2013.09.12
8月27日に打ち上げが中止されたイプシロンロケット試験機の再打ち上げ日が9月14日13時45分になることが発表されました。9月8日には打ち上げ直前までの再リハーサルが終了し、後は本番を待つのみとなっています。日本中の大きな期待がかかっているだけに、次回は打ち上げまで至ることを祈っております。
今回、多くのメディアが「打ち上げ失敗」という表現を使っていましたが、イプシロンロケットが爆発したわけでも墜落したわけでもありません。打ち上げを楽しみにしていた方達にはとても残念なことだったと思いますが、自動カウントシーケンス中の姿勢異常検知による自動停止しであり、あくまでも試験という枠組みの中で考えると中止という過程に至っただけのことです。
JAXAによれば「地上装置による監視が、搭載計算機の姿勢計算開始より約0.07秒早かったため、地上装置が姿勢異常と判定し、自動停止した」ことが原因であり、「異常データが示された場合に即座に自動停止がかけられるように監視時間を厳しく設定していたことに加え、搭載計算機と地上装置の時間のずれに配慮できていなかったことが原因」だとしています。確かに問題はまだ残っていたということですが、手軽で低コストのロケット打ち上げを目指してパソコン2台で制御するという画期的な新システムが開発され、それがきちんと異常を検知して自動停止させたことは、このプロジェクト全体から考えると、ある意味成功だったのではないでしょうか。
また、どうしても打ち上げという事象だけがクローズアップされがちですが、試験機とはいえ惑星分光観測衛星(SPRINT-A)を人工衛星軌道に載せる任務が課せられています。こちらの話題はたまにしか取り上げられませんが、人工衛星軌道から金星、火星、木星などを遠隔観測することができる宇宙望遠鏡で、世界初の惑星観測用宇宙望遠鏡となります。
少々難しい話になりますが、「太陽風に影響を及ぼされる惑星の大気とプラズマの分布を極端紫外線で観測する」というもので、極端紫外線は待機に吸収されてしまうため、宇宙空間からこの観測を行うのは世界で初めてだということです。この観測によって、惑星の磁気圏と大気について調べることが可能で、今後の惑星研究において大きな役割を果たします。単にロケットが上がった上がらないということではなく、その目的も知った上で14日の打ち上げを見ていただければ、これまでと違った視点で応援していただけるのではと思います。
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著者プロフィール
- マイナビ出版 天体観測&撮影編集部(出版社)
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