第8回 愛媛県新居浜市の「sa vie sa vie」|くらしの本棚

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第8回 愛媛県新居浜市の「sa vie sa vie」

この度、フリーライターの私が、取材の合間に寄り道したり、誰かに連れて行ってもらったり……。
そんなお店をご紹介する連載を始めることになりました。
とは言っても、私は元来マメな性格ではないので、話題の店にすぐ足を運んで……というショップ紹介ではありません。
日本のあちこちに、わあ、なんて素敵な場所だろう……と心を震わすお店がある。そこには、必ず素敵な人がいる。そんな出会いを、ご紹介できたらいいなあと思っています。

今から14年前、愛媛県新居浜市に「とても素敵なお店がある」と聞いて、電車を乗り継いで訪ねました。
それが「sa vie sa vie」です。
「錆びる」という日本語と、「sa vie」=「the Life」というフランス語とを掛け合わせたような名前がなんとも魅力的で、「わあ、行ってみたい!」と思ったことを覚えています。
電車を乗り継いでやっとついたお店は、古いものと新しいものが混じり合い、吟味して選ばれたものが、ポツンポツンと並んだ空間が、キリッとかっこよく、どこか暖かく、とても居心地がいいものでした。

昨年オーナーの佐竹育子さんのご自宅を取材する、という機会がやってきました。
久しぶりに行ったお店は、以前とちょっと様変わりしていました。
というのも、数年前の大雨で浸水し、作り変えたのだそう。
大変な試練を乗り越えて、それでもあの凛とした空気はそのままでした。

佐竹さんは、若い頃から古いものが大好きで、いつかお店を持ちたいと、ずっと思い続けていたそうです。
結婚し、子育てしながらも働いてお金を貯めて……。10年以上経ったとき、ふと出会ったのがこの物件だったそう。迷わず「ここだ!」と決めて、お店造りに取りかかったそう。
骨董市などで見つけてきた古いもの、作家さんの器やバッグ、洋服など、店内に並ぶのは、佐竹さんが好きなものだけ。
実は、佐竹さん、好きなもののストライクゾーンが驚くほど狭いのです。
「好きなものはほんの少し。でも、一旦好きになったら、飽きることなくずっと好きでいつづけます」と教えてくれました。

『Atelier Une place』の布製品、安藤明子さんのサロン、安藤雅信さんの器、山口和広さんの木の器……。
お店では、年に数回の企画展が開催されます。
どの作家さんも、佐竹さんが「大好き!」とコンタクトを取り、やりとりを重ね、大切に育ててきた絆と共にお店にディスプレイされます。

どれも、佐竹さんが実際に暮らしの中で使っているものばかりなので、お話を聞いていると、「モノ」と共にどう暮らし、どう過ごすか、までが見えてくるよう。
ストライクゾーンが狭いからこそ、深くものと向き合う……。
あれもこれも、とつい欲張りになる私は、なんだか恥ずかしくなってしまいます。

そして、私は佐竹さんが選ぶ古道具が大好き!
それは、すべて「えらそう」じゃないのです。
シンプルで、なんてことはなくて、でもどこかに味わいがあり、家へ持って帰るとすっと馴染んでくれる……。
きっと我が家に似合うだろうな……と思うものがたくさんあります。

実は、佐竹さんはものすご~く恥ずかしがり屋さんです。
お店のオーナーだというのに、接客はスタッフに任せて目立たないように隠れてしまう……。
でも、一旦扉を開いたら、人懐こくて暖かくて、私はそんな佐竹さんが大好きです。

松山駅からは約1時間15分ほど。高松駅からは1時間半ほど。
瀬戸内海を見ながらの電車の旅はなかなか楽しいもの。
ぜひ一度訪ねてみてください。

sa vie sa vie
愛媛県新居浜市一宮町2-6-47
☎0897-36-4305
営11:00~18:00
火曜、木曜、日曜日休
http://www.saviesavie.com


【201704旅行・四国】

プロフィール

一田憲子(著者)
1964年生まれ。編集者・ライター。OLを経て編集プロダクションへ転職後、フリーライターとして女性誌、単行本の執筆などで活躍。企画から編集を手がける暮らしの情報誌『暮らしのおへそ』『大人になったら着たい服』(ともに主婦と生活社)は、独自の切り口と温かみのあるインタビューで多くのファンと獲得。全国を飛び回り、著名人から一般人まで、これまでに数多くの女性の取材を行っている。著書に『「私らしく」働くこと』、『ラクする台所』(ともにマイナビ出版)などがある。