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一億総編集者計画 Web Designing 2019年12月号

ビジネスマンの質問力 顧客の真意を汲み取るために

【今回のお悩み】「お問い合わせいただき、最初のヒアリングをした時のこと。うまく顧客のニーズを汲み取ることができず話が合わなくなり、申し訳ない気持ちになりました…」

Illustration: 浦野周平・児玉潤一

相手の目線で徹底的に準備する

計画(1)オリジナリティのある想定質問をつくろう

今回は、インタビューや取材で必要となってくる「質問力」がビジネスにおいて、いかに重要かということにフォーカスします。

編集作業において、インタビューは事前準備がすべてといっても過言ではありません。そのため、想定質問をつくる事前準備がとても重要になります。もちろん、台本ではないので、想定どおりの質問ができるとは限りませんが、準備しておく姿勢は大切です。

では、質問事項をまとめるには何を気にするべきでしょう。それは、オリジナリティです。表層的なリサーチでは、当然、誰もが考えそうな質問になってしまい、質問される側にも「また、その質問か…」と思われてしまいます。相手の状況も踏まえ、徹底したリサーチによるオリジナリティのある質問事項をまとめることが必要です。

オリジナリティある質問を発想するためには、「何を?」ではなく、「なぜ?」というアプローチが求めらます。単なる事実確認ではなく、その背景を読み解こうとする問いを立てなければなりません。そうした発想をもとに複数の質問を用意しておきましょう。

 

計画(2)相談者の立場を知ろう

質問を準備しておく重要性は理解できたと思います。しかし、徹底的なリサーチにもとづく質問と自社の強みを伝えるセールストークだけでは、なかなか顧客の期待に応えることはできません。

いい結果を導くには、課題のボトルネックを発見する必要があります。そのためには、相談者について把握することが大切です。

例えば、編集作業においてのインタビューであれば、俳優なのか、アーティストなのか、スポーツ選手なのか、企業の方なのか、インタビュイーによって本人の真意を100%引き出せる難易度は変わってきます。立場によって、ファンやステークホルダー、NG事項を意識した回答になってしまうからです。

いかに良い質問を準備していたとしても、前提となる相手の立場を理解していないと、結局は当たり障りないインタビューとなってしまいます。

特に今回のお悩みのケースの場合、相手が自らの意思を持った当事者として相談しにきているのか、あるいは、上長や会社からの指示として相談しにきているのかにより真意の引き出し方は大きく変わってきます。

真の課題は、相談内容だけでなく、この前提部分を理解することで見えてくることもあるはずです。例えば、当事者が直接相談に来ていれば、本人のニーズを聞き出すことは容易だといえます。課題が自分ゴト化されているので、簡潔な説明をしてもらえるからです。

しかし、その課題が相談者の会社や組織において、どれほど重要視されているのか把握していないと、当事者本人にとっての解決策は提示できたとしても、会社や組織の課題に対しての答えは出せません。入念なリサーチに加えて、相手の立場を踏まえた想定質問を用意しておくことが、真の課題を知るうえで重要です。

また、「いかに共通認識を持ってもらえるか?」という部分も大事になってきます。読み手が「自分に必要な情報だ」と認識してもらえるような感情を抱かせるために、時には注意を喚起するような厳しい内容や、事実を集める努力も必要です。

 

 

言語化されていない情報にも向き合う

計画(3)なぜ自分たちに相談するのか考えてみよう

前段で述べた「相手の環境や状況を考え、徹底的に準備する」という発想から、もう一歩踏み込んだアプローチを紹介しましょう。それは、よりエモーショナルな部分を押さえた考え方です。

今回のお悩みは、ニーズを掴みきれないところが問題です。いくらロジックを駆使して、ヒアリング内容から洗い出そうとしても、お悩みのように相手のニーズが見えない場合、どうすればいいのでしょう。

紐解く方法として、相談者自身も言語化できていない可能性があるのを見逃してはいけません。そして、「そもそも、なぜ、自分たちに相談が来たのか?」という点も着眼点として必要です。

問い合わせをして、わざわざ会う約束を取り付けてくれたのには、立派な動機があるはずです。そして、その動機こそが言語化できていないニーズかもしれません。価格が魅力的なのか、デザインセンスを評価されたのか、実績を信頼されたのか、まずは、相談者が自分たちを選んで相談しに来た動機を探ることをしてみましょう。

例えば、相談者が課題を丁寧に説明してくれたとします。そして、ヒアリングした結果、明確な解決策が浮かびました。しかし、「なぜ、その課題を解決したいのか」という部分が掴めないとすれば、本当にその解決策が相談者にとって正解なのかはわかりません。

解決策はわかっていても、ニーズがわからなければ、相手が期待しているものに沿っているか曖昧な可能性があります。もし、「デザインセンスが評価されて、相談しに来てくれているんだな」という問い合わせの動機を読み取れれば、解決策に「デザイン視点でのアプローチ」を欲しているといったニーズが見えてきます。そして、そこに応えるようなヒアリングをしていくと真のニーズを汲み取れるのです。

 

計画(4)まずは傾聴する姿勢を持とう

的確にニーズを引き出すためのポイントとして、「オリジナリティのある想定質問の作成といった徹底した準備」「課題の自分ゴト化の有無など、相談者の理解」「問い合わせ動機の明確化による、真のニーズの発掘」とそれぞれ説明してきました。こうした要素で構成される「質問力」について、重要性をご理解いただけたかと思います。

最後に、質問力を習得する基本的な心構えとして、傾聴することの大切さをお伝えいたします。

ここまで解説してきた質問力とは、当然、むやみやたらに質問攻めにして、相手から情報を根掘り葉掘り聞き出すための力ではありません。相手の話し方や仕草など、言葉自体ではない情報にも耳や意識を傾け、まずは聞くことに徹することも必要です。これが傾聴であり、この力が備わっている編集者やビジネスマンは、自身からの質問も的確に伝えることが可能となります。

相手と向き合った対話の場では、話の内容と周辺情報をしっかりと掴んでいるからこそ、適切な質問ができるのです。ここが疎かだと、自分の聞きたいことしか聞けず、相手を置き去りにした場面を生み出し、ニーズの発掘には程遠くなってしまいます。

傾聴や段取りの能力などを必要とする質問力は、編集者のみならず、ビジネスマンにとっても必須スキルです。ヒアリングや商談など、あらゆるシーンで役に立つことでしょう。

そして、この力によって、適切なニーズを汲み取った、かゆい所に手が届くような解決策、インサイトを明らかにした、ありそうでなかった企画案などが実現します。準備と傾聴による質問力を身に付け、そのうえでヒアリングに臨むことが、「顧客のニーズを汲み取りたい」という今回のお悩みを解決する第一歩だと考えます。

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教えてくれたのは…酒井新悟
RIDE MEDIA&DESIGN株式会社 代表取締役社長 https://www.rmd.co.jp/ Facebook ID Shingo Sakai 大学卒業後、祥伝社へ入社。編集者としてファッション誌「Boon」に携わった後、BoonのWeb版「boon.web」でWebディレクターとして活躍。2006年にWeb、メディア、デザインを総合的に制作及びディレクションをするRIDE MEDIA&DESIGN株式会社を設立。現在は、従来の職域にとらわれない新しい時代の「編集力」を活かして、様々なソリューションビジネスに携わっている。

掲載号

Web Designing 2019年12月号

Web Designing 2019年12月号

2019年10月18日発売 本誌:1,560円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

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真の「顧客の顔」がわかれば失敗しない!

Webビジネスの顧客体験(CX)改善テクニック


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最近、Webビジネス界隈では「顧客体験(CX)の重要性」がよく話題に挙がるようになってきました。

「お客様一人ひとりにあった情報やサービスを提供し、顧客満足度をあげる」




この顧客体験は企業の経営層だけの話ではなく、企業の課題を解決するパートナーである制作会社をはじめ、すべてのWebやアプリ制作者、ディレクター、プロデューサーが考えなければいけないものになっています。

とはいえ、顧客体験の提供? 個人単位で接客? どうやってやればいいの? 高価なツールが必要なんでしょ? と考えてしまう企業のWeb担当者もいれば、「ウチはWebサイト制作が生業だから関係ないでしょ」と思う制作サイドの方もいるかもしれません。

いえいえ、今やすべてのビジネスでWebやアプリなど「デジタルの顧客接点」なしでは成り立たない状況の中、その接点が顧客体験向上にはなくてはならない重要な役割になっているのです。

本特集では、顧客体験(CX)が注目される背景から紐解き、実務で実現させるために必要な考え方・進め方をステップバイステップで丁寧に解説します。

本特集を読めば、すべての作業でCXを頭に置いて取り組めるようになるはずです!




【こんな方におすすめ】
◎クライアントワークで上流から関わる制作会社のディレクター、デザイナー
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【内容】
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