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ちょっと週刊「猫街乗物放浪記」

瀬戸内海・本島の重要伝統的建造物群と、 児島の突如現れた鉄道廃線架線柱に吃驚する

面白い乗物は鉄道だけに限らない。バス、フェリーなども趣が深く、その交通機関ならではの旅ができる。この連載では廃線、廃駅、廃墟、廃城も含みながら、交通機関を使った得体が知れない放浪旅の記録を紹介してみよう。

「サンライズ瀬戸」を降りて始まる離島気まま旅。

関東地方に住む私は、中国・四国にゆくには、できる限り寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」を使うことにしている。週末金曜日は混んでいるが、1ヶ月前には1枚だけ切符がとれることもままあり、2週間前やキャンセル料が高くなる2日前には、ぽっかり席が空いていたりする。もっとも酒に酔ったついでで1ヶ月前に買った切符を財布にいれたまま、出発日を忘れていたということもままあり、そういうときは悔悟の海に身を投げたくなるのである。

「サンライズ瀬戸・出雲」の両方とも車窓のみどころは多いが、四国行きの「サンライズ瀬戸」では、瀬戸大橋を走りながらみる朝日を浴びた島々の光景だろう。私は進行方向左側に見える、円錐形の大槌島・小槌島(おおづちじま・こづちじま)を見るごとに、四国に戻ってきた気になるし、進行方向右側に見える、本島、広島などを見るたびに、これからどこの島に行こうかと、放浪の魂が朝からうずいてくるのである。

おそらく、鉄道が好きな人ならば、きっと船も好きになるだろう、と勝手にこの頃思っている。特にフェリーは甲板に出て、風を感じて旅することができる。時にはしぶきを浴びながらではあるが、それもまた一興。また、乗ったら次の港まで降りられないのがいい。制限のあるのもまた旅の楽しみだからだ。ただし、帰りの便の時刻に注意しないと、行ったはいいもののその日のうちに戻れない航路も多い。

瀬戸大橋ができ、また一時期の油代の下落で多くの航路が廃止されたが、香川県にはまだ航路が残っている港もある。女子が好きな直島、女木島、男島や小豆島行きは高松港から、さまざまな日本映画の舞台になった高見島には多度津港から、スクリューのような形をした島、粟島には詫間駅からバスにのって須田港から行くなど、出発する港がさまざまなのが、不便ではあるものの旅の楽しみである。
さて、今日は今まで降りたことのない丸亀駅に下りて、近くの丸亀港から本島か広島に行こうと思う。そこで坂出駅で「サンライズ瀬戸」を下車し、普通列車で丸亀駅にいく。
 

瀬戸内海に浮かぶ丸亀市本島で瀬戸大橋を走る列車を眺める。

気まま船旅だが、ぼんやりしているとタイミングを逸して、船の出港時間まで待つことが多い。今回はせっかくだからと丸亀城を見学し、お昼前のフェリーを探す。出港時間を見て、本島にいくことに決めた。
 

丸亀といったら、丸亀城でしょう

 

丸亀の商店街。四国といえば、宮脇書店さんですね。

 
本島は、塩飽水軍の本拠地があったところだ。今は、香川県丸亀市の島で、面積6.7km²、周囲16kmあまり、江戸時代からの伝統的な民家や塩飽勤番所が残ることで有名である。
 

丸亀港からフェリー(本島汽船「ほんじま丸」398トン)に乗る。この船は広島県尾道市鞆の本瓦造船が建造。乗り口は車と一緒。人は船内の階段から客室に上がる

  丸亀港から「ほんじま丸」というフェリーに乗り、約35分で本島港に到着した。レンタサイクルで電動自転車を借り、島の1周を試みる。瀬戸内海の島は意外に起伏が多いため、電動自転車ではないと、ロートルには辛いのである。本島港から少し走ると、瀬戸大橋が目の前に見える海岸に着く。海岸でぼんやりと休んでいると、シューと鈍い音が聞こえる。橋を渡る列車の音だ。周りに音を防ぐものがほとんど何もないため、ここまで離れていても聞こえるのだ。
 

さあ下船だ。どんな島なのか心が躍る。

 

シャーという音で瀬戸大橋を列車が走っているのに気がつく。

   

瀬戸内海の島にある重要伝統的建造物群保存地区のひとつ「笠島」

本島の「笠島」地区は、重要伝統的建造物群保存地区に指定され、かつて廻船問屋や豪商、町人が暮らしていた江戸時代の建造物と入り組んだ路地が、今もなお残っている。瀬戸内海の島というと交通が不便だと思うかもしれないが、昔は航路こそが交通の要であり、様々な港に物資が運ばれにぎわい、豪商もいたわけなのである。
瀬戸内海の重要伝統的建造物群保存地区として、呉市大崎下島の御手洗があるが、御手洗が海に面してひろく開かれているのに対し、ここ笠島はもともと塩飽水軍の集落だったこともあって、細かい路地が残り、抜け道のように島の反対側に抜けるような道もあって、攻めるのが難しい手堅い集落のような印象をうけた。たしかに近くには、山城もあり、幾重にも歴史が重なっているところのようである。
 

重要伝統的建造物群保存地区「笠島」地区

   

児島に残る旧下津井電鉄線の架線柱に驚いた

本島からの帰りは、四国に戻るのではなく岡山県の児島に抜けよう。高速船で瀬戸大橋の下を抜けていく。瀬戸大橋という巨大建造物を堪能するには、この航路は迫力満点である。船を下りた児島港から児島駅はすぐである。駅から電車に乗るのも退屈なので、付近を散策することにする。とりあえず港と反対方向に行ってみようかと、歩き始める。道を曲がり、適当なところをまた曲がる。
 

児島に向け高速船(六口丸海運「ムクジマルホープ」19トン)に乗る

  と、右手の方に古ぼけた架線柱があるではないか。実はこれ、1991年1月1日に廃止(運行廃止は前日)された下津井電鉄の廃線跡で、現在では「風の道」と云う遊歩道である。架線柱が残るのは風情がある。しばらく遊歩道をあるいて行き、児島駅からバスで倉敷に向かうのであった。  

児島に残る、旧下津井電鉄の架線柱。

 

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そのほかのおススメ本

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歴史と文化の町並み事典 重要伝統的建造物群保存地区全109
文化庁 編/中央公論美術出版 刊

重要伝統的建造物群保存地区について知りたい人におすすめの1冊。日本全国の伝統的建造物が集まっている地区について知ることができる。この本を見て旅行計画を立ててみるのもよいかも。
価格:3,780円(税込)

 

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中公新書『廃線紀行―もうひとつの鉄道旅』
梯久美子 著/中央公論新社

気軽に読める廃線紀行。廃線マニア的ではない、気軽に読める文章がおすすめ。下津井電鉄線についても記述あり。元々は新聞連載をまとめたもの。
価格:1,080円(税込)

 

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著者プロフィール

上杉さくら(ライター)
某出版社の元編集&ライター。最近の関心テーマは、クラシックカメラ、交通以外に、離島、山城、グルメ、歴史、新聞学など。コレクションとして戦前の日本・極東の彩色絵葉書・写真など。

コラム連載『ちょっとシュールに「猫街鉄道放浪記」』(2008年1月~2012年3月/マイナビニュース)
『PENTAX Q7撮り方ハンディブック』(共著・2014年6月/マイナビ出版)『Nikon D5500 & D5300ハンディブック』(共著・2015年12月/マイナビ出版)ほか。