前回は、真田一族が登場するNHKの大河ドラマについて紹介しましたが、今回は、NHKのドラマの中でも特に真田家と縁が深い2016年の大河ドラマ「真田丸」、1985年のNHK新大型時代劇「真田太平記」、そして1980年に放送された「風神の門」の3作品に登場する真田家の血筋に連なる武将についてまとめたいと思います。
ただし、「真田丸」についてはスタートしたばかりで原作となる小説が存在しないので番組開始時点での情報しかわかっておりません。また、「風神の門」は、ドラマの舞台が関ヶ原の合戦後であり、主人公は真田一族ではなく真田十勇士の霧隠才蔵であるため、他の2作品に比べると真田一族の登場はほとんどありません。なお、それぞれの家族、血縁関係の薄い家臣、忍者といった武将ではない登場人物は別の機会で改めて紹介します。
【真田一族の主な武将】
◯真田幸隆
信繁(幸村)の祖父つまり信繁の父昌幸の父である。武田信玄に仕えて真田家の礎を築いた武田二十四将の1人。3作品ともすでに死去しているため物語には登場していないが、真田家にとっては重要な人物であるので覚えておく必要がある。大河ドラマでは、「武田信玄」で橋爪功 さん、「風林火山」では佐々木蔵之介さんが演じている。なお、「真田丸」に信繁の祖母として登場しているとり(後の恭雲院/草笛光子)が幸隆の妻である。
◯真田昌幸
信繁の父で祖父幸隆の三男。武田二十四将の長兄信綱、次兄昌輝が長篠の戦いで戦死したこともあり、幸隆の後を継いで真田家の当主となる。上田城の攻防では徳川の大軍を2度に渡って退けた知将で、信濃の小国である真田家存続のために織田家、徳川家、上杉家、北条家、豊臣家の間を奔走した。
・「風神の門」=宮口精二
・「真田太平記」=丹波哲郎
・「真田丸」=草刈正雄
◯真田信幸
信繁の兄で父昌幸の長男。徳川家康の養女(徳川四天王の本多忠勝の娘)小松姫を娶り沼田城主となる。目立たない存在だが深謀遠慮の人で、苦労の末に真田家を徳川家の下で存続させることに成功し、90歳過ぎまで藩主をつとめる。どのドラマの中でも控え目な存在だが、実際には信繁に劣らない武功も立てており、真田家の名に恥じない武将である。ちなみに「真田太平記」の主人公は、信繁ではなく信幸である。
・「真田太平記」=渡瀬恒彦
・「真田丸」=大泉洋
◯真田信繁(幸村)
昌幸の次男で「真田丸」の主人公。大坂夏の陣、冬の陣において、豊臣方最強の武将として天下に名を知らしめた。
・「風神の門」=竹脇無我
・「真田太平記」=草刈正雄
・「真田丸」=堺雅人
以上の4名は何が何でも押さえておかなくてはならない人物です。その他の一族としては活躍の場面は少なく「真田丸」での扱いもどうなるかわかりませんが、信繁と信幸の息子がおそらく後半に登場するはずです。また、「真田丸」では、これまでほとんど出てこなかった幸隆の四男信尹も登場します。
◯真田信尹
信繁の叔父で祖父幸隆の四男、父昌幸の弟、信幸とは別に旗本として徳川家に仕える。
・「真田丸」=栗原英雄
◯真田信吉
信繁の甥で兄信幸の長男。大坂の陣に弟信政と出兵しているが敗走してしまう。支藩扱いの沼田城主となるが正式に家督を継ぐことなく40代で死去している。
・「真田太平記」=早瀬亮
◯真田信政
信繁の甥で兄信幸の次男。大坂の陣で出兵。兄信吉の早世によって家督を継ぐが2年後に死去。これによって信幸は再び藩政の場に復帰しなくてはならなくなる。
・「真田太平記」=森岡進
◯真田幸昌(大助)
信繁の長男。大坂城落城の際に豊臣秀吉の嫡男秀頼の切腹に殉じたとされている。
・「真田太平記」=片岡孝太郎
◯樋口角兵衛
信繁の従弟で父昌幸の妻の妹久野と樋口下総守の子として登場する「真田太平記」の架空の人物。そのため「真田太平記」では重要な存在だったが「真田丸」には登場しないはずである。ちなみに角兵衛役だった榎木孝明さんが、「真田丸」では武田家の一門衆でありながら主君武田勝頼を裏切る穴山梅雪役を演じている。
・「真田太平記」=榎木孝明
◯矢沢頼綱
信繁の大叔父で祖父幸隆の弟つまり父昌幸の叔父。信幸同様に目立ちにくい存在だが、真田家の親戚筋にあたる矢沢家の人々なくして真田家の存続はありえない。頼綱は常に影から真田家を支え、岩櫃城代、沼田城代などをつとめている。昌幸が自由に活躍できたのは頼綱の存在があってからこそである。
・「真田太平記」=加藤嘉
・「真田丸」=綾田俊樹
◯矢沢頼康(頼幸)
信繁の従叔父で矢沢頼綱の子。父とともに真田家を支えた真田家の重臣。「真田丸」の第1回の冒頭で信繁が織田軍の偵察に出かけた際に付き添っていたのがこの頼康。父と同様に岩櫃城代、沼田城代などをつとめ、信幸の下では松代藩家老となる。
・「真田太平記」=大谷友右衛門
・「真田丸」=迫田孝也
◯高梨内記
信繁の義父。おそらく「真田丸」ではじめてクローズアップされる真田家の家臣。長澤まさみさんが演じる信繁の妻きりの父という設定になっている。
・「真田丸」=中原丈雄
「真田丸」では、「新撰組!」(2004年)、「篤姫」(2008年)に続く3本目の大河ドラマの出演となった堺雅人さんが主人公の真田信繁(幸村)役に抜擢されています。「新撰組!」の山南敬助役では個性派俳優の印象が強かったのですが、「篤姫」では暗愚と聡明という両方の顔を持つ徳川家定を見事に演じきり、その演技力には驚かされました。
信繁の父である真田昌幸役の草刈正雄さんも大河ドラマの出演が多く、「風と雲と虹と」(1976年)、「花の乱」(1994年)、「毛利元就」(1997年)、「義経」 (2005年)、「篤姫」(2008年)、「江~姫たちの戦国~」(2011年)そして今年の「真田丸」と7本目の出演になります。さすがに「風と雲と虹と」は50代以上の方でないと覚えていないかもしれませんが、「篤姫」や「江~姫たちの戦国~」は皆さんの記憶に新しいところでしょう。
実は、草刈さんは「真田太平記」において幸村(信繁)役を30年前に演じていました。同ドラマでは、昌幸を丹波哲郎さん、兄の信幸を渡瀬恒彦さん、甥の樋口角兵衛を榎木孝明さんがつとめ、他にも夏八木勲さん、遥くららさん、木之元亮さん、中村梅之助さん、加藤武さん、長門裕之さん、竜雷太さん、佐藤慶さん、竹下景子さん、紺野美沙子さん、岡田由紀子さん、堀江しのぶさんなど、大河ドラマの枠ではありませんが、「真田丸」に劣らない豪華キャストでした。特に丹波哲郎さんの昌幸は秀逸で、1998年にテレビ東京で放送した「家康が最も恐れた男 真田幸村」でも昌幸役をつとめています。丹羽さんと昌幸は相性がよく、これ以上の適役はないと断言してもいい素晴らしい演技でした。
「真田丸」では、「真田太平記」で共演した丹波さんの演技を間近で見ていた草刈さんがこの役に挑むというワクワクするキャスティングになっています。あれだけの演技を見せつけられた草刈さんは相当なプレッシャーを感じていると思いますが、第1回と第2回の放送では独自の昌幸役を完璧に作り上げており、名脇役が多い中で一番カッコイイ存在でした。信繁が一人前の武将に成長するまでは昌幸が実質的な主役なので前半の展開がとても楽しみです。
次回は、真田一族にとって主家であり、「真田丸」という小舟が戦国という大海原に漕ぎ出さなくてはならないきっかけとなった武田一族について紹介します。
【真田丸日記】
第2回「決断」の放送が終了しました。武田信玄の後を継いだ勝頼(平岳大)が、穴山梅雪(榎木孝明)や小山田信茂(温水洋一)の裏切りに会い、武田家はついに天目山(山梨県甲州市)で滅亡しました。新府城(山梨県韮崎市)から抜け出た信繁(堺雅人)たちは野党から辛うじて逃れ、昌幸(草刈正雄)の助けもあってなんとか岩櫃城(群馬県吾妻郡東吾妻町)に辿り着くことができました。しかし、勝頼を岩櫃城へ迎えることができなかったばかりか、主家そのものを失った真田家は、織田、徳川、上杉、北条、といった強国と直接相対することになってしまいますが、逆に戦国時代きっての知将・謀将と呼ばれるた昌幸の活躍がここから始まります。
武田勝頼は、真田昌幸の岩櫃城ではなく小山田信茂の岩殿城に向けて新府城を出ることになりますが、信茂の裏切りによって天目山に追い詰められ自害してしまいます。
<新府城跡へのアクセス>住所:山梨県韮崎市中田町。アクセス:JR東日本中央本線新府駅から徒歩約20分、参考情報:公益社団法人やまなし観光推進機構
<岩殿城跡へのアクセス>住所:山梨県大月市賑岡町強瀬字西山53。アクセス:JR東日本中央本線大月駅より登り口まで徒歩約15分、城跡までさらに約20~25分。参考情報:大月市観光協会
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