贈り物のお菓子としても、重宝して焼いています。

もうずいぶん昔の話になります。私がロールケーキを焼き始めた頃、ガスオーブンに付属していた大きな天板で生地を焼いていました。そのオーブン天板は、正方形ではなく、真ん中部分が少し盛り上がっており、周囲にぐるりと浅い溝があったり、内側四隅が丸まっていたりして、とにかく重い。ロールケーキの生地を焼くにはお世辞にもぴったりとは言えないような物だったのですが、当時の私は「天板=オーブンに付属している天板」という認識で、ロールケーキ用の天板があるなんて考えもしなかったから、使い難いのは仕方ないこと、これが当たり前と思って使い続けていました。

それから年月が流れ、パソコンが普及し、インターネット環境が整って、知りたいことはちょっと検索をかけてみれば、すぐに答えが出て来る時代。調べてみれば、ロールケーキ用の天板というものが売っているではないですか。「これは試してみなければ!」と手に入れたところ、その天板は、底一面きれいにフラット、四隅の角もキリッとエッヂが効いていて、立ち上がりが低いので生地を広げやすく、熱伝導も二重丸。そして、何より軽い。「えーっ、うそー! こんなに使いやすいの? 道具一つでこんなに作りやすくなるなんて!」と、びっくり感激。専用の天板を入手した私は、ロールケーキ作りの深みにますますはまっていったのでした。

最初に購入したロールケーキ用天板は、30cm角。卵3~4個分の生地を焼くのにちょうどいい大きさで、かなり長い間使っていたのですが、そのうち、もう少し小さいサイズならもっと少ない材料で作れて更に日常使いしやすいかも?と、27cm角を経て、現在愛用している24cm角の天板へたどり着きました。この大きさ、本当に使い勝手がいいんです。小ぶりだから取り回しがラク、卵2個分でもきれいに焼けて、少人数でおいしいうちに食べ切れる。何なら、私ひとりでも食べ切れる(笑)。卵を4個、5個とたくさん使って大きな天板で焼いていたあの頃には、もう戻れません。
焼き上がったスポンジは小さくて扱いやすいから、ロールケーキ作りのポイントとも言える巻く作業が意外なほど簡単になるし、保存スペースがコンパクトに収まるのも、家庭の冷蔵庫事情にはありがたいですよね。

余談ですが、大きな天板をお使いの方や、ロールケーキがなかなか上手く巻けないわとお悩みの方。もしいらっしゃったら、スポンジ生地を縦に2等分してクリームを塗り、短いロールケーキ2本作る要領で巻いてみてください。うんと巻きやすくなると思います。

さて、今回ご紹介するお菓子は、24cmの天板を使って作るロールケーキです。粉の分量が少ない口溶けのよいソフトな生地で、はちみつの甘みをほんのり加えたクリームを巻きました。きび砂糖を使ったやさしい生地、ベージュ寄りの淡いたまご色に染まった1本で、ほっとする秋のティータイムをどうぞ。

5074.JPG

「きび砂糖とはちみつのロールケーキ」

材料(24cm角の天板1枚分)

  • 薄力粉 15g
  • 植物性オイル 5g
  • 卵黄 2個分
  • 卵白 2個分
  • 塩 ひとつまみ
  • きび砂糖 35g
  •  
  • クリーム
  • 生クリーム 80g
  • はちみつ 5g

下準備

・天板にわら半紙を敷く。
・オーブンを180℃に温める。

作り方

①生地を作る。ボウルに卵白を入れ、塩、きび砂糖を少しずつ加えながらハンドミキサーで泡立てて、角がスッと立つくらいのツヤのあるメレンゲを作る。卵黄、植物性オイルを順に加え、ハンドミキサーから外した羽根で、その都度均一になじむように手早く大きく混ぜる。

②薄力粉をふるい入れ、底からすくい返すようにしてゴムベラで混ぜる。粉気がなくなり、ふんわりとなめらかでツヤのある状態になればOK。

③天板に流してカードでならし、180℃のオーブンで10分ほど焼く。天板から外してケーキクーラーに取り、紙を付けたまま冷ます。

④クリームを作る。ボウルに生クリームとはちみつを入れ、ハンドミキサーか泡立て器で八分立て程度にふんわりと泡立てる。

⑤仕上げる。スポンジの紙をはがし、焼き色がついた面を上にして紙の上に置く。巻き終わりになる部分を斜めに切り落とし、クリームを全体に塗り広げる。くるくる巻いて、巻き終わりを下にしてラップで包み、冷蔵庫で一時間以上なじませる。

 

※卵はLサイズ、生クリームは乳脂肪分42%のものを使いました。

5081.JPG

プロフィール

稲田多佳子(著者)
京都に生まれ育ち、現在も京都で暮らす。
HP「caramel milk tea」 で手作りお菓子の写真を掲載したのがきっかけとなり、2004年にお菓子のレシピ本を出版。以来、年に数冊のペースでお菓子やお料理のレシピ本を出版している。代名詞といえば、焼きっぱなしの焼き菓子とロールケーキ。ひとくち食べると思わず心も笑顔になるような、毎日でも食べ飽きず作り飽きることのない、簡単でやさしい味わいのお菓子作りがモットー。
日本茶インストラクター、ティーアドバイザー、ジュニアオリーブオイルソムリエを取得。