第7回 2都市の旅、香港 その1|くらしの本棚

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第7回 2都市の旅、香港 その1

こんにちは。衣食住、暮らしに関するエッセイを書いている柳沢小実です。ご存知の方も、はじめましての方もよろしくお願いします。

これまで、普段は家でこもって原稿を書いたり、撮影をしたりと、家にいる時間が圧倒的に長かった私。それが、昨年出た書籍『わたしのすきな台北案内』の取材で、一年のうち2か月も海外で生活したことから、暮らし方や考え方、人とのかかわり方が大きく変わりつつあります。

人生80年だとすると、40才はちょうど折り返し地点。ゆるやかにやってくる身体の変化や取り巻く環境など、ままならないことも増えてきますが、その代わりに、大切な人たちのおかげで今の自分がいると感謝したくなるような出来事に、日々遭遇しています。

そんな私の、「半径100m日記」、ゆるゆるとしたお喋りにお付き合いいただけると嬉しいです。

昨年の12月半ばから後半にかけて、台湾と香港を旅してきました。おととしの年末も台湾とベトナムを旅して、それぞれの文化や食の違いをより明確に感じることができました。2か国の旅も、なかなか良いものです。

台湾旅の先輩には、「台湾+マカオも舌が飽きなくていいよ」と言われています。1か国の旅より日数が必要になりますが、飛行機代もお得なので、長い休みが取れたら2か国の旅もおすすめします。

そんな2か国の旅で、久しぶりに訪れた香港。前回行ったのははるか昔の返還前で、たくさんの露店が並ぶ名物ストリートの女人街にて、キーホルダーを買った記憶しかありません……。

なので、今回が初めての自分の足で街を歩きました。

私は台北で1泊してから、香港へ。台湾に住む友達2人は同日の別の便で香港入りしたので、空港で待ち合わせました。

待ち時間が数時間あったため、まずは空港内にある有名店「翠華餐廳」で香港ミルクティーを。香港ミルクティーは濃厚だけど、甘くないのですね。デザートを合わせるなら何がいいかな、とメニューを見ながら妄想していました。

友達と合流してまずホテルに荷物を置くことにして、街の中心部の香港島駅に降り立ったものの、どうにもタクシーがつかまりません。タクシー乗り場で30分ほど待ったでしょうか。台数はある程度走っているのに空車がなくて、しかも道も混んでいたので、ここでかなり時間をロスしてしまいました。

香港は、みっちり詰まった街という印象です。

聞くところによると、香港は地震がないらしく、そのためか高層ビルがにょきにょきと乱立しています。視界に入るのはビル、ビル、そのまた向こうにもビル。建物の密度は、これまで旅した街の中でもいちばんかもしれません。

そして、とにかく人が多くて、スピードが早い。「私、この街にいたら淘汰される……」と思ったくらい、都会的でパワフルな街だと感じました。とても刺激的なので、そこに魅力を感じる人も多いと思います。

のんびりした街が好きな私は、なかなかその速さにペースを合わせられなくて、それもあってか最終日(香港から台北へ移動する日)に胃腸炎で寝込んでしまいました……。

旅行前にずっと仕事が立て込んでいてあまり寝ていなかったので、環境の変化に頭と身体がビックリしたのか、体力が落ちていたのかもしれません。

一緒に行った友人とは帰りも別の便だったので、ふらっふらになりながら空港へ行き、空港で熱を計られたものの、無事に通してもらえて台北へ飛びました。その間に家族や台湾の友人たちが、日本語で受診できる病院やクレジットカード付帯の保険について調べてくれて(結局、受診せずに済みました)、そこでやっと安心できました。

疲れた身体で旅に出るのは良くないですね。
これがもしノロだったら……。
これがもしインフルエンザだったら……。
一体どうなっていたかわかりません。

と、このような3日間(動けたのは正味1日半)の短い旅でしたが、うつわや刺繍もの、食べ物など、友達のおかげでかなり充実していました。

次回は食べ物編です。引き続きお楽しみくださいね。

プロフィール

柳沢小実(著者)
1975年、東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。エッセイスト。『大人の旅じたく』、『わたしのすきな台北案内』(ともにマイナビ出版)、『大人のひとり暮らし』『気持ちのいい暮らしの必需品』(大和書房)、『日々のごはんとはたらくキッチン』(KADOKAWA)、『シンプルな暮らしの設計図』(講談社)など、暮らしにまつわる著書多数。確かなもの選びに定評があり、フェリシモで商品開発を手がける。http://www.furarifurari.com/