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特集一覧 Web Designing 2018年2月号

AI時代のUX設計 人の能力を拡張するUXをどう設計するか

今、AIを組み込んだ業務のリプレイスがさまざまなジャンルで本格的に進んでいる。作業の一部をAIに置き換える場合、どのようなUX設計が必要となるのか。実例を交えて解説していこう。

プロダクト開発の現場では常識となったUX設計

今や、サービス設計やプロダクト開発の現場において当たり前の手法となった「UX設計」の考え方。ページ一つ、コンテンツ一つ、アプリやWebサービスのみにとどまらず、業務システムやオフラインプロダクトにおいても広く取り入れられる設計思想だが、言い切ってしまえばその求めるところは非常にシンプルだ。つまり、「そのサービスはユーザーとどうコミュニケーションするべきか」を事前に設計すること。それこそがUX設計によって設計されている対象と言える。

つまり「どんな感情を持ったユーザー」が「どんな形でサービスと接触」し「何を感じてどう動く」のか。ユーザーの体験を機能軸ではなく感情軸で仮定し、サービス接触前後を含めた設計をしようという考え方だ。

しかし、AIの進化と普及によってそのコミュニケーションは質と相手が変わりつつある。AIにより最適化されたコミュニケーションは、その内部で何がどう処理され判断されているのか。そこがある種のブラックボックスとなる。人間には結果しか見えず判断の根拠が見えなくなってしまうのだ。

人とコンテンツあるいはサービスとの接点に、または業務の一部にAIが入っていく時、そこに触れるユーザーのUXを我々はどう捉えどう設計していけばいいのか。国内外の実例をベースにそのヒントを探っていこう。

 

AIとの協業で生まれる新たなUX

AIによる画像認識やデータ分類、選択の効率化の事例は、世界中で毎日のように発表されている。実際に多くの投資が行われ、他のどの領域と比べても驚くほどのスピードで進化を続けているのは確かだ。

だが、実のところまだ「処理のすべてをAIに任せる」という利用方法はかなり限られたシーンでしか活かしようがないというのが現状だ。「あなたへのオススメ」といったサジェストや診断系のコンテンツなど、正解であってもなくても問題ないといった類の活用法であれば問題も少ないが、そうでない場合、すべてAI任せでは事業に組み込む事が難しい。

そのため、多くのケースにおいてAIは「人間に対しサジェスト候補を示す」部分を担当し、人間は「AIにより掲出された候補から最終的な選択および修正を行い実行する」といったフローが採用されている。人間の思考や調査の一部をAIが代行し再度人間のフローに戻す…といった設計が現在の主なのだ。

これをUX設計の観点で見直すと、なかなか頭の痛い問題が発生する。「一度人間には理解できないフロー」を経て「そこから人間が選択する」という構造になってしまうのだ。なぜ、どんな思考で、何を根拠にAIがその選択肢を作成したのかがよくわからないまま、人間は最終的な判断をくださなくてはいけなくなる。設計しきれないUXフローがカスタマージャーニーマップ上に発生してしまうというわけだ。

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人間による判断で進む従来のフロー
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AIによるサジェストが取り入れられたフロー
人の判断によるフローでは、その中身を理解した上でステップが進む。AIを取り入れたフローでは、なぜその選択肢が掲出されたのかが人間にはわからないまま進む
 

これを利用者(オペレーター)にとってのストレスとしないため、AIの思考を"ホワイトボックス"化しようとする動きも始まっている。一つの例にはなるが、例えば「AIが内容をどう分類し、なぜその選択肢をサジェストしたのか?」を画面上で掲出。利用者がそのフローをさかのぼって確認できるのが「AI Chat Supporter」だ。

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ユーザーの質問をチャットボットがどう分類してその回答を出したのか、ユーザー側が確認し変更することができるチャットツール『AI Chat Supporter』 ※図は開発中画面の例です

人間 ⇒ AI ⇒ 人間 と作業の主体が移るワークフローにおいて、「なぜ?」を明確にすることでUXを最適化していく。精度を100%に近づけるだけではたどり着けない新たなUXの観点が生まれ始めているのだ。

 

超パーソナライズ時代のUX設計

AIの導入によるUXの変化は管理者だけに留まらない。当たり前の話だが、利用者側にも同様に大きな変化を起こしていくことになる。

例えば「○○という意味の会話をした人に■■を送る」といったチャット対話からパーソナライズしたマーケティングや、「△△な気分の人が××を見たら」といった行動条件からの感情分類により、提供されるコンテンツやコミュニケーションを変化させていく…といった設計も可能になりつつあるのだ。

これまで難しいとされてきた、ユーザーの行動に対し、リアルタイムで感情や意図を分析し、即座にコンテンツの最適化や生成、サジェストを行うAIが、エッジコンピューティングデバイスの普及やスマートフォンに内蔵されるGPUの処理速度上昇、また、モデルそのものの軽量化等に伴いいよいよ本格的に普及しようとしている。ユーザーの行動を即座に把握し、学習し、レスポンスや評価をすぐに受け入れ、また反映していくことで、従来は理想としつつも実現が難しかった「個人に最適化した体験の提供」が本当に可能になっていくだろう。これによりカスタマージャーニーマップはより最小化され、グループは細分化。厳密には仮説を立てきることが難しくなっていくはずだ。

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従来のユーザーセグメント型UX設計
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AIによる行動パーソナライズ設計
従来はユーザーセグメントに沿ったペルソナを用いて設計していたものが、個々のユーザーにどうレスポンスするかを重視した小さな単位での設計が可能に

その時我々が設計するべきは、ユーザーを特定のペルソナに押し込んで「まとめて理解する」という従来のマーケティング的思考ではなくなるだろう。大を活かして小を切り捨てるのではなく、個々の行動に対し「どうレスポンスを返すべきなのか」という、より細かなUXの設計こそ、今後最も重要な考え方となっていくのかもしれない。

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「レイアウトを変えて」「色を変えて」など、ユーザーとの"会話"を重ねることでグラフィックデザインを提案していく「FIREDROP」 
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自然言語による人間の指示に対し、理解できない部分を確認して実行する処理を実現したPreferred Networksのロボット https://arxiv.org/pdf/1710.06280.pdf 引用元 : Interactively Picking Real-World Objects with Unconstrained Spoken Language Instructions

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掲載号

Web Designing 2018年2月号

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2017年12月18日発売 本誌:1,530円(税込) / PDF版:1,200円(税込)

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Webサイトの弱点を改善して、成果の出せる武器にしたい、もしくは、Webを有効活用した新しいビジネスを立ち上げたい。そうお望みの方に、「UX(ユーザー体験)」のノウハウをお勧めします。

UXとはとても端的に言えば、ユーザー視点で設計やデザインを考えることです。マーケティングの世界は、ユーザーの心をとらえる「体験を売る」時代になり、ますますこの考え方が取り上げられるようになりました。ただ、「UX」という言葉が先行して、イマイチ何のことかわからない、理論はわかるけど実際にどこから手をつけていいかわからないという方も少なくないのではないでしょうか。

UXは闇雲に叫んでも成功するものではありません。そこには理論に基づく準備やプロセスがあります。
本特集を一通りお読みいただければ、無意識にUXの理論や見るべき視点、メリットや期待できる効果などが把握でき、みなさんのビジネスの現場で応用ができるようになることでしょう。

【段違いの成果が出るUXの「5プロセス」】

[1]心を1つに。
プロジェクトチームの意識共有を図ろう

[2]お客様を知る。
ユーザーの「ホンネ」や動向を知ろう

[3]商品を知る。
プロジェクトにおけるビジネス的課題を把握しよう

[4]理想を描く。
商品のあるべき姿を描き、実現のためのアイデアを練ろう

[5]つくる・見せる・話を聞く。
原型を部外者に試してもらい、反応を見よう


<こんな方にオススメです>
・UXをまずは何から始めていいのかわからない
・UXってデザインだけじゃないの?
・そもそもUXってなにがよくなるの?
・部署を横断して取り組むべきなのはなんとなくわかっているが、説得する自信がない
・理論だけではなく、現場で実践していることが知りたい
・Web解析時のUX評価方法や改善方法を知りたい
・UXの重要性をクライアント・上司に理解してもらいたい
・効率よく成果をもたらすためのテクニックを知りたい

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