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一度は食べたものだからこそ安心して作中に出せる!|Fan文庫著者インタビュー第1回 溝口智子先生

ファン文庫から『万国菓子舗 お気に召すまま』の著者・溝口智子先生のインタビューをお届けいたします。

第1回「お仕事小説コン」のグランプリを受賞した『万国菓子舗 お気に召すまま』の人気シリーズ第8作目を4月17日に発売。

お菓子を通して描かれる、キャラクターそれぞれの人生。ひとつひとつの作品が心に沁みわたる温かい物語です。8巻は「自分らしく生きること」をテーマに描かれています。

 

 

プロフィール

溝口智子(みぞくち・さとこ)

福岡育ち、福岡在住。好きな博多弁は「なんばしようと?」。お酒と食べることがなによりも好き。2015年、小説投稿サイト「小説家になろう」で開催した『第1回お仕事小説コン』にて本作がグランプリを受賞し、2016年3月にデビュー。『万国菓子舗 お気に召すまま ~お菓子、なんでも承ります~』が大好評を博してシリーズ化。本作で8作目。

 


あらすじ

注文されたお菓子はなんでも作る博多の〝和洋"菓子店「お気に召すまま」はサボり癖のある店主・荘介とアルバイト・久美のコンビで今日もほっこり営業中。
秋も深まったある日、久美はお使いの帰り道で具合の悪そうな男性を見かけ、声をかけた。
その男性は昼も夜も働きづめで家に帰る時間もないらしく、心配な久美はお店で休んでいくように提案をする。
美味しいお菓子を食べて少しでも元気になってほしい久美は、男性に好きなお菓子をたずねるが……?

 

 

――『万国菓子舗 お気に召すまま ~お菓子、なんでも承ります~』でデビューとのことで『第1回お仕事小説コン』に応募したきっかけはなんですか?

溝口さん:もともと自分の好きなテーマで小説を書くと、暗くて重くて、読んでくれる方の気分も沈ませるようなものばかりになっていました。読んでくれる方に「楽しい!」という思いを届けることが自分にもできるだろうかと思っていた頃に『お仕事小説コン』の募集があったんです。
その募集要項を見て初めて「お仕事小説」というものがひとつのジャンルとして定着しているのだと知りました。
「お仕事小説」というくくりで、私ならどんな物語が書けるかやってみようと思ったのがきっかけです。
また、どんなお仕事なら書けるのかと考えて、食べ物を扱うお店ならいくらでも書ける!と自信を持てたことも、コンテストに挑戦する後押しになりました。

 

――主人公や登場人物たちにモデルはいるんでしょうか? 

溝口さん:主人公にはモデルはいないのですが、『お気に召すまま』で働いている斉藤久美にはいます。
地元・福岡で、ラジオパーソナリティなどで活躍されている女性です。
明るくて、前向きで、涙もろくて、少しおっちょこちょいというキャラの持ち主なんです。この人には幸せになってほしいなという気持ちにさせられる雰囲気があり、きっと、物語を読んでくれた方にも好きになってもらえると思いました。
ゲストキャラにも何人かモデルがいます。今までの人生の中で出会えた方々に感謝しつつ、いろいろな困難を背負ってもらっています。

 

――今までたくさんのお菓子がでてきましたが、溝口さんが好きなお菓子や1番心に残っているお菓子はありますか?

溝口さん:1作目の最終話に登場するオリジナル菓子「アムリタ」には思い入れがあります。
主人公がどんなお菓子を作れたら心穏やかに前向きになれるだろうと、考えて考えて考え抜いて、自分が最高に美味しいと思えるものを書きました。
また、好きなお菓子というと、こぶたプリンです。なんの変哲もないプリンが無性に食べたくなる時があるんです。硬すぎず、柔らかすぎず、甘すぎない、優しい味のプリンを想像して書いています。

 

――荘介がお菓子を作るシーンはいつも丁寧に描かれていますが、溝口さん自身もよくお菓子を作ったりするんですか? 

溝口さん:お菓子作りは、取材と称してやっています。作中に出すものは食べたことがあるものを基本にしているので、近所で取り扱いのないお菓子は自作します。
8巻だと、インドネシアのお菓子・ピサンゴレンや、味が変わるマカロンなどは作りました。家族にも味見してもらいますが、今まで作ったものは、おおむね好評だったので、安心してお話の中に出しています。

――溝口さん自身が作ったり食べたものだから、どのお菓子もおいしそうなんですね! 

 

――7月に和刺繍を題材とした作品を刊行予定ですが、どういったお話なんでしょうか?

溝口さん:日本刺繍の工房をかまえる若い女性刺繍士の話です。
主人公は、人とは違う能力をもっていて、悩みつづけてきました。その悩みとどう折り合いをつけ、乗りこえるのか。女性として大人として、どう生きていくのか考えながら、成長していく物語です。
若い方には親近感を持ってもらえて、大人の方には甘酸っぱい記憶を思い出すことができるお話になるよう、書いています。読んでくださる方の気持ちを少しでも軽くできればと思っています。

 

「万国菓子舗」シリーズ同様にお仕事をテーマにした小説ですが、主人公は不思議な能力をもっているというファンタジー要素のあるお話なんですね。一足先に作品を読ませていただきましたが、特別な力と向き合う主人公の姿勢は心から応援したくなりました。
カバーイラストは、躍動感あふれるイラストを描かれる海島千本さんが担当されるということで、お話とともに楽しみです。

 

『万国菓子舗 お気に召すまま』シリーズにあわせて、7月20日ごろ発売予定の『五百津刺繍工房の日常』もよろしくお願いいたします!