第10回 吉祥寺の「くじら山」|くらしの本棚

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第10回 吉祥寺の「くじら山」

この度、フリーライターの私が、取材の合間に寄り道したり、誰かに連れて行ってもらったり……。
そんなお店をご紹介する連載を始めることになりました。
とは言っても、私は元来マメな性格ではないので、話題の店にすぐ足を運んで……というショップ紹介ではありません。
日本のあちこちに、わあ、なんて素敵な場所だろう……と心を震わすお店がある。そこには、必ず素敵な人がいる。そんな出会いを、ご紹介できたらいいなあと思っています。

みんなに知ってほしいけど、あんまり知られたくないお店。
吉祥寺に住む私が、たぶんいちばんよくご飯を食べに行っているお店がここ、「くじら山」です。

中道通りを歩いていくと、小さな建物の2階に水色のくじらの絵が描かれた看板が見つかるはず。
気をつけていないと通り過ぎてしまう、小さな階段を登った2階にあります。

カウンターとテーブル席1席のみの店内は、いつもお客さんでいっぱい。
私も今日は「行くぞ」という日には早めに電話で予約を入れます。

何と言っても、煮物や和え物など、普通のおばんざいが充実しているのが嬉しい!
カウンターの上にはずらりと大皿に盛り付けられたおいしそうなおかずが並んでいます。
野菜を使ったメニューが多くて、この時期なら蕗の煮物や、ウドの天ぷら、菜の花の和え物などなど。

しっかり出汁がきいて、丁寧に作った一皿一皿は、飽きがこず、どれも本当にしみじみおいしい!

定番メニューの中でよく注文するのは、クレソンとネギのさっと和えや、甘らっきょうとツナのマヨネーズ和えなど。
野菜の小鉢を4~5品オーダーし、そのあと肉や魚料理を少しだけいただいて、最後に高菜めんたいこチャーハンで締める、というのがいつものコースです。
日本酒をはじめ、焼酎からワインまでお酒の種類も豊富。
店長の中村政治さんは、ソムリエの資格も持っていて、とても丁寧に説明してワインを選んでくれます。

スタッフもみんなフレンドリーで優しくて、キビキビしていて、ほっと暖かい気持ちにさせてくれるのも、ついこの店に足が向かってしまう理由のひとつかも。

しかも営業は25時まで!
私は大抵早めの時間に行きますが、たとえば出張帰りで、21時頃吉祥寺につき、ちょっと小腹が空いたから……
と立ち寄ることもできます。

実は、この店は、吉祥寺で知る人ぞ知るといわれる「こまぐらカフェ」の兄弟店。さらに、最近「くじら山」の斜め向かいに姉妹店「みにら山」もオープン。

3店舗とも、吉祥寺で間違いなくN0.1のおいしさです。

酒と肴 くじら山
東京都武蔵野市吉祥寺本町2-19-7 みすずビル 2F
☎0897-36-4305
営18:00~25:00(LO24:00)
22時以降入店可、日曜営業
【201704旅行・東京】

プロフィール

一田憲子(著者)
1964年生まれ。編集者・ライター。OLを経て編集プロダクションへ転職後、フリーライターとして女性誌、単行本の執筆などで活躍。企画から編集を手がける暮らしの情報誌『暮らしのおへそ』『大人になったら着たい服』(ともに主婦と生活社)は、独自の切り口と温かみのあるインタビューで多くのファンと獲得。全国を飛び回り、著名人から一般人まで、これまでに数多くの女性の取材を行っている。著書に『「私らしく」働くこと』、『ラクする台所』(ともにマイナビ出版)などがある。