2019.05.24
クライアントの反応からわかる企画提案の落とし穴 視点を変えれば通らない理由が見えてくる
度重なるプレゼンをしても、複数の案を出しても通らなかった…。企画書が通らない問題に悩む読者は多いのではないでしょうか。しかし、改善のヒントは意外と身近にあるものです。そこで今回は“クライアントの反応”に着目。
通らない理由を振り返るには抜けていた視点の発見が不可欠
企画書の振り返りに大切なのは、全体を客観的に見渡す視点です。これは企画提案を受けたクライアントが意思決定する際の思考を想像すると、わかりやすいかもしれません。どの企業も、「自社らしいか」「ターゲットにとって適切なコミュニケーション方法か」「予算や考えられる効果は適切か」など、非常に多くの視点から吟味、判断をしていると思います。ですから、実現に至らなかった企画には、客観的にどんな視点が足りなかったか、まずは多くの視点から分析し、知ることが重要です。
RIDE MEDIA&DESIGN(以下RIDE)では、プロジェクトの立ち上げ・企画提案段階でチームを組みますが、多くの場合で“4 MAN CELL 1 SET”を採用しています。これはチーム内にプランナー・エンジニア・デザイナー・コンテンツディレクターの4職種(または職に準じる知見がある者)を揃える仕組みです。クライアントの課題やニーズ、さらには企業文化や社風までも多角的に把握・検討し、重層的な施策を導き出すための手法ですが、複数人による視点の横断が起こるので振り返りにも同様の効果があります。
また、多くの視点をつくるという意味では、自分やプロジェクトメンバーだけでなく、他のグループや職種のメンバーにフィードバックを仰いでもいいでしょう。プランニングの際、アイデアの輪郭が鮮明になっていく一方で、気付けば単眼的な見方になってしまっていたということは、少なくないのです。
デザインのように感覚的な判断に陥りやすい要素は、クリエイティブの見直しだけでなく、課題の本質や施策全体の目的に紐づけて制作意図をしっかりと伝えられていたのかも振り返りましょう。提案側の説明不足により、クライアントが感覚的な判断にせざるを得ない状況をつくってしまっていなかったでしょうか。
その上で大きな原因が見つからなければ、プレゼンで得たクライアントの反応を手がかりに“実現への道”を考えましょう。反応にもさまざまなパターンがありますが、今回はプレゼンの際に比較的よく聞かれる「もっといい案ない?」「もっと安くならない?」「これも追加できない?」の3つのシチュエーションを考えてみることにします。
ただ、最初にお伝えしておきたいのですが、ここに紹介する問題は、クライアントとのコミュニケーションによって改善できることばかりです。コミュニケーションを増やせば、得られる情報量が増えます。もしかしたら顕在化した課題だけでなく、言語化されていない課題にも気付けるかもしれません。つまりコミュニケーションの総量を増やすことで、より正しくニーズを把握でき、適切な企画提案へとつなげられるのです。
いまやどんな職務でも避けられなくなってきた企画提案。まずは振り返りによる現状の改善をしてみてはいかがでしょうか。
01 もっといい案ない?
代案を求められる原因は、企画の精度ばかりではない
度重なるプレゼンや複数案にも「もっといい案ない?」という反応が返ってくる場合、最も多い原因は「前提事項の共有不足」、要するにヒアリング不足です。つまり、「情報収集力」「質問力」不足が原因です。そのため、課題抽出や課題形成に必要な情報量が足りず、企画の設定軸がズレてしまっている可能性が高いのです。RIDEでも、長いものでは半年~1年を費やすほど、ヒアリングは重要視しています。
前述したように、ニーズ把握のためには、先方と十分なコミュニケーションが取れていることが前提です。量を増やすと同時に、聞き方も見直してみましょう。オープンクエスチョン(自由回答)で情報を得られないなら、クローズドクエスチョン(選択肢など)で質問に答えやすい環境をつくる、クライアントの話に対して5W1Hで質問を連鎖させるチェーンクエスチョンを使ってみるなど、さまざまな手法があります。
また、先方の理解が得られる時は、課題を把握するための“シャドー提案”の時間を設けてもらうことをオススメします。これは「課題把握」が目的で、先方の状況は気にせずゴールまでの理想のプロセスを描いて提案します。「ウチはそういうことができなくて…」との返事があれば、「なぜ?」と、質問するきっかけが生まれます。
もう1つは、「別の案も見てみたい」という場合です。RIDEも多くの場合、ベストな一案のみ提案するため、こうした要望を受けることがあります。その場合は、クライアントとともに目的に再度立ち返り、企画書の中で課題解決のために足りない要素がどこかをじっくりと話し合います。そこが言語化され、共有できれば、細部のチューニングで対応できる場合もあります。また、自社のプランニング段階でボツになった案の理由を説明することで、納得いただける場合もあります。この提案だから得られるゴールが明確になり、逆に実施しなかった場合の不都合も伝えることができます。
大切なのは、別案を望む理由をしっかりと確認することです。その理由が明確でない場合、別案を出しても企画にズレが生じてしまうことは想像に難くありません。