WD Online

知的財産権にまつわるエトセトラ Web Designing 2021年2月号

一般名称になった商標 ~商標の希釈化~ ~青山ではたらく弁護士に聞く「法律」のこと~

身の回りに溢れる写真や映像、さまざまなネット上の記事‥‥そういった情報をSNSを通じて誰もが発信したりできるようになりました。これらを使ったWebサービスが数多く誕生しています。私達はプロジェクトの著作権を守らなくてはいけないだけでなく、他社の著作物を利用する側でもあります。そういった知的財産権に関する知っておくべき知識を取り上げ、毎回わかりやすく解説していくコラムです。

シンガーソングライターの瑛人さんが歌う楽曲「香水」が2020年、人気を博しています。有名ブランドの香水が登場する歌詞とメロディがとても印象的です。

「DOLCE & GABBANA(D&G)」は商標登録されています。商標は自分の商品やサービスを他社の商品やサービスと区別するための目印です。瓶やパッケージに「D&G」という商標をつけることで、シャネルやティファニーといった他社の香水と区別することができます。消費者は商標を見ることでそのブランドを認知し、信頼をして商品を購入するわけです。もし真っ赤な偽物に商標がついていたら消費者の信頼は損なわれ、ブランドに対するイメージも悪くなってしまいます。

ところが、商標が特定のブランドではなく、その商品の一般名称として使われるようになってしまう場合があります。裁判で一般名称になったと認められた商標には、うどんなどの食材をだし汁で煮込む鍋料理​「うどんすき」や、ぶどうの品種「巨峰」などがありま す。これらは商標として登録されているのですが、裁判所によって一般名称になったと判断されました。

一般名称になったということは、もはや他社の商品やサービスと区別する目印としての機能が果たせていないということです。ですから商標権を持っていなくても「うどんすき」という名前の料理を提供したり、「巨峰」という名前の葡萄を販売したりしても商標 権侵害にはなりません。

一般名称になったかどうかは、その商標が社会でどのように使われているかで判断されます。裁判で争われる場合は、​さまざまな用例からも検討されることになり、辞書に一般名称として掲載されているかが最も有効な例です。新聞やWebの記事であった り、場合によっては「多くの人が一般名称として使っているか」のアンケート調査を実施することもあります。

もし商標登録されている言葉を一般名称であるかのように使ったりすると、商標権者からクレームがきたり、法律的には不正競争防止法違反とされる可能性もあります。Webサイトなどでも「~は~社の登録商標です」といった記載を目にすることがありますが、その用語が普通名称ではないということを明らかにして、商標権者からのクレームを避ける狙いで書かれます。

瑛人さんの「香水」はD&Gの「その香水」という、特定ブランドの香水という意味がはっきりした表現になっています。普通名称として使っていないことが明らかなため、クレームの対象にもならないのでしょう。これがD&Gの「香り」という言い方だったら、「D&G」を一般的な香水を指す言葉として使っているとしてクレームが来たかもしれません。Webサイトなどでも登録商標の取り扱いには気をつけましょう。

copyrights_01.jpg
「うどんすき」「巨峰」など、社会で一般的に使われているような商標は、商標としての役割が希釈化し、一般名称化していると言える
office_LOGO.jpg
Text:桑野雄一郎
1991年早稲田大学法学部卒業、1993年弁護士登録、2018年高樹町法律事務所設立。著書に『出版・マンガビジネスの著作権(第2版)』(一般社団法人著作権情報センター 刊 2018年)など http://www.takagicho.com/

掲載号

Web Designing 2021年2月号

Web Designing 2021年2月号

2020年12月18日発売 本誌:1,560円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

独自アンケートで浮き彫りにする、「新常態」時代のWebビジネスの「新実態」

サンプルデータはこちらから

Web Designing 12月号(12月18日発売)特集

[非接触時代]のIT業界の今後はどうなる?
Web制作のリアル2021

年初には誰もが予想し得なかった事態になった2020年。全ての企業において例外なく、ビジネスも働き方も従来の常識が通用しなくなったと言っても過言ではありません。

リアルでの接触がしづらくなった代わりにオンラインでできるマーケティング活動が存在感が増していく中、企業のビジネススタイルは明らかに変わってきました。では現在、この状況下でも成果をあげている企業はどんな取り組みをしはじめ、どんなビジネス潮流が起きているのでしょうか。

それを知る鍵は、さまざまな企業規模、業種のデジタル施策の相談を受けソリューションを提供し続けているWeb制作会社の動向にあります。今、彼らの元にはどんな相談が舞い込み、どんな近未来のビジョンを持っているのでしょうか。

Web Designing 2021年2月号では、同誌編集部による完全オリジナルなアンケートによる大規模な調査により、2021年のWebビジネス、デジタル施策の潮流、そしてWithコロナ下での働き方まで紐解いていきます。

●様変わりしたビジネスの潮流とクライアントの悩みとその解決策
●リモートワークはWebビジネスをどう変えた?
●Withコロナ下で求められるスキルや人材とは?
●今後習得したいスキルは?
●もっとも利用されているマーケティングツールは?
●もっとも利用されているコミュニケーションツールは?
●もっとも利用されているUIデザインツールは?
●リモートワークで課題だと思っていることは?

など

この記事を見た人はこんな記事も見ています