貧困なき世界
東洋経済新報社
市場原理主義を振りかざすだけでは貧困はなくならない。限られた資源と政府しかない国がどうやって貧困を削減するのかを解き明かす
開発経済学はこの半世紀以上、政府主導から自由市場重視まで、両極端の政策を実験のように試行してきた。たとえば、1980~90年代はワシントン・コンセンサスといわれるビッグバン・アプローチが支配的な考え方で、市場の歪みを一気にすべてなくすことが市場経済化の成功のもとだと考えられてきた。だがこの先進国がつくった開発理論に沿って改革を推し進めた国は、みな、失われた20年を経験している。
対照的に、主流派経済学の市場メカニズムの原理をまったく無視した、当時、一番悪いやり方だと見られていた、いわゆる「漸進的アプローチ」を実践した国は、みな成功を収めている。
本書は、この、順調な高度成長を達成してきた東アジアの国々の経済発展の歴史からみて、一見中庸あるいは中道派にみえる後者のアプローチをとることが、実際の処方箋として非常に有効であることを現実の成果によって検証し、推奨する。
開発経済学に、「成功させるヒミツの魔法」があるわけではない。先進国の作った理論を鵜呑みにせず、そして先輩途上国のたどった軌跡をそのままたどることでもなく、自分の国の資源制約に適した政策を立て、地道に遂行することしか、発展への道はない。本書は、中国の発展のプロセスを克明に記し、各国ごとの特性にあわせた開発戦略のロードマップを描くことで、自国の発展のために日々頭を悩ませている途上国エコノミストにとって本当に役に立つ開発モデルの枠組みを提供する。
発売日:2016-10-14
目次
訳者はしがき
ペーパーバック版へのはしがき
プロローグ
第1章 新たな難題と新たな解決策
第2章 ナラティブの戦いとパラダイムの変化
第3章 経済開発――失敗から学ぶこと
第4章 追上げ国の成功から得られる教訓
第5章 経済発展再考のための枠組み――新構造主義経済学
第6章 新構造主義経済学では何が違うのか
第7章 新構造主義経済学の実践――二つの工程と六つの手順
第8章 移行経済の特性と経路
第9章 より高い発展段階における構造変化の促進
第10章 経済発展の処方箋
用語集
訳者あとがき
参考文献
人名索引
事項索引
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