2030年のAI市場を見据えて。「第4次産業革命」は先行有利! 事例詳細|つなweB

現状、どこまでをAI関連産業と見なすかが曖昧なため、分析レポートによって数値のばらつきはあるが、いずれにしてもAI市場の拡大は確実視されている。富士キメラ総研が2016年11月に発表したレポートによると、2015年度において1,500億円規模だった国内AI市場は、5年後の2020年には約10倍の1兆20億円に、さらに2030年には2兆1,200億円まで拡大すると予測している。

01 AI関連産業の市場規模予測

業種別に見ると、2015年度では金融業での規模の大きさが目立つが、これは複数のメガバンクのコールセンター業務において、すでにAI導入が進んでいるためだ。しかし将来予測においては、製造、情報通信、公共/社会インフラをはじめすべての業種でAI市場の目覚しい拡大が見込まれている。今後は、あらゆる業種において、何らかの形でAIが活用されていくことになるだろう。もはや一握りの大企業に止まらず、中小企業もAIに目を背けてはいられない状況が訪れつつある。

02 業種別のAI市場規模予測

また、経済産業省はAIやIoT、ビッグデータを取り巻く急速な技術革新を「第4次産業革命」と見なし、2030年を見据えた「新産業構造ビジョン」の策定に取り組んでいる。今後、データ活用のための環境整備や人材育成、技術開発などを国策として支援していく戦略だ。

では、こうした流れの中で、AIの導入がどれほど進んでいるのかといえば、実はまだ積極的に検討している企業は少ないという状況も浮き彫りになっている。総務省は、国内の就労者に対してAIの導入状況を尋ねた調査結果を公表しているが、「すでに企業でAIを導入している」と答えた人は、わずか5%に止まっていた(「すでに導入されており、活用したことがある」「すでに導入されているが、一度も活用したことがない」という回答の合算)。また、計画中・検討中と回答した人もわずか5.6%に止まり、AI導入に消極的、あるいは無関心な状況が見て取れる。同調査では米国でのヒアリング結果も併せて掲載しているが、米国と比べると日本は導入・導入計画が大幅に遅れているのが見て取れる。

03 職場へのAI導入の有無

この背景には、AIの役割に対する認識の違いがある。総務省は前述の調査レポートの中で、AIがビジネスの中で果たす役割について尋ねている。米国では、「既存の業務効率・生産性を高める」役割という回答が多かったのに対し、日本では「不足している労働力を補完する」役割という回答が多かった。つまり日本では、既存の労働を補完する存在として(言い換えれば、人間の代替として)AIを見なす傾向が強いと言える。国内のAI導入が進むためには、こうした認識が変わる必要があるのではないだろうか。

04 AIが果たす役割

しかし、こうした国内のAI導入の遅れは、先見的な企業にとってはむしろチャンスとも言える。今、積極的にAIの導入を進めれば一歩抜け出すことが可能になり、そこに先行者利益が生まれる。いずれはどの企業でもAIを導入する可能性が高まる中、先行者として利益を得るか、後塵を拝して伸び悩むか、どちらがいいのかは明らかだ。さて、あなたの会社はどちらを選ぶだろうか?

01~02 出典:2016 人工知能ビジネス総調査(富士キメラ総研)2016年11月28日発表
03~04 出典:平成28年版 情報通信白書(総務省)2016年8月1日発表(04は主だった回答を抜粋)

児玉淳一
※Web Designing 2017年6月号(2017年4月18日)掲載記事を転載

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