著作権侵害における プラットフォーム運営者の責任|WD ONLINE

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知的財産権にまつわるエトセトラ Web Designing 2022年10月号

著作権侵害における プラットフォーム運営者の責任 ~青山ではたらく弁護士に聞く「法律」のこと~

身の回りに溢れる写真や映像、さまざまなネット上の記事‥‥そういった情報をSNSを通じて誰もが発信したりできるようになりました。これらを使ったWebサービスが数多く誕生しています。私達はプロジェクトの著作権を守らなくてはいけないだけでなく、他社の著作物を利用する側でもあります。そういった知的財産権に関する知っておくべき知識を取り上げ、毎回わかりやすく解説していくコラムです。

小説投稿アプリ「テラーノベル」において、悪質な無断転載が横行していること、無断転載に対応する運営体制について、運営会社が謝罪する事態となりました。今回はこの事件について考えてみます。

まず、無断転載が著作権を侵害することは明らかですが、それについて一義的に責任を負うのは投稿者本人です。プラットフォームは場所を提供しているだけですから、全ての投稿について当然に責任を負うわけではありません。

ただ、プラットフォームは投稿者や読者から得る料金やアクセス数に応じた広告収入により利益をあげています。著作権を侵害する投稿により利益を得ているとなると全く責任を負わないというわけにはいきません。

そこで、プロバイダ責任制限法では、プラットフォーム側が責任を負う必要のあるケースを、「①他人の権利が侵害されていることを知っていたとき」「②他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき」の2つの場合に限定しています。

従来は、「世間的に有名になっているコンテンツのコピー投稿」といった場合を除くと②に該当することは少なく、①を意識する傾向が強かったです。そのため、利用規約によって権利を侵害する投稿を禁止し、違反した投稿は削除する規定を設けることや、通報窓口を設けて、通報後、権利侵害を確認できた際に削除する形が多くなっています。

ただ、通報内容から権利を侵害していることが明らかなのに、通報を受けてから実際に削除するまでの対応があまりに遅いと問題です。少なくとも通報を受けてから削除するまでの間は権利を侵害していることを知りながら放置していたとして、①に該当して責任を負うことになるでしょう。

ですから、「通報を受けたら侵害かどうかを速やかに確認すること」「侵害だと確認できたら速やかに削除等の対応をすること」が必要となります。プラットフォーム上の投稿数が増えるにつれて、通報の数も大量になる可能性はありますが、だからといって対応の遅れは許されません。プラットフォームを運営する際には十分な体制を整えておくことが必須です。

また、明らかに違法な投稿については事前にチェックし、投稿を阻止する仕組みも必要です。このことは違法な投稿の数を減らすだけでなく、①との関係でも必要なことと言えます。YouTubeではContent IDの「ブロック」といった制度があるように、AI技術の進歩によって、投稿の事前チェックも従来ほど困難ではなくなりつつあります。今後はプラットフォーム側にも、違法な投稿を事前に制限する仕組みをつくっておくなど、権利を守るための責任が求められると言えます。

著作権侵害で投稿者が問題になるのはもちろん、投稿プラットフォームにも責任がある。投稿およびユーザーに対し、違反を規制する体制づくりが必要だ
Text:桑野雄一郎
1991年早稲田大学法学部卒業、1993年弁護士登録、2018年高樹町法律事務所設立。著書に『出版・マンガビジネスの著作権(第2版)』(一般社団法人著作権情報センター 刊 2018年)など http://www.takagicho.com/

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