2017.08.23
LCCから「サービス」の在り方を考える
従来の航空業界のサービスの考え方を覆し、新たなビジネスモデルを確率したLCC(ローコストキャリア)。様々な業界で「サービス」の在り方が見直されつつある今、改めてLCCをクローズアップする。
2017.08.23
従来の航空業界のサービスの考え方を覆し、新たなビジネスモデルを確率したLCC(ローコストキャリア)。様々な業界で「サービス」の在り方が見直されつつある今、改めてLCCをクローズアップする。
LCC(ローコストキャリア)という言葉を誰が発明したのか、いろいろ調べてみたがよくわからなかった。少なくとも、LCCと呼ばれる航空会社が自ら「私たちはLCC」とは名乗り始めたのではなく、マスコミによる命名のようだ。
LCC、格安航空会社と言われると、「座席は狭い。機内サービスはなし。安全性も心配」と思いがちだが、座席の広さや機内サービスについては、LCCを含めた航空会社によってさまざま。安全性も航空会社次第であって、「LCCだから安全性が低い」ということはない(安全性については、格付けランキングがインターネットでいくらでも見つかる)。
従来の航空会社は、FSC(フルサービスキャリア)あるいはレガシーキャリアと呼ばれるが、いちばんの違いはビジネスモデルだ。FSCは、本拠地である空港から、国際線、国内線のネットワークを築き、乗客が自社便でどこへでも行けるようにする。一方で、LCCは2地点間の往復便を基本にし、到着地での清掃、点検時間を圧縮し、往復回数を増やす。これで、コストを下げるとともに、乗客の利便性を上げている。
もうひとつの違いが、サービスに対する考え方だ。FSCは、確立した総合サービスを乗客に提供する。LCCは、乗客が必要とするサービスのみ提供する。例えば、FSCは国際線であれば、それが短時間のフライトであっても必ず機内食を提供するが、LCCは事前に予約をした乗客のみに有料で提供する。
昔は、誰にとっても「快適な空の旅」の内容がほぼ同じものであったので、FSCは全員に一律のサービスを提供していた。しかし、今では「なにを快適だと思うか」は、人によって、旅の目的によって違ってきている。2時間のフライトで機内食は不要だと考える人もいれば、液晶モニターによる映画上映は、自分のiPadで見るからいいという人もたくさんいるだろう。LCCは、サービスをフルカスタマイズできる選択肢を持たせ、それに見合ったコストを支払っていただくという考え方なのだ。
LCCの中には、機内で空港から市内までのリムジンチケットを販売したり、到着地で使えるモバイルルーターがレンタルできるなどのツボを押さえたサービスを提供しているところも増えてきている。LCCは「安い飛行機」ではない。「便利な飛行機」なのだ。その意味で、LCCや格安という言葉は本質を外している。FCC(フェアコストキャリアまたはフルカスタマイズキャリア)と呼ぶべきではないかと思う。
平凡社新書『激安エアラインの時代 なぜ安いのか、本当に安全なのか』
杉浦一機 著/平凡社 刊
出版年月 2012年3月
激安航空会社の安さの秘密や安全性、メリット・デメリット等について解説。航空自由化の流れや未来予測などが鳥瞰されており、2012年当時LCCがどのような背景の中登場したのかがよくわかる。
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