サンフランシスコで、ブルワリーツアーを企画したい!アメリカのクラフトビール事情もお聞きしました(後編)|くらしの本棚

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サンフランシスコで、ブルワリーツアーを企画したい!アメリカのクラフトビール事情もお聞きしました(後編)

サンフランシスコから「びあけん3級」受検にやってきて、合格を果たした大沼さんのインタビュー後編です。前編では、アメリカでビールの美味しさに衝撃を受けた体験談や、サンフランシスコのビール事情をお届けしました。インタビュー後編は、お酒の日米習慣の対比に発展していきました。

日本ビール検定の公式サイトはこちら

<大沼美穂子さん>

プロフィール

・出身地     →新潟県胎内市
            サンフランシスコ(現在住) 

・現在の職業  →サンフランシスコを拠点にしている旅行会社勤務、ライター

・趣味      →街歩き、アメリカンアンティーク探し、スポーツ観戦

・自分PR   →2000年初めからサンフランシスコを拠点に、オリジナルのツアー企画や案内をしています。その最新情報は、トラベルライター、フードライターとして日本の大手ガイドブックのWEBサイトに毎週更新。また栄養士、フードコーディネーターの資格を生かして、日本の発酵食品の普及にも努めています。 


編集部:カリフォルニアと言えば、ワインで有名ですが、ビールとの違いはありますか?

大沼さん:カリフォルニアはワインの一大産地NAPAバレーがあって、ワインのほうが圧倒的にメジャーで、ワインを語る人も五万といます。反面、クラフトビールを語る人は少数派。

編集部:それは意外ですね。クラフトビールは語ることがいっぱいあるのに!

大沼さん:話すタネはいっぱいありますよね。しかも語る機会が少ない分熱く語る人が多いです。それに、アメリカには優秀なエールが桁違いにあるので、ぜひ飲み比べて欲しいです。特にサンフランシスコの気候は、1年中通して過ごしやすく、日本の夏のように蒸し暑くありません。なので、キンキンに冷えたピルスナータイプを飲むよりも、エールのような香り華やかで深い味わいのタイプがとても似合っています。


サンフランシスコ、晴れ渡る空とゴールデンゲートブリッジ


ヨヨセミテ国立公園に近いフレズノで製造されている「FIREFALL RED」。これは冬季限定商品です

また、様々な民族が住んでいるアメリカの水平思考の発想は、日本人の得意とする垂直思考と大きく違っています。ビールづくりにおいても顕著に表れており、「ふざけてる!?」と思うぐらいのフレーバービールが続々登場します。スイカ、ザクロ、パイナップル、マンゴー……など、ビールが苦手な人でもちょっと試したくなりますよね。ハロウィンになったら、パンプキンスパイスIPAが発売されます。最も驚いたフレーバーは、ピーナッツバター&いちごジャムでした。
「新しい味、挑戦してみる?」
「こんな原料組み合わせもアリじゃない?」
自由を楽しむアメリカ人の気質によって、どんどんフレーバーが増えていきます。


21st「ザクロ」


アビータ「ピーナッツバター&ジャム」

編集部:面白いです!アメリカ人の気質なんですね。

大沼さん:飲酒に対しても、じっくり飲むスタイルが一般的です。また、若い方達が何人かでバーカウンターで一杯だけお酒を飲み、ゾロゾロと次のバーに行くバークロール(Bar Crawl/ノロノロしたハシゴ酒?)は、サンフランシスコのクリスマスのイベントにもなっています。
食中酒という習慣がありませんので、食事をする時間、お酒を飲む時間を分けて考えています。バーに行くと”つまみ“すらなく、あってもチップス一袋ぐらいですかね。
西海岸はワイン文化が根付いている事もあり、食事をとりながらワインを飲む習慣はありますけど、日本のような居酒屋がないですから、食中酒感覚はほとんどないです。


サンフランシスコの冬の風物詩「バークロール」

編集部:大沼さんは普段ビールをどうやって飲まれますか?

大沼さん:おうちで晩酌に飲むのが一番です!知らないラベルがあったら、とりあえず試してみます。午後になると、「今日の夕飯とビールは、何にしようかな」といつも考えています。
アメリカでは、ビールは6本パック単位で買うのが基本。幸い、近所の食材店トレーダージョーズ(本社:ロサンゼルス)は、1本ずつ買うことができ、さらに、棚定番というのが少なく、毎回仕入れる商品が変わります。ビール棚にはいつも新しいラベルがあり、自宅にいながら世界のビールを楽しめるプチ贅沢。これらは覚書も兼ねてインスタでシェアしています。


カリフォルニア生まれで、大人気のスーパーマーケットチェーン「トレーダージョーズ」

編集部:コロナ禍なら、なおさら嬉しい店舗ですね。大沼さんにとって、ビールを飲む最高の瞬間は?

大沼さん:大きなツアーやイベントが終わり、出張先から自宅に帰ってきて飲むビールが最高です。
出張はカリフォルニア以外にも中西部、東海岸に行くこともあり、仕事の合間にローカルのビールをお土産に買い、自宅で乾杯します。
ビールの良いところは、肩肘張らない“気軽さ”。ワインは、どこか緊張感とうんちくが伴ってしまいがちです。この両者の立ち位置については、ギリシャ・ローマ時代に遡っていたのを公式テキストで説明されていて、なるほど納得しました。

編集部:印象的なビールのエピソードはありますか?

大沼さん:2009年11月、北カリフォルニアでアサヒスーパードライ樽生が発売されました。同時に日本のホシザキさんの生ビールディスペンサーもやってきました。そのディスペンサーで注いだビールの泡が、クリーミーで際立つ美味しさには衝撃を受けました。日本のディスペンサーの性能が極めて高いのを、実感しました。ビールを通じてアメリカで再認識した、日本の技術力の高さが印象的なエピソードです。

編集部:今回は、アメリカの食文化に触れることができました。ありがとうございました!最後になりますが、大沼さんのパワーがみなぎっている源泉を教えてください。

大沼さん:基本的に人見知りなんですが(笑)、わりと何でも、「とりあえず、やってみよう!」「行き詰まったら、そのつど考えればいい」精神かもしれませんね。お金が足りなくなり安価なビールにしようか?と思った時も、いや、とりあえず美味いシェラネバタを飲みながら金策を考えよう!と思ったほど。
コロナが終息したら、アメリカにビールを飲みに来てください!ブルーパブのカウンターでは「よくぞビールの質問をしてくれた!」と迎えてくれます。言葉の問題は気にしない、ビールには言葉の壁を超える不思議な力がありますよ。

日々刻々と成長するアメリカのクラフトビール事情。「とりあえずやってみよう」精神にあふれるビールに溢れた生活を満喫している大沼さんのお話、いかがでしたでしょうか。海外旅行解禁が待ち遠しいレポ-トになりました!

プロフィール

大登貴子(著者)
1970年北海道生まれ。サッポロビールに入社後、広報業務に従事。2012年、ビール文化を更に発展、普及させることを目的として「日本ビール文化研究会」を立ち上げる。現在、同会・理事事務局長。活動は、日本ビール検定(愛称:びあけん)主催、出版、セミナー開催など。びあけんは、本年で第10回となり、過去27,000名以上がチャレンジしている。本年よりコンピューターテストシステム導入により全国約280会場に拡大し、2021年6月1日~6月14日の期間内で選択して受検が可能に。公式HPにて申し込み受付中。


びあけん公式HP