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望遠鏡導入計画

(11)スカイポッドVMC110Lの設定と調整

「スカイポッドVMC110L」で自動導入できるようにするためにいくつかの設定や調整を行なわなくてはいけません。項目は大きく分けて、「コントローラ」「ファインダ」「アライメント」の3つになります。アライメント(alignmet)は基準星を使ってズレを調整する作業のことです。今回は「コントローラ」と「ファインダ」の設定および調整を行ないます。

 

コントローラの設定

 

「スカイポッド経緯台」にクランプのようなものはなく、動作はすべてモータで行ないます。そのため、電池を入れないと鏡筒の方向を変えることができません(水平は三脚と結合しているネジを緩めれば動きますが)。最初に、基本的な情報として、時刻、日付、観測場所の位置を入力しなくてはいけませんが、日時はともかくとして場所は緯度経度を指定するのですが、緯度経度を把握している人はそうはいないと思います。マニュアルには主要都市のおおよその緯度経度が書かれているのでこの値を入力しておく方法もありますが、正確に入れたいという方もいるでしょう。その場合には昔ながらに地図を引っ張り出してきて調べる手もありますが、パソコンを所有しているのであればインターネット上にあるサイトで正確に調べることができます。

 

スカイポッド経緯台にはクランプはありません。望遠鏡の向きを変えるためにはモータで駆動させる必要があります。

 

例えば、「Googleマップ」なら緯度経度を調べたい場所でマウスの右ボタンをクリックして「この場所について」という項目を選択すると緑の矢印が表示されるようになり、ここにマウスポインタを重ねると緯度経度が表示されます。スマートフォンをお使いの方はもっと簡単で「Google Earth」のような緯度経度が表示されるアプリを利用すれば現在地の値をGPS機能で自動的に表示してくれます。

 

Googleマップで緯度経度を調べる場合は、調べたい場所を右クリックすると緑の矢印が表示されますのでそこにポインタを重ねます。

 

iPhoneのGoogle Earthは、中央に表示されている場所の緯度経度を画面下部に表示します。

 

電池を入れて電源をオンにすると液晶にスタート画面が表示され、各設定のメニューに切り替わります。ここで、日時や緯度経度の入力、言語やLCDの明るさの選択をすればコントローラの基本的な初期設定は終了です。その後は、「太陽を見てはいけません?」という警告が表示され、全体アライメントの表示に切り替わります。

 

(1)コントローラの電源を入れるとこのようなスタートアップ画面が出ます。

 

(2)次の画面では、時刻や観測場所、言語などの各設定のメニューが表示されます。

 

(3)時刻の設定はこんな感じです。左右キーで移動して上下キーで値を変更します。最後に「OK」を選択して(2)のメニュー画面に戻ります。

 

(4)観測場所も同様に左右キーで項目の移動、上下キーで値の変更です。最後に「OK」に移動して「選択」キーを押して(2)のメニュー画面に戻ります。

 

(5)各設定が終了したら(2)のメニュー画面の一番上にある「OK」を選択すると「太陽を見てはいけません?」という警告が表示され、確認が求められます。失明するので本当に注意してください。「OK」に移動して「選択」キーを押して次に進みます。

 

(6)アライメントを行なうために鏡筒を西向きにおよび水平にする指示が表示されます。スポットファインダの調整もこの画面の状態で行なったほうが楽です。

 

ファインダの設定

 

アライメントの調整に入る前にファインダの設定を先に行なっておきましょう。ファインダがきちんと設定されていれば、ある程度明るい天体なら自動導入を行なわなくても手動で視野に入れることができます。昔は天体望遠鏡用のファインダというと屈折式望遠鏡の小型版だったのですが、最近は「スカイポッドVMC110L」のように等倍のオプティカルタイプが付属している製品も多くなりました。ハーフミラーに表示された赤いスポットに天体を導入するというものですが、軍用銃やエアソフトガンによく使われているドットサイトにとてもよく似ていて仕組もほぼ同じです。

 

ビクセンのスポットファインダは、等倍のオプティカルタイプのため、暗い天体の導入には向きませんが、肉眼でそのまま見えている天体を赤いスポットに重ねるだけでOKです。

 

余談ですが、軍用銃やエアソフトガン用のドットサイトはスポットファインダと同じような仕組で、デザインもよく似たものがあります。写真のドットサイトはゴミや露が付着しにくいチューブ式なのでデザインは異なりますが、明るい場所でもダットがよく見えます。天体望遠鏡用として使用しても使えそうな気がしますが、マウントが違うのでそのまま取り付けることはできません。ちなみにCELESTRONの日本代理店であるサイトロンジャパンは、ベレッタの散弾銃やライフルスコープ、ドットサイトも扱っており、自衛隊でも使用しているMDシリーズという優秀なドットサイトを販売しています。

 

ファインダの位置調整は、建物や鉄塔の先端を利用して、まず主鏡筒の中心に先端がくるように経緯台を動かします。次にファインダの上下左右のツマミを回して赤いスポットと鉄塔の先端が重なるように調整すれば終了です。この時、「スカイポッド経緯台」はアライメントの調整画面にしておくことが大切です。なぜなら、後ほど説明する「SCOPE」モードになっていると調整中でもそのまま天体を追尾する動きになってしまい、作業中に望遠鏡が目標物からズレてしまうからです。なお、スポットの明るさは上部のツマミで自由に変えることができます。

 

スポットファインダを取り付けて正面から見た状態です。取り付ける際にレンズに触れてしまい指紋が若干付いてしまいました。オープンタイプの弱点ですね。

 

背面から見た状態です。中程にある円形のツマミ①は赤いスポットの明るさ調整とオンオフを兼ねたダイアルです。この中にボタン電池が入っています。②は左右、③は上下の調整用ダイアルです。

 

鏡筒の視野の中央にファインダと一致させるための目標物を入れます。必ずアライメントの調整画面で作業を行いましょう。「SCOPE」モードという望遠鏡と星図が連動して動くモードでは時間の経過とともにズレてしまいます。モードについては少々ややこしいので詳しい説明は次回します。

 

①のダイアルをオンの方向に回すとスポットファインダに赤いスポット光が見えるようになります。写真に写すのがなかなか難しくボンヤリとした丸になってしまいました。しかも中央よりズレています。実際にはもっと小さい赤い点で、ファインダの中央で目標物と一致させることになります。

 

赤いスポットと目標物が一致するように②と③のダイヤルを回して調整します。写真にはうまく写りませんでした。肉眼でも昼間はあまり周囲が明るいと赤いスポットが見えないことがあります。可能であればファインダの調整は完全に屋外ではないほうがやりやすいかもしれません。例えば部屋の中から行なうとハッキリスポットが確認できます。

 

では、次回は実際にアライメントを行なってみます。

 


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〈連載目次〉

「望遠鏡導入計画 - 1 金環日食に向けて機材を検討する」
「望遠鏡導入計画 - 2 メーカーはやはりタカハシか?」
「望遠鏡導入計画 - 3 どのタイプの望遠鏡を選ぶか:基礎編」
「望遠鏡導入計画 - 4 どのタイプの望遠鏡を選ぶか:鏡筒編」
「望遠鏡導入計画 - 5 どのタイプの望遠鏡を選ぶか:架台の種類編」
「望遠鏡導入計画 - 6 どのタイプの望遠鏡を選ぶか:経緯台編」
「望遠鏡導入計画 - 7 どのタイプの望遠鏡を選ぶか:赤道儀・三脚編」
「望遠鏡導入計画 - 8 購入条件に合う天体望遠鏡を探す」
「望遠鏡導入計画 - 9 天体望遠鏡はこれに決定!」
「望遠鏡導入計画 - 10スカイポッドVMC110Lを組み立てる」
「望遠鏡導入計画 - 11スカイポッドVMC110Lの設定と調整」
「望遠鏡導入計画 - 12スカイポッドVMC110Lのアライメント準備」
「望遠鏡導入計画 - 13スカイポッドVMC110Lのアライメントを行なう」
「望遠鏡導入計画 - 14危険が伴う太陽撮影!NDフィルタも注意が必要」
「望遠鏡導入計画 - 15日食撮影用のフィルタを用意する」
「まさに神秘の天文現象 ? 2012年5月21日の金環日食」
「金環日食のクライマックスを13秒のビデオで」

 

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著者プロフィール

マイナビ出版 天体観測&撮影編集部(出版社)
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