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天体観測ニュース

ハワイのすばる望遠鏡が捉えた「ラブジョイ彗星」の鮮明なイオンの尾

世界中の注目の的となった「アイソン彗星」に続いて話題を集めているのが「ラブジョイ彗星(C/2013 R1)」です。オーストラリアのテリー・ラブジョイ(Terry Lovejoy)氏が、2011年に発見したこの彗星は、近日点通過時に核が崩壊してしまった「アイソン彗星」とは逆に生き残って見事な尾を引く大彗星になりました。そのラブジョイ氏が2013年9月に発見したのが、現在明るさを増している「ラブジョイ彗星(C/2013 R1)」です。同じ名称なので、少々混乱するかもしれませんが、「アイソン彗星」に続いて多くの天文家から注目されている彗星です。現在の明るさは4等星ほどで肉眼で確認するのは少々たいへんですが、尾の微細構造を米国ハワイのマウナケア山頂にある国立天文台ハワイ観測所の「すばる望遠鏡」が「Suprime-Cam(シュプリーム・カム)」と呼ばれる主焦点カメラで捉えました。

 

ハワイの「すばる望遠鏡」の「Suprime-Cam」が12月3日(ハワイ時間)に撮影した新「ラブジョイ彗星」。/提供 国立天文台、データ解析:八木雅文(国立天文台)

 

「すばる望遠鏡」の特徴は、口径8.2mという巨大な高額赤外線望遠鏡です。その主反射鏡の重量は22.8トンで、焦点距離は15mもあり、主焦点、カセグレン焦点、ナスミス焦点×2の4つの焦点を備え、天候に左右されにくい標高4,139mという富士山よりも高い場所に設置されています。単一鏡としては世界最大級で、世界トップクラスの集光力と解像力を備えた高性能望遠鏡です。満月とほぼ同じ大きさの視野を8,000万画素のデジタルカメラで一度に撮影することが可能で、肉眼の1億倍の天体まで撮影できると言います。

 

世界最大級の口径8.2mもある「すばる望遠鏡」は、ハワイ島マウナケア山頂に設置されています。/提供 国立天文台

 

主焦点カメラの「Suprime-Cam」です。/提供 国立天文台

 

今回、ハワイ時間の2013年12月3日5時半頃に「すばる望遠鏡」によって撮影された「ラブジョイ彗星」は、地球からの距離約0.8億km(太陽からは約1.3億km)にいました。写真には核だけでなく、イオンの尾がうねりながら伸びている構造が見事に写っています。10月31日未明にも、撮像観測、分光観測、偏光観測などの可視光の観測が可能な微光天体分光撮像装置「FOCAS (Faint Object Camera and Spectrograph)」によって核から吹き出すダストのジェットが撮影されていましたが、今回はさらに尾の内部まで詳細に確認できたことになります。地上からこれだけの画像が撮影できるのは、さすが「すばる望遠鏡」というところですが、「ラブジョイ彗星」は、太陽にはあまり接近しないため、12月23日に近日点を通過しても3等星ほどの明るさではないかと考えられています。しかし、双眼鏡や望遠鏡を使用すれば捉えることができる明るさなので観測のチャンスは充分ありますので皆さんがんばりましょう。

 

微光天体分光撮像装置「FOCAS」です。 /提供 国立天文台

 

10月31日に「すばる望遠鏡」の「FOCAS」で撮影した「ラブジョイ彗星」の核の周辺です。/提供 国立天文台、撮影・データ解析:八木雅文(国立天文台)

 


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