第9回 2都市の旅、香港 その3|くらしの本棚

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第9回 2都市の旅、香港 その3

こんにちは。衣食住、暮らしに関するエッセイを書いている柳沢小実です。ご存知の方も、はじめましての方もよろしくお願いします。

これまで、普段は家でこもって原稿を書いたり、撮影をしたりと、家にいる時間が圧倒的に長かった私。それが、昨年出た書籍『わたしのすきな台北案内』の取材で、一年のうち2か月も海外で生活したことから、暮らし方や考え方、人とのかかわり方が大きく変わりつつあります。

人生80年だとすると、40才はちょうど折り返し地点。ゆるやかにやってくる身体の変化や取り巻く環境など、ままならないことも増えてきますが、その代わりに、大切な人たちのおかげで今の自分がいると感謝したくなるような出来事に、日々遭遇しています。

そんな私の、「半径100m日記」、ゆるゆるとしたお喋りにお付き合いいただけると嬉しいです。

香港旅がどうしてこんなに楽しかったか。
それは、食べ物はもちろんのこと、買物が楽しかったから。
安いものから高価なものまで、日常使いしたいうつわが沢山あって、ずっと興奮しっぱなしでした。

最も香港らしいうつわは、鶏がいきいきと描かれている上の写真の「鶏公碗」。
手描きのものからプリントものへと移行していて、手描きのものはお店に残っているものだけだそう。なので、店先で手描きの公鶏碗を見つけたらお見逃しなく。

今年が酉年ということもあり、欲張って買ってしまいました。
右上の青い線が入った小鉢とれんげは、レストランでお願いして販売していただいたもの。後日、似たものを見つけて数客買い足しました。

街角にあるローカル度抜群のうつわ屋さん。
手描きの鶏のうつわは、このような小さなお店で販売されています。

ですが、このお店にもあと数十客ほどしか置いていなくて、伝統が便利さにとって代わる寂しさを感じました。
せめて、自分は遠い日本で香港の歴史を思いながら、大切に使い続けようと思います。

ちなみに、お店の名前はわからないのですが、地図には「鶏公碗叔叔-陶瓷碗」とありました。住所は香港西營盤正街40です。

そして、香港では中国で作られた磁器「景徳鎮」を手に入れることもできます。
この龍&鳳凰の柄は80年代くらいのデッドストックだと聞きました。
台湾のアンティークショップで買い求めたレンゲに仲間が増えました。帰国後に日本でもいくつか買い足して、レンゲばかりが増殖中です。

うつわ探しの旅には、梱包材やコンテナボックスなどを持参すると便利です。 小さいお皿は紙に包んでコンテナボックスに入れています。
ポットは蓋をマスキングテープで固定するか紙を挟むかして、注ぎ口にぐるぐると紙を巻いて補強。それから梱包材で包みます。おかげで、スーツケースに割れ物を入れて持ち帰っても、一度も割れたことはありません。

そして、香港は食材天国でもあります。おいしかったものを紹介します。


100年以上続く老舗「安利製麵廠」で購入した麺は、うれしい無添加でした。ほうれん草やホタテ、海老、鶏エキスなどが練り込まれている麺は、とても上品な味わい。
一玉ずつ個装されているので、お土産にも。
私も、料理家の友人たちなどの食いしん坊な人へ差し上げました。
和え麺にして食べると美味しいですよ。
「安利製麵廠」香港上環文咸東街84-90號

クノールの「濃湯寶」
スーパーマーケットでの買い物も楽しみのひとつ。
クノールの「濃湯寶」は、ゼリーのようなスープの素です。珍しいなと思ったのは、牛・豚・鶏の他に魚があったこと。

他に、スーパーマーケットで買ったものでは、ガーデンというシェフのマークのブランドのネギクラッカー。薄くてパリパリした食感も良く、抜群に美味しかったです。日本でもカルディで手に入るという噂ですが、いまだ出会えず……。また食べたい!

全3回にわたってお届けした香港旅行。
「食べる」も「買う」も楽しめて、お洒落さもあって女子旅には最高でした。
よく行く台湾より航空券・ホテル・物価ともに割高でしたが、ぜひまた行きたいと思っています。

プロフィール

柳沢小実(著者)
1975年、東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。エッセイスト。『大人の旅じたく』、『わたしのすきな台北案内』(ともにマイナビ出版)、『大人のひとり暮らし』『気持ちのいい暮らしの必需品』(大和書房)、『日々のごはんとはたらくキッチン』(KADOKAWA)、『シンプルな暮らしの設計図』(講談社)など、暮らしにまつわる著書多数。確かなもの選びに定評があり、フェリシモで商品開発を手がける。http://www.furarifurari.com/