第8回 2都市の旅、香港 その2|くらしの本棚

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第8回 2都市の旅、香港 その2

こんにちは。衣食住、暮らしに関するエッセイを書いている柳沢小実です。ご存知の方も、はじめましての方もよろしくお願いします。

これまで、普段は家でこもって原稿を書いたり、撮影をしたりと、家にいる時間が圧倒的に長かった私。それが、昨年出た書籍『わたしのすきな台北案内』の取材で、一年のうち2か月も海外で生活したことから、暮らし方や考え方、人とのかかわり方が大きく変わりつつあります。

人生80年だとすると、40才はちょうど折り返し地点。ゆるやかにやってくる身体の変化や取り巻く環境など、ままならないことも増えてきますが、その代わりに、大切な人たちのおかげで今の自分がいると感謝したくなるような出来事に、日々遭遇しています。

そんな私の、「半径100m日記」、ゆるゆるとしたお喋りにお付き合いいただけると嬉しいです。

女友達と旅した、12月の香港。
短い滞在な上に体調を崩したので心残りがあり、思いきって2月にまた行ってきました。

どんなに都会な街にも、人々が日常生活を送っているのんびりした場所はあります。
普段着で入れるごはん屋さんや市場など、旅先ではなごみスポットを探して歩くのが好きです。

この2回の香港旅では、いくつもの食べ物が印象に残りました。
香港は、海老わんたん麺など麺メニューも人気ですが、今回の旅ではごはんものがとびきり美味しく感じられました。

煲仔飯(クレイポットライス)
小さな片手土鍋で炊いたごはん。Wikipediaによると、「土鍋を使って一人前ずつの白米を炊き、炊きあがりの直前に下味を付けた具を乗せて蓋をして蒸し、醤油ベースのたれをかけて完成させるご飯料理」とあります。現地に住む人によると煲仔飯は香港の冬の風物詩だそうです。煲仔飯屋が集まっているエリアは、どの店も長蛇の列でした。

初めて食べた煲仔飯は、シンプルに鶏肉+卵で。
卵のきらめきって、どうしてこんなに食欲をそそるのでしょうね!
割り入れたらすぐにかき混ぜて、やさしく火が通ったところで「いただきまーす!」。

豪華な具材を楽しむも良し、シンプルな具材でお米&おこげの風味を味わうも良し。
人気店はそれなりに待ちますが、その価値はあります。

観光エリアに近くて行きやすいのは油麻地駅の「興記煲仔飯」。
このお店は周辺に複数店舗がありますが、料理はひとつのキッチンで作られているため同じなのだとか。
この地域一帯は煲仔飯ストリートと言えるほど、煲仔飯の店がたくさんあります。

地元の人と行った西環駅の「嚐囍煲仔小菜」は、ローカルしかいない店。 煲仔飯は夜だけで、お昼は定食のみ。この定食も美味しかったです。

市場の中のお粥屋さん

この旅では、中国語学校のクラスメイトと偶然日程と行き先が重なって、「旅先で一緒にごはんを食べましょう」ということになりました。
その彼女が連れていってくれたのが、市場内にあるお粥屋さん「妹記粥店」。
地元の人から観光客まで、食べている間にも次々とお客さんがやってきます。
たとえ心細い旅先でも、お腹がじんわりあったまると元気が出る。お粥を食べるたびに、家でも朝ごはんをお粥にしようかな、と思います。

こんなかんじで、ほぼ食い倒れの旅でした。
それでももちろん、まだまだごはんもデザートも食べ足りない! きっとまた訪れるでしょう。
それまでに、本などを読んで香港の食の豊かさをもっと研究しておきたいです。

プロフィール

柳沢小実(著者)
1975年、東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。エッセイスト。『大人の旅じたく』、『わたしのすきな台北案内』(ともにマイナビ出版)、『大人のひとり暮らし』『気持ちのいい暮らしの必需品』(大和書房)、『日々のごはんとはたらくキッチン』(KADOKAWA)、『シンプルな暮らしの設計図』(講談社)など、暮らしにまつわる著書多数。確かなもの選びに定評があり、フェリシモで商品開発を手がける。http://www.furarifurari.com/