WordPressが選ばれる理由と利用時の注意点 事例詳細|つなweB

使いやすさと開発コストの安さ

前述したように、WordPressは国内外共にダントツのシェアを誇ります。なぜかというと、とても優秀なCMSだからです。その理由の一つに、WordPressがオープンソースであることが挙げられます。利用者が多いということは当然開発者も多く、日々世界中の開発者が新たな機能やデザインを提供しています。そうしてプラグインやテーマ(デザインのテンプレート)が多数用意されているので、必要とする機能や希望のレイアウトを手軽に実装できます。

また、もし既存のテーマやプラグインにはないものを開発する場合でも、開発情報がWeb上などに豊富にあるため、必要な情報が得やすくなっています。

他にも、たとえばGoogleアナリティクスのタグを1万ページあるサイトに埋め込もうと思ったら、管理画面から一度設定すれば全ページに反映されるというような集中管理が可能である点も制作・運用しやすい点です。

WordPressはオープンソースなので導入自体は無料ですが、こうした開発やカスタマイズのしやすさが制作時の工数削減に繋がり、制作時間や制作コストを抑えられる点もまた人気の要因でしょう。

 

各デバイスの表示やモバイルファーストインデックスにも対応

WordPressでは、テーマの種類が豊富で、公式のうち最新のものだけでも約6,800が利用可能です(2019年1月時点)。その他にも、各デザイン会社やクリエイターが制作した非公式のもの、無料から有料版まで数多く存在します。WebサイトはPCやタブレット、スマートフォンとさまざまな環境で閲覧されるため、どのデバイスでも閲覧できることが望ましいですが、対応したテーマを設定するだけで実現できます。

また、2018年3月よりGoogleではモバイルファーストインデックス(MFI)が開始されました。それ以前はPCでのサイト表示を基準に検索順位を評価していたのですが、モバイルサイトの表示で評価していくようになったというものです。モバイルサイトにもPCサイトと同じコンテンツを含め、レスポンシブWebデザインであることが推奨されています。対応していない場合は、Googleでの検索順位を落としかねません。そうしたMFI対応に役立つ「レスポンシブWebデザイン」のテーマも、WordPressには豊富にあります。また、プラグインでも同様の対応ができます。

手軽に機能性の高いデザインを実現できることもまた、サイトの制作工数や制作コストの削減に繋がります。

ただし、悪意のあるソースやバックドアが仕込まれたテーマなどが配布されている場合もあります。それらを利用するとハッキングやウイルスを撒いてしまうなどの被害に巻き込まれかねません。WordPressのお墨付きを得ている公式テーマか、信用できる配布元のもののみを利用するようにした方が良いでしょう。安全なテーマでも、脆弱性などが見つかればすぐにアップデートが行われるので、早めに対処することも大切です。

既存テーマに多くのカスタマイズを加えたり、自社のオリジナルテーマを制作したいとなったときも、WordPressテーマのデザインに慣れている制作会社はたくさんあるので、依頼先に困ることはないでしょう。こうした環境もシェア最大であるメリットと言えます。

 

 

Googleも認めるSEO適正の高さ

WordPressはプラグインも豊富で、公式のもので約5万4,500が配布されています(2019年1月時点)。こちらも世界中の開発者によって日々新しい機能が提供されているため、「こういう機能のあるプラグインが欲しい」と思ったときに、すでに誰かがつくってくれていたという場合が多々あります。また、制作会社にオリジナルのプラグインを依頼する際にも、開発情報がインターネット上などに豊富にあるので、実現しやすく、制作コストが抑えられます。

企業のWebサイト運営でSEOというのは、注力するポイントの一つだと思いますが、SEOを強化するためのプラグインも多数あります。WordPressはもともとSEO適正の高いつくりをしていて、Googleの検索エンジン担当者もかつてGoogleのショーケースでそう認めていました。SEOのチェック項目を用意している企業もあると思いますが、おそらくその8割方は対応しているのではないでしょうか。プラグインでさらに強化することで、よりSEOを高めることができます。

現在Googleが検索順位を判断するうえで最も重視していることは、「優良なコンテンツであること」です。先述したように、この点においては、WordPressは適した環境を提供できています。

他には、表示速度も評価の対象となり「0.2秒以内にコンテンツの提供を開始する」ことが基準の一つとされています。また、「セキュリティ」も重視されます。しかし、速度とセキュティはWordPressでは担保できない部分です。ユーザー体験の向上を考えるという観点でも、導線設計やわかりやすい操作性などと同様に、速度やセキュリティは重要です。今後こうした点が改善されるかはWordPressの課題といえるでしょう。

 

WordPressの弱みを知りトラブルに備える

多くの強みを持つWordPressにも、苦手なことがあります。一つは、サイトの表示速度が遅くなりがちで、特にサイトのデータ量が増えると負荷が大きくなってしまう点です。もう一つは、セキュリティ面での脆弱性があります。どちらも動的CMSであるため、ユーザーからのリクエストがあるたびにCMSのデータベースにアクセスすることが要因です。

トラブルや脆弱性が見つかるたびにWordPress自体はもちろんプラグインやテーマのアップデートが出るので、随時対応していく手間もかかります。また、シェアが高いゆえに、ハッカーから狙われやすいという面もあります。

ハッキングはプラグインをはじめ、テーマやさまざまな手段で行われます。2017年1、2月頃には、複数のハッカーグループに脆弱性をつかれ、世界中でWordPressサイトの改ざん被害が150万件を超えるという出来事もありました。

また、ハッキング以外にも、相性の悪いプラグイン同士が干渉してログインできなくなったり、急なWordPress自体のアップデートで管理画面の使い勝手が変わってしまうなど、運用しているうえで困ったりわからなくなったりすることが発生することもあるでしょう。

しかし、WordPressはオープンソースのため公式のサポートサービスがなく、トラブルが起きた場合は各自で解決しなければなりません。

Webサイトの改ざんや不具合から企業イメージやマーケティングの機会などを損ねないためにも、平時から何かあったときにはサポートしてもらえる制作会社やサーバ会社と契約しておくと良いでしょう。その分費用はかかりますが、自社で本来の業務以外にセキュリティ情報をチェックし続けるのもコストと言えます。

外部の会社にセキュリティやサポートを依頼する場合、制作会社だとサーバは専門外で、サーバ会社はWordPressは専門外ということがありますので、サーバからアプリケーションまでワンストップで見てもらえるところがオススメです。

平田順子
※Web Designing 2019年4月号(2019年2月18日発売)掲載記事を転載

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