横溝正史原作の探偵金田一耕助が活躍する推理小説シリーズは、その作品の多くが映画やテレビドラマになりました。特に1976年に角川春樹事務所制作・東宝配給の「犬神家の一族」は、低迷していた日本映画界の中で異色の作品であり、湖面から突き出る足のシーンやマスク姿の登場人物など、ショッキングな映像も話題になり大ヒットしました。

主演の金田一耕助には若き日の石坂浩二さんが抜擢され、三国連太郎さん、小沢栄太郎さん、大滝秀治さん、加藤武さん、高峰三枝子さん、草笛光子さん、あおい輝彦さん、島田陽子さん、坂口良子さんなど、豪華なキャストも話題となりました。監督は「ビルマの竪琴」や「東京オリンピック」「細雪」などの名作を世に送り出した市川崑さんで、2作目以降の制作は配給元だった東宝が担当し、市川さん、石坂さん、加藤武さんの組み合わせで、「悪魔の手毬唄」「獄門島」「女王蜂」「病院坂の首縊りの家」が制作されます。また、市川監督は2006年に石坂さん、加藤さん、大滝秀治さんなど旧作の出演者がそのまま同じ配役で登場するリメイク版も制作して注目されました。1976年版はブルーレイとDVD、2006年版はDVDが発売されています。  
物語の舞台である信州（長野県）那須市は架空の街ですが、撮影は2016年NHK大河ドラマ「真田丸」でお馴染みの上田市をはじめとして、佐久市、大町市、安曇野市などで行われました。宣伝によく使われた湖面から突き出る足のシーンは、大町市の仁科三湖の一つである青木湖で撮影されており、ボートのシーンなどには木崎湖も使われています。もちろん、これらの湖の周辺には、あの壮大な犬神御殿はありませんが、信州の山々に囲まれた素晴らしい風景は今でもかわりません。下の写真は現在の青木湖ですが、右側の湖畔には犬神家の一族の邸宅である犬神御殿が建っていたことになっています。    
 
では、仁科三湖はどこにあるのでしょうか？長野県の北部にある大町市の北側に広がる後立山連峰の麓には、長野県松本市から新潟県糸魚川市を結ぶJR大糸線が湖の近くを走っており、仁科三湖はその線路沿いに縦に並んでいます。すぐ上には白馬村、右は長野市があり、長野県の中でも屈指の透明度を誇る青木湖の透き通るような湖面と後立山連峰の織りなす風景は神秘的です。避暑地としてはとても良い場所ですし、冬はとても寒い代わりに凍った湖面にテントを立てて穴を開けてワカサギを釣りを楽しむことができます。釣ったばかりのワカサギをその場で天婦羅にしたり醤油焼きにして食べるという他ではなかなか体験できない味覚を堪能することができます。

次回は「犬神御殿の場所を探る」として、実際に仁科三湖周辺を回りながら犬神御殿の場所や犬神一族の足跡を辿りたいと思います。
   

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