第8回 手のひらサイズの小さなガトーショコラ|くらしの本棚

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第8回 手のひらサイズの小さなガトーショコラ

takako@caramel milk tea稲田多佳子さんがお菓子を焼く日々のあれこれを綴るエッセイ。
おまけのおいしいレシピもご紹介します。

12月になりました。1年って本当にあっという間。時間の流れが毎年毎年加速し、どんどん速くなって行っているような気がしてなりません。

1年を締めくくる最後のひと月。やらなければいけないたくさんのことがある、そういう時に限って、普段以上にやりたいことがあれこれ浮かんだり、心躍るようなイベントが入って来たりするのは何故なのでしょうか。もしや逃避癖があるのでは?と、自分を面白く疑いながらも、ちょっと先に待っているいくつかの楽しい予定を鼻先のにんじんに見立て、自らお尻を叩きつつ奮闘している12月の日々であります。

さて、もうすぐクリスマス。お世話になったあの方や大好きなあの方に感謝の気持ちを込め、クリスマスシーズンのギフトにかこつけて手作りのお菓子を届けたいと毎年考えるのですが、時間の使い方の要領が悪い私にとって、なかなか実現し難い年の瀬。

ちょっとしたお礼やご挨拶代わりに、お裾分けにと、お菓子を差し上げる機会はケの日にも多く、日常的な贈り物にはクッキーやマフィン、小さなバターケーキやプリン、といった感じで、気取りのないおやつ的なイメージのあるお菓子を選ぶようにしています。

クリスマスのほか、お誕生日、バレンタインデー、進学・進級のお祝いなど、ハレの日の贈り物には、洋酒を効かせたフルーツケーキ、いちごと生クリームたっぷりのデコレーションケーキ、しっとり濃厚なガトーショコラなど、ちょっと特別感のあるお菓子をワンホールで用意したいもの。だけど、贈る相手との関係性や、その方の暮らしの背景によっては、大きく焼いたお菓子の贈り物って負担になることがあるのも事実、なんですよね。

なので、例えば、一人暮らしの方や小人数家族で暮らす方には、おいしいうちに食べ切ってもらえるサイズのお菓子を。お誕生日や記念日などに予告なしでプレゼントする場合、その方自身でケーキを用意されていることも多いので、日持ちのするもの、時間を置くほどにおいしくなるものを。まだそれほどまでには親しくない間柄ならば、びっくりさせてしまわないよう、受け取ってもらいやすいよう、小さく焼いて。

手作りの贈り物って、往々にして自己満足に傾きがち。それが食べ物ならば特に、受け取る側の立場に立った心配りが必要と、少し立ち止まって、お菓子の焼き方、贈り方を考えるようにしています。

あれこれひっくるめて、様々なシーンで便利に焼いているのが、小さなガトーショコラ。相手の好みが分からなくても、ポピュラーでベーシックなチョコレートのお菓子なら苦手な方は少なそうだし、ガトーショコラは小さく焼いてもラフになりすぎない品格があるようにも感じます。

大きさは、直径10cm前後。このくらいのサイズ感だと、焼きっぱなしでもそれなりな存在感があり、クリームやドライフルーツなどを飾って仕上げても、ゴージャスになりすぎなくていいなと思うんです。金属製の丸型をよく使いますが、焼いてそのままラッピングできる紙製の型も、かなりの頻度で使っています。

今日は、バレンタインデーにもおすすめ、ぐるぐる混ぜるだけで作れるほろりと軽い食感のショコラを、直径9cmの紙製のベーキングカップを使って焼いてみました。型にオーブンシートを敷いたりバターを塗ったりの下準備不要、ダイレクトに生地を入れて焼けるのが紙製ベーキングカップの強みではありますが、こんなふうにオーブンペーパーをくしゃっと敷き込んでから生地を流して焼くのが好みです。ささやかなひと手間だけど、これだけでより可愛らしく、より雰囲気のある焼き上がりに。ぜひ試してみてくださいね。

小さなガトーショコラ

材料(直径9cm紙製ベーキングカップ2個分)

  • A 製菓用チョコレート 60g
  •   バター(食塩不使用)30g
  •   牛乳 25g
  •  
  • B 薄力粉 15g
  •   ココアパウダー 10g
  •   ベーキングパウダー ひとつまみ
  •  
  •   グラニュー糖 25g
  •   塩 ひとつまみ
  •   卵 1/2個分
  •   ラム酒 小さじ1

仕上げ・・・ローストナッツ(くるみ、アーモンド、カシューナッツ、ピスタチオ)、レーズン、ドライみかん、泡立てた生クリーム、粉砂糖各適量

下準備

・卵は室温に戻す。
・製菓用チョコレートは細かく刻む。
・型にオーブンペーパーを敷く。
・オーブンを170℃に温める。

作り方

①Aをボウルに入れて湯煎にかけ、泡立て器で静かに混ぜながらなめらかに溶かし、湯煎から外す。

②グラニュー糖と塩、卵を順に加え、その都度泡立て器でよく混ぜる。

③Bをふるい入れ、粉気がなくなるまでぐるぐると混ぜたら、ラム酒を加えて全体に手早くなめらかに混ぜる。

④カップに流し入れ、170℃のオーブンで18分ほど焼く。ケーキクーラーに取って冷ます。

⑤ケーキが完全に冷めたら、泡立てた生クリームをぐるりとリング状にのせ、その上にナッツ、レーズン、ドライみかんをバランスよく飾り、粉砂糖を少しふって仕上げる。

※湯煎とは、ボウルの底を60℃程度のお湯に当て、温めながら作業することです。
※製菓用チョコレートはカカオ分61%のものを使いました。

プロフィール

稲田多佳子(著者)
京都に生まれ育ち、現在も京都で暮らす。
HP「caramel milk tea」 で手作りお菓子の写真を掲載したのがきっかけとなり、2004年にお菓子のレシピ本を出版。以来、年に数冊のペースでお菓子やお料理のレシピ本を出版している。代名詞といえば、焼きっぱなしの焼き菓子とロールケーキ。ひとくち食べると思わず心も笑顔になるような、毎日でも食べ飽きず作り飽きることのない、簡単でやさしい味わいのお菓子作りがモットー。
日本茶インストラクター、ティーアドバイザー、ジュニアオリーブオイルソムリエを取得。