第2回 旅が生活になった!|くらしの本棚

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第2回 旅が生活になった!

こんにちは。衣食住、暮らしに関するエッセイを書いている柳沢小実です。ご存知の方も、はじめましての方もよろしくお願いします。

これまで、普段は家でこもって原稿を書いたり、撮影をしたりと、家にいる時間が圧倒的に長かった私。それが、昨年出た書籍『わたしのすきな台北案内』の取材で、一年のうち2か月も海外で生活したことから、暮らし方や考え方、人とのかかわり方が大きく変わりつつあります。

人生80年だとすると、40才はちょうど折り返し地点。ゆるやかにやってくる身体の変化や取り巻く環境など、ままならないことも増えてきますが、その代わりに、大切な人たちのおかげで今の自分がいると感謝したくなるような出来事に、日々遭遇しています。

そんな私の、「半径100m日記」、ゆるゆるとしたお喋りにお付き合いいただけると嬉しいです。

2週間の台湾短期留学中は、旅ではなく学ぶための滞在なので、ホテルの個室ではなく、友人宅と、数人が共同で宿泊するドミトリーに泊まっていました。

最初の数日は友人宅にホームステイ。
とは言っても、3人家族の彼らは台北の中心地にある超高層ビル「台北101」の裏に実家があって、ほとんどの時間をアクセスの良い実家ですごしていました。

よって、台北市内からほど近い象山というエリアにある彼らの家をひとりじめ。
100㎡ほどの広々としたファミリータイプのマンションに、数日間滞在させてもらいました。

部屋には立派なキッチンもお風呂もついていましたが、夕食は彼らと外で食べて車で送ってもらう生活をしていたので、ほとんどキッチンは使いませんでした。

 

自炊をしているわけでもないのに、なぜ旅が生活になったのか。
それは、学校へ行くための交通手段、バスのおかげでした。

友人宅のある象山は、海抜181メートルの低い山のあるエリアで、友人宅は象山の中腹にあるバスの終着点から徒歩数分のところにありました。電車の最寄り駅へは徒歩で15~20分ほどかかります。

電車のほうが乗り慣れてはいるけれど、学校へ通うのには何度か乗り換えをしなければならず、だったら思いきって一本で行けるバスを使うことにしました。

バス停には、バスの番号ごとに停車駅が記されたプレートが貼られています。
どのバス停で降りると電車の駅に近いか、バスは何分おきに来るかなどもしっかり書かれていて、わかりやすいです(心配な方はこの写真を撮っておくと安心)。

バスに乗るのは不安でしたが、そう広くない台北市内で乗り降りを間違えても、タクシーで戻ってくればいいと腹をくくって乗ってみました。

車内前方には次の停車駅を示す電光掲示板もありました。
(しかし、これが表示されていないバスもたまにあるというトラップも!)

では、そもそもどのバスに乗ればいいか。

それはグーグルマップで調べます。

日本での調べ方と同じように、出発地と目的地を記入すると、行き方の選択肢にバスが出てくるので、そこに示された番号のバスに乗るというわけ。
乗り降りするバス停の名前もちゃんと出ているので確認しやすいです。

それでも心配なときは、グーグルマップで現在地を確認しながら乗ります。ただし、これはレンタルしたwi-fiを持っているからできることかもしれません。

バスの進む速度や景色の流れ方は、歩く速度とも自転車とも、もちろん電車とも違って、ぼんやり外を眺めているだけでほのぼのします。

ここが異国の地だということを忘れて、街の一員になったように思えてくるのです。

そして、実はバスのほうが電車よりも小回りがきいて便利なことも多いです。

バスの乗り方がわかればタクシーを使わずに済んで経済的で、なにより街を観察できるのが楽しい。

車窓から、妙に混んでいる小吃の店を見つけて、後日食べにいったりもしました。そんなちいさな発見もたくさんあります。

街の喧騒や人々が暮らす姿をより身近にふれて、彼らの輪の中に足を踏み入れると、いつのまにか旅というより生活に近くなっています。

旅でバスに乗ること、おすすめします。

プロフィール

柳沢小実(著者)
1975年、東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。エッセイスト。『大人の旅じたく』、『わたしのすきな台北案内』(ともにマイナビ出版)、『大人のひとり暮らし』『気持ちのいい暮らしの必需品』(大和書房)、『日々のごはんとはたらくキッチン』(KADOKAWA)、『シンプルな暮らしの設計図』(講談社)など、暮らしにまつわる著書多数。確かなもの選びに定評があり、フェリシモで商品開発を手がける。http://www.furarifurari.com/