くらしの本棚

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第3回 大阪、北浜の「galerie AU BOIS」

この度、フリーライターの私が、取材の合間に寄り道したり、誰かに連れて行ってもらったり……。
そんなお店をご紹介する連載を始めることになりました。
とは言っても、私は元来マメな性格ではないので、話題の店にすぐ足を運んで……というショップ紹介ではありません。
日本のあちこちに、わあ、なんて素敵な場所だろう……と心を震わすお店がある。そこには、必ず素敵な人がいる。そんな出会いを、ご紹介できたらいいなあと思っています。

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また、あの店の空気が吸いたくなる……。
「galerie・AU BOIS」は、そんな店です。

あるときは、だれかがどこかで摘んで、
押し花にし、大切に保管していた植物標本が。

あるときは、今にもホロホロと崩れそうな古い楽譜や、新聞などが。

店主の原田真作さんと真紀さんが集めたものを眺めていると「集める」という行為さえ、美を生み出すためのツールとなることを教えられているよう。
そして、ひとつひとつのモノと向き合う時間はもちろん、
店内にあるすべてのモノが
ひとつの空気を作り出していることを感じ
また、その世界へ身を浸したくなるのです。

 

大阪市北浜は、大阪取引所を中心とした金融の街です。
そして、私は大学卒業後、OLとしてこの街に3年間通ったのでした。
周囲はビジネス街で、当時、買い物ができるようなお店はほとんどありませんでした。
だから、そんな北浜に、ギャラリーができたと聞いたとき、「え~、なんでまたあんなところに?」
と不思議に思いました。

かつて真紀さんは神戸の栄町の古いビルの一室でひとりで「グランデール」というお店を営んでいらっしゃいました。
そして、私の初めての著書「扉をあけて、小さなギャラリー」で取材をさせていただきました。
しばらくして、ご結婚されたときき、そして、移転を知りました。
今はご夫婦で「メゾングランデール」として、ギャラリー&ショップ[Galerie AU BOIS]を営み
真紀さんは、古いボタンやパーツでアクセサリーを作る「MERCERIE GRAN D’AILE」を立ち上げ、さらに、日本各地で企画展も開いているそう。

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地下鉄堺筋線の北浜駅から、東横堀川にかかる高麗橋を越え、少し歩くと、大阪洋服会館という古いビルが見えてきます。
この地下にあるのが「Galerie AU BOIS」。
階段を降りるときから、まるで異次元の世界へ入っていくような、
不思議な感覚にとらわれます。
そして、扉をあけて一歩入ると
パチリ
と自分の中でスイッチが切り替わったよう。

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この地下の空間は、コンクリートに着色して床や壁を塗り、建具を取り付け、ふたりがプロデユースされたそう。
木の根を利用したシャンデリアは、地下のこの部屋に根っこが伸びてきているイメージなのだと言います。

しんと静かな空間では、
全身の毛穴を開いて
そこにあるものたちの
色、形、質感、ニュアンス、重さ、軽さ、音、匂い……
などを味わい尽くしたい気分になります。

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奥の小部屋では、企画展が行われます。
私が前回訪ねたときは、植物標本展が。
今回は古い印刷物や古書、楽譜などの「紙」が。

天井には麻ひもを使って「聖歌譜」のカーテンがしつらえられていました。
「ご自宅でも、小さなスペースに5枚、10枚と吊るすときれいですよ」と教えていただき、私も数枚手に入れました。

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絶対に必要ではないけれど、
家に連れて帰って、毎日眺めていれば、
いつも使っているのとは反対側の
心の感度が磨かれていくような、
そんな気がします。

幸せなひとときを過ごして、外へ出るとオフィス街の夕暮れでした。
ああ、ここで過ごした20代は、なんにもわからない娘っこだったなあ。
今こうしてライターとして仕事をしていることをがむしゃらに頑張ればなんとかなるさ、
ということを、あのときの私に教えてあげたいなあなどと思いながら、帰路につきました。

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galerie AU BOIS
大阪市中央区東高麗橋2-31大阪洋服会館B1
☎︎06-6944-1711
営12:00~18:00
金、土、日曜日のみ営業
http://www.maisongraindaile.com

プロフィール

一田憲子(著者)
1964年生まれ。編集者・ライター。OLを経て編集プロダクションへ転職後、フリーライターとして女性誌、単行本の執筆などで活躍。企画から編集を手がける暮らしの情報誌『暮らしのおへそ』『大人になったら着たい服』(ともに主婦と生活社)は、独自の切り口と温かみのあるインタビューで多くのファンと獲得。全国を飛び回り、著名人から一般人まで、これまでに数多くの女性の取材を行っている。著書に『「私らしく」働くこと』、『ラクする台所』(ともにマイナビ出版)などがある。