SEOの基本を徹底、問い合せ数300%アップの事例 事例詳細|つなweB

 

無鉄砲な努力よりも“正しい選択”

門や車庫といった、生活するための建物の外にある構造物の工事や施工を行う「外構業」。この業種は大手の介入が少ない。依頼主はコストダウンのために建築業者ではなく、外構専門会社に直接依頼することが多いからだ。そのため、インターネットとの相性がよく、検索からの流入も多いとされている。

格安外構専門店のヒライエクステリアは、制作会社と二人三脚でSEOとサイト改善を行い、月に50~60件まで問い合わせ数を増やしていた。しかし、以降の問い合わせ数は伸び悩んだ挙句、ネット広告の運用を次の一手と考えて、弊社へコンタクトがあった。詳細な話をうかがい状況を把握したところ、同社の成長サイクル(目標設定→流入対策→ウェブ分析→サイト改善)を構築していくことが最善策であると結論付け、Webサイトの分析とそれにもとづいたサイトの改善を提案し、月間144件まで増やすことができた。

01 改善したWebサイト
ヒライエクステリア Webサイト(現在)

そのプロセスとして、無鉄砲な努力を避けて“正しい選択”を行うための指標を設けた(図02)。指標に沿った施策を実行するために、まずは改善内容と、今後進んでいくべき方向性の共有を行った。ヒアリングで得た課題をもとに、1年後の問い合せ数を100件に到達させることをKGIに設定。コストをかけずに効果を出せる運用をしていくために、まずはじめに成長サイクルをつくり、回していくことを意識する必要があった。

02 改善のための「指標」づくり
成長を確かめるための指標。「問合わせ数100件」をKGIとし、KGIを達成するための主な要因をCSFとして「施工事例ページの成長」「施工関連のキーワードの流入」「重要キーワードからの離脱改善」の3つに分けている。この3つを実現するために、セッション数やPV、離脱率の改善といった定量的なKPIを設けている。このような設計図をつくることによって、成長を確かめることが可能になる

 

3C分析からSEO施策までの道筋

そのためにまず、「顧客」「競合」「自社」の関係から競合他社と差別化できる強みとなるスイートスポットを探るため、フレームワーク「3C分析」を用いて分析を行う。改善プランとしては、キーワードプランナーから得た情報をもとに、クリック率が低いキーワードの説明文を改善し、さらに、Googleアナリティクスから直帰率が低くコンバージョンを達成しているターゲットキーワードを知ることである。

具体的に行うのは、競合のタグや広告を分析したうえで、SEOで検索順位が上がるような施策を打ち、リスティング広告の検索結果でも上位の面を取るための施策を考えること。さらに、分析結果によると、商業エリアが絞られていることがわかったため、Googleアナリティクスのセグメント「エリアを近隣県に絞ったアクセス解析」でターゲットとなるお客様の行動を明確にし、問い合わせに対して決め手となるページを見つけることである。

こういった分析を行うことでPDCAサイクルを正しく回すことができ、短期間でサイトの成果を引き出すことにつなげていく。

03 競合他社と差別化するポイントを見つける
自社と、外部要因である市場や他社との関係を明らかにし、自社が進むべき方向や強み、弱みなどを発見できる「3C分析」のフレームワークを用いた。他社と差別化できるスイートスポットを見つけることで、競合に差をつける戦略を練ることができる。今回は、SEOという点から差別化するポイントを探っている

 

アクセス解析で重要ページを選択

さらに現実に即した、顧客視点のWebサイトへと改善していくため、アクセス解析データからも打ち手を模索した。

アクセス解析から得られたのは、「施工事例」を経由した問い合わせが多いことであった。そこで、目標を達成するために必要なKPIと、競合他社に勝つためのUSP(自社の強みや売り)を明確にする必要がある。

ちなみに、ヒライエクステリアは、他社と比べて施工数が多いので、Webサイトで施工事例数を増やすことをUSPとして考えた。

 

施工事例を使った3つのSEO施策

前述のような分析を行ったうえで、3つのSEO施策を実施することとした。施策は、施工事例を軸として「問い合わせへの流入を増やすこと」と「コンテンツに流入してほしいキーワードを増やすこと」を目的として行った。

施策1:「設置施工事例」のジャンル分け
「ウッドデッキ」「駐車場」「カーポート」「テラス」「物置」等の工事ジャンルをカテゴリ分けすることで、検索流入を増やす。

04_「設置施工事例」のジャンル分け
施工ジャンルを細かく分け、顧客がキーワードからサイトに訪れて問合わせにいたるような仕組みをつくった

施策2:「地域別カテゴリ」を設置
埼玉県全域ではなく、業務が行える市町村名を「地域」として明記することで、「地域名+ジャンル」での検索流入を増やす。

05_「地域別カテゴリ」を設置
施工できる地域を分け「地域名+施工ジャンル」検索が可能にした。そうすることで、検索流入のバリエーションを増やすことができる

 

施策3:施工事例の詳細をカテゴリ分け
ページの滞在時間を増やすため、施工事例で使用した商品やシチュエーション等を理解できるように整理した。

06_施工事例の詳細をカテゴリ分け
施工事例のカテゴリを細かく分けることで、キーワードを増やし施工事例に直接ランディングが上昇した

SEOという観点からしてみれば、どれも基本的なことであり、まずはコンテンツを整理することが最適化への近道である。

 

リスティング広告とスマホ対応

当初は外構に関するキーワードを用いてリスティング広告も出稿していたが、一部のキーワードはクリック率が高いのにも関わらず、離脱率も高いという現象が起きていた。ランディングページにおけるサービス説明が不十分であると考え、詳細な説明を加え内容を充実させたところ、離脱率の改善が見られた。

たとえば、外構業界では当たり前の情報であっても、顧客の立場からすると理解しにくかったりわかりにくいという「盲点」はよくあることである。得られたデータをもとに顧客のニーズを探り、より価値のあるページをつくることが重要である。

さらに分析を進めていくと、アクセスする顧客の年齢層の高さからか、スマートフォン環境だと問い合わせフォームでの離脱率が高いことがわかった。そこで、スマートフォンからのアクセスに関しては、問い合わせフォームではなく電話での問い合わせ数の増加へと目標を切り替え、常に電話番号を表示し、どのページからもわかるように改善した。結果、問い合わせ数は増加していった。

さらに改善のスピードを上げるため、インハウスのWebデザイナーを採用。弊社の分析結果を即座にサイト改善へとつなげる重要な役割を担ってもらっている。最近ではチャットワークなどのコミュニケーションツールを利用したオンラインミーティングにより、着実なコミュニケーションを図れるようになった。

今後の目標としては、問い合わせ数の増加を売上に繋げていくこと、問合わせからの離脱を防ぐことで顧客満足度を上げることである。というのも、問い合せから受注までのサイクルを細分化して分析したところ、「問合わせ」→「メール返信」→「お見積り」→「受注」という流れのなかで、見積り後に連絡が途絶えて離脱するケースが多い。見積りを出した後にお客様からの連絡を待ち続けていることがその原因である。対策として、見積り提出後の追いかけメールや、見積りを出すメールの文面を修正し、受注までの離脱率の改善をはかることで、売上アップのための成長サイクルを高速化していくのである。

07_セッション数の推移
2014年11月と2017年11月のセッション数の推移を示したグラフ。2014年11月に2,222セッションだったのが、2017年11月には7142セッションと増加。最大で約5,000セッション近く上昇したことがわかる。また、3年の月日をかけて、徐々に増加傾向にあることも見て取れる
08_問合わせ数とセッション、ページビューの相関
施工事例のセッションやページビュー数が増えることでお客様のお問い合せ数も比例して上昇したのである

 

“小さな塊”としての分析と施策

現在は、リスティング広告とリマーケティング広告を止め、広告費を0円にしても問い合せ数は伸び続け、利益率の高い成長サイクルを構築できるようになった。その要因は、なによりもSEOを徹底したことにある。

ヒライエクステリアがここまで伸びた秘訣は「サイクルの高速化」の実現であり、何よりも代表の素早い決断によるものだ。ミーティングの場では「やる/やらない」をすべて決めていただき、成長サイクルの高速化を実現できたのである。ヒートマップツールや検索順位をチェックできるGRC、サーチコンソール等のツールを導入することもまた、スピーディーな決断を行う体制づくりの要因となっていた。

ウェブ解析によるサイト改善には、費用と時間をともなう。しかし、大規模なリニューアルのように“大きな塊”ではなく、“小さな塊”として分析と施策を繰り返すことで、成長サイクルを回すことができるようになる。サイクルの成長度合いはスピードに比例するため、意思決定者の理解と決断スピードが最重要の課題であり、意思決定のスピードを早めるポイントは、コミュニケーションの量といえる。

サイト改善で難しいことをする必要はない。「資源がどれだけあって」「どこに向かって」「何をすればよいのか」。データをもとに仮説を立て、施策を検討し、納得いくまでウェブ解析士とコミュニケーションを図ること。そうすれば、伸び悩みを打破する道がきっと拓けるはずである。

 

Text:後林弘之
(株)ブルーベア 代表取締役 ウェブ解析士マスター。「顧客の成長サイクル最大化」をコンセプトに2001年にブルーベアを創業。2010年にはリスティングとアクセス解析のコンサルタントとして、また、2017年からはリスティングとウェブ解析の社内研修に特化した業務を行う。 http://bluebear-jp.com
Text:一般社団法人ウェブ解析士協会
事業の成果に導くWeb解析を学ぶ機会の創出、研究開発、関心を持つ人たちの交流促進、就業支援などで、Web解析を通じての産業振興やWeb解析の社会教育を推進する。
林弘之(一般社団法人ウェブ解析士協会)
※Web Designing 2018年4月号(2018年2月17日発売)掲載記事を転載

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