「自戦記」と「観戦記」どちらを選ぶべき? 新刊案内『大局観が劇的に良くなる! 囲碁・上達のための棋譜並べ』
2020.06.17
新刊『大局観が劇的に良くなる! 囲碁・上達のための棋譜並べ』の内容紹介と「自戦解説」の良い点を紹介しています。
2020.06.17
新刊『大局観が劇的に良くなる! 囲碁・上達のための棋譜並べ』の内容紹介と「自戦解説」の良い点を紹介しています。
1、対局中の思考や心情、相手との駆け引きを臨場感を持って知ることができる
当人から聞くので、これは当然ですね。
人間的な感情が出ている記述は、読んでいて楽しいです。
もちろんそれだけではなく、例えば「形勢が悪いと思っていたからこう打った」「ただの時間つなぎのつもりだった」など、手の裏側を知ることができるのも自戦解説ならではです。
2、囲碁観を知ることができる
ここが私のイチオシです。こんな例があります。
新刊より
寺山怜六段 「厚みを貯金と考える」
実戦は白1と▲2子を取り切りましたが、寺山先生はこの手を反省しました。
右上は黒a~cの手段も残っており、見た目ほど大きくなかったのです。
白1のの打ち込みから捨て石を使い、白9まで全局的な厚みで勝負するべきだったとの感想です。
書籍内では、このような独特な表現で反省しています。
反省すべき点があるとすれば、白1のサガリでしょうか。厚みを地に転換させるタイミングは難しいものなのですが、もう少し我慢して厚みを「貯金」しておけばよかったなあ、と思っています。
厚みを「貯金」と捉えているのですね!
他の碁では、「貯金」を上手く使っていき、見事に勝利した場面の解説もあります。
「厚み」は曖昧な部分もたくさんあるので、理解が難しいテーマです。
それを「貯金を貯めたり、使ったり」という表現の解説は秀逸で必見です!
もう一例。
2018年8月発売『並べるだけで強くなる! 囲碁・プロが選んだ名局選』より
王メイエン九段 「コートの真ん中に戻る」
この局面で黒1と打ちました。
メイエン先生はこの手をこう解説しています。
黒1は、コートの真ん中に戻って相手のボールを待っている、という手。AとBを続けて打てるのであれば、真ん中に戻る必要はないですが。
この「コートの真ん中に戻る」というのが、私が碁を打つときの基本であり総論です。
かなり独特な囲碁観を持っておられることがわかります。
この黒1を打てる人は、メイエン先生以外にもいるかもしれませんが、同じ思考のプロセスを辿る人はいないでしょう。
このような、唯一無二の考え方が語られるのも、自戦記の大きな魅力です。
3、遠慮が入らない解説=わかりやすい!
以下は観戦記で棋譜並べをしていた時の私の2大失敗です。
観戦記では、「悪い手の指摘がしにくい」という弱点があると思っています。
棋士の先生方同士のリスペクト、または囲碁自体にリスペクトを持っておられる先生が多く、どうしても悪手の指摘がしにくいのではと推測しています。(その反面、お手本となるような手はわかりやすく解説されています!)
ただやっぱり「良い手は良い手、悪い手は悪い手」といったはっきりとした解説が欲しいのが本音です。
囲碁は、ただでさえ形勢判断が難しいゲームなので、表現が曖昧だと混乱をしてしまう方も多いのではないでしょうか。(私がその沼に嵌った一人なので...)
呉清源先生や秀行先生、そして治勲先生のバサッといく解説が人気なのは、そこが大きいのかなと思います。
その点、自戦記は自分に対してなので遠慮は入りません!
ズバズバっと爽快な解説が続いて、わかりやすいです。
相手の手に対しても、心なしか自分への解説につられて、はっきりとした解説になる傾向があるように思います。
新刊より
上野先生の解説です。(黒番)
▲の一団は、働きに乏しい形です。今見ると「けっこう白が良い」と判断しますが、当時は今よりずっとポジティブだったんでしょう。そこまで黒が良くないとは思っていませんでした。(中略)
さてここがこの碁のポイントです。黒を持ちたい人はいないと思いますが、まだまだ勝機はあります。
過去の心情も交えつつ、明快でわかりやすいです!
「今はそんなに黒が悪いのか。ここから挽回する場面なのね!」と、こんなに現状がわかりやすい解説に出会ったのは初めてかもしれません(笑)
確かに、これを自分以外の碁の解説で言えというのは、あまりにも無茶ぶりでしょう。
自戦記ならではだと思います。
4、取材がより面白い
完全に伝わらない部分ですが(笑)
取材途中で記憶がよみがえるのか、急に反省をされたり、明らかに序盤と勝負所の解説ではテンションが違っていたり...。
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