インバウンドでの購買は来日前に決まる 事例詳細|つなweB

現地でどうやって認知されるか

大企業は、莫大な広告宣伝費をかけて海外でのマーケティング、ブランディングを行なっています。しかし中小企業などでは、そこまでの予算規模で行うのは難しいでしょう。それでも、自社がターゲットとする国、属性の人が多く見ているメディアに広告出稿をしたり、SNSのアカウントをつくって運用するなど、何かしらの施策は必要です。

その際に、自社がターゲットとする国ではどのメディアがよく見られているかを知る必要があります。中国などはFacebookやGoogleが見られず、国内独自のサービスが利用されています。人気のモールT-mall(天猫)内の情報は中国の検索サイトBaidu(バイドゥ)ではヒットしないようになっているので、日本で一般的なリスティング広告でリーチしモール内のECサイトに誘導するという手法は使えません。そうした国ごとの事情を踏まえて、マーケティングを行っていきます。

ときには、その国のインフルエンサーとなる人がピックアップし、SNS等で紹介されることで一気に人気になるというラッキーが起こり得ます。しかし、それは狙ってできることではありません。中国にはKOL(Key Opinion Leader)と呼ばれるSNSにとても大きな影響力を持つインフルエンサーが何人もいます。彼らにお金を払って宣伝してもらうことも可能ですが、テレビCM並みの莫大なコストがかかります。

また、アウトバウンドとインバウンドは相互作用があり、現地で販売されることで認知が上がれば、インバウンドでの売り上げにも繋がります。そのためには、現地に営業マンを送り店頭で取り扱ってもらえるよう営業したり、展示会に参加したりといった努力も重要になります。

 

ストーリーを伝えて差別化をはかる

限られたリソースで行うマーケティングの中で、いかに好印象を残していけるかは、誰もが意識することでしょう。そんな場合の対策として、商品説明だけではなくストーリーを伝えるのは一つの方法です。

たとえば、「◯◯商店の日本酒は美味しいです」ということだけを伝えても、すぐ身近で買えるわけでもない海外の人にはピンときません。「自然豊かで水がきれいな土地柄、昔から日本国内でも有数の日本酒の産地であり、そこで100年に渡ってつくり続けてきた伝統的な酒蔵がつくった、地元でも名のある日本酒です」というようにストーリーとともに伝えることで、魅力的に感じてもらえるのではないでしょうか。商品とともに産地が印象づけられれば旅行で行く場所の候補になり、インバウンド需要を高めることにもなり得るでしょう。

 

平田順子
※Web Designing 2018年12月号(2018年10月18日発売)掲載記事を転載

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