採用のペルソナに適した「認知」と「集客」 事例詳細|つなweB

分母ではなく、分子を増やす集客を!

「認知」フェーズで、候補者にリーチができ、自社のことを知ってもらえたら、次は「集客」フェーズです。採用に苦戦している場合、集客=“とりあえず”大手のナビ媒体、となっていませんか? ナビ媒体は、数ある集客手法の中の一つ。ペルソナにマッチした集客手法が何かを考えて使っているでしょうか?

大手のナビ媒体は、知名度があることから登録人数が多く、母集団形成ができると考えられますが、大事なのはペルソナにマッチした候補者の数です。1,000人のエントリーがあっても、ペルソナにマッチした候補者が0人だと意味はなく、5人しかエントリーがなくても、全員がペルソナにマッチするなら、そちらのほうが良いということです。

要は、分母よりも割合が大事であり、それが最大となるように、ペルソナにマッチした候補者を集客できる手法を探しましょう。ペルソナの職種がエンジニアなら、エンジニアに特化したナビ媒体や、エンジニアがよく閲覧するメディアへの広告、自社プロダクトの技術に関するセミナーのほうが、大手のナビ媒体よりも効率的になる可能性があります。

“集客=母集団形成”という従来の概念をいったん取り払ってみましょう。

 

採用サイトはトリガー(きっかけ)として活用する

では、マイナビやリクナビに代表される大手のナビ媒体は、どのような使い方が適しているでしょうか。

テレビCMをはじめ、マス広告を積極的に行っているため、知名度が高く、登録人数が多い特徴があります。そのため、割合は重視しつつも、やはり母集団形成をして徐々に絞り込みたい場合や、ペルソナの条件が比較的ゆるやかな場合はいいのではないでしょうか。

ナビ媒体にも多くの種類があり、業種や職種を限定したもの、一定以上の役職や条件に限定したものもあります。掲載内容もさまざまで、具体的な業務内容や入社条件を記載するものもあれば、ビジョンに重きを置いたものもあります。ナビ媒体はひとくくりにはできない点もあわせて押さえておきましょう。

採用サイトを有する会社も多く見かけます。よくある誤解が、「ナビ媒体を使ったが採用できなかったので、ナビ媒体をやめて、採用サイトで集客したい」というものです。採用サイトがあったとしても、ペルソナにマッチした候補者にリーチできなければ意味をなしません。採用サイトは集客そのものに有効というものではなく、候補者に認知され、より関心をひくためのツールです(01)。

01 大手ナビ系や採用サイトの使い方
採用サイトそのものを「集客」ツール化するより、ゆるやかな「ハブ」くらいの位置づけで運用した方が機能しやすいでしょう

採用サイトで多くの会社が設けているのは、「社員の声」のような社内メンバーにフォーカスしたものです。実際に働くメンバーの人となりや雰囲気が伝わるものですので有効でしょう。ただし、会社の宣伝・PRが色濃くにじみ出ている内容もよく見かけます。候補者が知りたいのは、社内メンバーの本音、「生の声」です。採用サイトは当然ながら宣伝・PRツールの一つですが、それが前面に出すぎると、逆効果になる点は注意しましょう。

「社員の声」のようなコンテンツは、自社のメンバーにとっては、「会社の代表として掲載された」といった嬉しさにもつながります。メンバーが自発的にSNSでシェアをすれば、「認知」の効果も期待できます。

 

ダイレクトリクルーティングやエージェントの活用も主流

他の集客手段としては、ダイレクトリクルーティングがあります。ダイレクトリクルーティングとは、企業が積極的に候補者に働きかける手法です。例えば、ナビ媒体の登録者へのスカウトメールや、勉強会などのイベントを通じて接点を持った候補者への連絡、SNSなどを活用したスカウトなどがあります(02)。

02 ダイレクトリクルーティング
大手ナビや自前の採用ページではたどりつけない潜在採用層に、積極的にアタックできるメリットがあります

例えばスカウトメールで、レスポンス率に大きく違いが出るのが「あなたに向けて送っています」という差別化を示したかどうかです。自社のスカウトメールに気づき、読んでもらい、関心を持ってレスポンスをしてもらうには、メールの内容がテンプレートに沿って、大量に一括送信していると見受けられれば、読まれるチャンスを逃してしまいます。あらかじめ送る候補者の経歴や今後積みたい経験などをしっかり把握した上で、「なぜあなたにスカウトメールを送ったのか」「どういう点が自社とマッチしているのか」などを記載します。

その他、エージェント(人材紹介会社)を活用する手法もあります。ペルソナや自社についての情報をしっかりと伝えましょう。エージェントも紹介先が一社ではないため、エージェントにも自社の認知や魅力を感じてもらい、「○○社に紹介したい」と思ってもらう必要があります。自社についての情報(採用サイトやパンフレット、PR資料など)をわかりやすく伝えましょう。紹介を受け、面談をした後は、フィードバックを丁寧にします。ペルソナとマッチしていた点やズレがあった点はどこだったか、候補者のどういうところを重視して面談しているのか、などを伝えれば、次の紹介のマッチング精度が上がり、効率的になります。

エージェントも、業種・職種、役職や条件によって限定しているところもあります。転職活動をしていない人材の中で、ペルソナにマッチした人材を調べ、個別にアプローチを行う「サーチ型(スカウト)」もあります。ペルソナに適したエージェントを探していきましょう。

 

現場の働く声が確認できる場を用意する

それでは、これまでの説明を踏まえ、もう少し具体的に集客について考えていきましょう。

例えば、ペルソナの職種がエンジニアで、新しい技術を積極的に取り入れていくことに関心がある場合、働く環境として重視しそうな項目は何でしょうか。03はあくまでも一例となりますが、(1)~(5)が該当するとします。この(1)~(5)を、「認知」と「集客」で効果的に伝えていきましょう。

03 CtoC経由で、知ってもらいながら集める
社内メンバーが参加するイベントで、メンバーが職場の本音を1対1で伝えられるような会を設けた後、例えば、エンジニアに関連するテーマの勉強会を設け、気になる人材を招待したりします

新しい技術を導入したプロジェクト事例をブログやメディアに掲載してみたり、自社内でエンジニア同士のナレッジを共有する勉強会を開催し、社内メンバーがその様子をSNSで発信するようにしたり、交流会を開いてメンバーと話す機会をつくったりします。そして次は、(1)~(5)がより伝わりやすくなるように、もう少し内容を絞り込んだ勉強会に招待をするという「集客」フェーズへと移行します。

「ペルソナが関心を持ちそうな項目は何なのか」を考えながら進めていかなければいけません。「高水準の報酬やオフィス環境を重視するだろう」というペルソナを設定する会社もあれば、「上下関係がなくフランクに意見を言いやすい環境を重視するだろう」というペルソナを設定する会社もあるでしょうし、それぞれにあわせた「認知」「集客」をしましょう。

手間がかかりそうで面倒だ、と思うかもしれませんが、“採用がうまくいかない”と悩んだまま、従来の手法をとり続けても解決はされません。採用はそれほど難しく、重要なことなのです。

遠藤義浩
※Web Designing 2018年8月号(2018年6月18日発売)掲載記事を転載

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