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解析ツールの読み方・活かし方 Web Designing 2018年12月号

「環境分析」でマーケティング力をアップ(前編)

環境分析とは、自社を取り巻く内部・外部の経営環境をいくつかの視点から分析することである。自社の置かれている状況を把握して適切な情報を解釈できるようになれば、競合との優位性や市場の機会を見つけ出し、マーケティングに活かすことができる。この「環境分析」について、手順を追いながら2回に分けて紹介する。

 

環境分析の有用性(絶対評価と相対評価)

ウェブ解析を行うにあたり、最も重要な業務のひとつはデータによるパフォーマンス分析である。良し悪しを判断する評価軸は、アクセス解析ではオウンドメディアのデータが中心となるために「絶対評価」が中心となるが、絶対評価だけでは、市場環境における判断がしづらくなる。そこで他社との比較を「相対評価」として用いる(図01)。

市場におけるオンリーな存在の商品やサービスであれば、絶対評価でも分析をミスリードすることは少ないだろう。しかし、競争環境にある商品やサービスの分析であれば「他社と比較してどうなのか」が重要で、相対評価の方がよりユーザー目線に近いとも言える。

評価することのほかに、相対評価には、適切な目標値の仮説立案につなげやすいメリットもある。市場で同水準の評価がなされているサービスの競合関係において、Webマーケティングが先行している他社のデータがわかれば、後発である自社の目指すべき目標値(Webサイトのセッション数など)を定めやすくなる。

こういった、自社サイト以外の周辺情報を適切に選び、収集し、評価につなげられる能力は、ウェブ解析を行うにあたり重要な能力のひとつである。マーケティング対象のWebサイトや企業規模自体が小さい場合でも、業界上位プレイヤーの傾向や戦略を知ることで、対象事業のマーケティング戦略の仮説立案の参考になる(図02)。

01_絶対評価と相対評価
市場におけるオンリーな存在の商品やサービスであれば、絶対評価でも分析をミスリードすることは少ないだろう。しかし、競争環境にある商品やサービスの分析であれば「他社と比較してどうなのか」が重要で、相対評価の方がよりユーザー目線に近いとも言える
02_環境分析の基本的な考え方
ベンチマーク企業を見つけ、そこの持つベストプラクティスを見出し、自社もしくは顧客との差分を明らかにして目標を定め、成果につなげるための方策につなげること。環境分析ではこのことが基本となる

環境分析の進め方

今回は、6つのステップで環境分析を進める方法を説明したい。

Step-1 まずは市場トレンドが伸びているのかを確認し、次にその業界を牽引している法人(主要プレイヤー)の業績を確認。

Step-2 主要プレイヤーのサイト来訪者の属性や、サイトパフォーマンスは業績と連動しているのか、サービス内容と連動した傾向なのかなど、各社の差分とサイトパフォーマンスを併せて確認。

以上の2ステップで、ベンチマーク企業のWebサイトを見つける。ベンチマークを設定したら、自社とベンチマーク企業の差分を調査し、自社に活かせるベストプラクティスの仮説を立てることに進む。

Step-3 Webサイトへの来訪経路から、集客への取り組みの違いを確認。

Step-4 SEOのパフォーマンスを確認し、検索流入への取り組みの違いを確認。

Step-5 表示速度を確認し、閲覧ストレス軽減への取り組みの違いを確認。

Step-6 更新頻度や更新内容を確認し、ユーザビリティやコンテンツへの取り組みの違いを確認。

以上のStep-3~6によって、「広告施策・PR施策・SEO施策」「ユーザビリティ改善」「更新頻度設計」「UI設計」「コンテンツマーケティング」などに関わる、自社にとって最適な施策の発掘につなげることができる(図03)。

では、具体的な調査手法と調査ツールをご紹介しよう。

03_Step-1~Step-6までで行うこと
業績やWebサイト来訪数などのおおまかな情報でベンチマーク企業のWebサイトを見つける。ベンチマークを設定したら、より施策視点の情報を元に自社とベンチマーク企業の差分を調査し、自社に活かせるベストプラクティスの仮説を立てることに進んでいく

 

Step-1. 業績:市場トレンド、主要プレイヤーの確認

1. 市場のトレンドを大きく把握

ベンチマーキングを始めるには、まず、業界全体の傾向をマクロ視点で捉えることから始める。伸びている業界なのか、需要期、閑散期などの季節性はあるのか、などの確認を行う。業界全体の傾向を示すものとして、Webマーケティングにおいてよく利用されるデータが、検索トレンドだ。業界を示すワードが、ネットでどのくらい検索されているのか、検索量が伸びれば、その業界の需要が伸びていることと近しいだろうと解釈することができる。このデータを確認できるツールとして代表的なのが「Google Trends(https://www.google.co.jp/trends/)」である(図04)。

この調査では、どんなワードがその業界の伸長を指し示しているのかを推測するセンス、つまり「その業界への情報感度」が重要となる。センスに自信のない方は、GoogleやYahoo! Japanなどの各媒体が提供しているリスティング広告のキーワードアドバイスツールなどを利用して、検索ボリュームの多いワードを調べるのも手段のひとつとなる。

2. 業界の主要プレイヤーを確認

Google、Yahoo! Japan などの検索エンジンにて「業界名+業績」「ランキング」などの検索ワードで探すと、その業界のランキング記事を掲載したWebサイトがヒットする(図05)。こうした記事を参考にすることで業界の主要プレイヤーを確認することができる。今回は「業界動向ランキング」(https://gyokai-search.com/4-kesyo-uriage.htm)というWebサイトのランキングを参照している。検索結果に少し古い情報しか上がってこない場合は、検索ワードに直近年度の数字も入れて検索してみてほしい。

ランキングの並び順と併せて、数字の差異の大きさ、市場規模に対して上位数社のシェア率が大きいのか、それとも分散しているのか、なども考察しながら見ていく。それらの状況と各メーカーの製品や販売方法の特性なども加味すると、ランキングの要因や各社の個性などが見えてくる。

3. 各プレイヤーの業績を確認

今回は参考に、ランキング1位だった「S社」を「日経会社情報」で調べてみる。

詳細情報は有料会員のみ閲覧可能となるが、売上高の情報は無料閲覧の範囲で掲載されているので確認することができる(図06)。また、その下の方に画面をスクロールすると「業界から銘柄を探す(図07)」という機能がある。ここでは当該業界の主な銘柄=企業が時価総額の順に確認することができるので、先のランキングと併せて参考にすることができる。

あまり詳しくない業界の分析をする場合に、知っているブランドが業界大手であるように思い込んでしまい、結果的に分析をミスリードしてしまうことがある。企業のパフォーマンスを示す数字は様々あるものの、売上は消費者からの評価を表すわかりやすい数字なので、分析に入る前に、こうしたサービスを利用して売上情報を確認しておくことは重要となる。

04_市場のトレンド把握
GoogleTrendを利用し「コスメ」と「メイク」という2つのワードで調査。どちらも直近1年の数字の推移では大きな上下差異はないが、過去10年で見てみると、「コスメ」は緩やかな上昇傾向、そして「メイク」は5倍ほどにまで上昇していることがわかる。ただし、直近5年ほどは数字の上昇傾向が収まっており、大きなニーズ増加などの傾向はないことが伺える
05_業界の主要プレイヤーを確認
市場規模が2兆円と言われるコスメ業界において、上位2社の市場シェアが圧倒的な様子がわかる。4位と6位は基本的に無店舗販売(訪問販売・通信販売など)を主体としており、5位は男性向けに特化した製品ブランド。上位2社はコスメだけでなくトイレタリー全般の製品を扱っており、その意味では市場における社名認知度が抜きん出ているのかもしれない
06_各プレイヤーの業績を確認①
日経会社情報によると、業界全体として直近5年は大きな伸長はないが、S社の売上から、上位企業による市場の寡占化が進んでいる印象を受ける。業界成長が鈍化しているなか、上位企業の寡占化が進んでいるとなると、上位以外の企業にとっては厳しい状況だと思われる。このように、全体、各社のトレンドを合わせみることで、業界のコンディションを深掘る
07_各プレイヤーの業績を確認②
日経会社情報では、「業界から銘柄を探す」のコーナーにて、業界内の他社情報を確認することができる。時価総額には売上だけでなく将来性などの期待値も含まれるので、ベンチマーク先を探す手段の一つとして利用できると思われる

 

Step-2. 来訪数:Webサイトのパフォーマンス確認

1. Webサイトのアクセス数を調べる

市場の傾向、各社の業績などのデータの整理ができたので、ここからはWeb関係のパフォーマンスの確認に進む。まずは上位5社のWebサイトへの来訪数を見てみよう。

SimilarWeb は視聴率モニターなどをもとにした推計値を基本としており、Google アナリティクスなどの全数データとは値が異なる。このため効果測定などに SimilarWeb の数字を利用する場合は注意が必要となる。今回のように、他社との比較や、過去との比較など、相対評価として利用することをお勧めする。

SimilarWeb に調査したい対象WebサイトのURLを入力すると、そのサイトの来訪数などのパフォーマンスを調べることができる。

来訪数や直帰率などの基本的なデータの過去3カ月間の月平均値を確認することができるほか、過去半年間の来訪数の推移をグラフで見ることができる。

ただし、無料版の場合は、URL第二階層以下を指定した調査ができないため、調査対象はURL第一階層で調査できるサイトに限られる。

2. 来訪者の属性を調査する

Mark+ に調査したい対象WebサイトのURLを入力すると、そのWebサイトの来訪数などのパフォーマンスを調べることができる。サイト来訪者の属性を確認する場合には「ユーザー属性」のメニューから調査する。eMark+ の無料版では直近1カ月間の情報を確認することができる(図09)。

年代、性別などのほか、子供の有無や年収などの情報もあり、業界によっては分析の有用な追加情報とできる可能性がある。

08_サイトのパフォーマンスを確認
SimilarWebにより業績よりもサイトのパフォーマンスが高い企業は、Webマーケティングに力を入れている、もしくはWebと相性の良い製品を持っている、可能性が考えられる。逆に、業績よりもWebサイトのパフォーマンスが低い場合は、Webマーケティングに注力していない可能性が考えられる
09_サイト来訪者の属性を確認
Mark+で調査対象各社の来訪者が持つ各々の属性に偏りがないかを確認。性別、年代、地域、職業、未既婚、子供有無、年収、など、ツールによって様々な情報を確認できるが、無作為に多くのデータを収集するよりは、その業界、その企業、その製品などの特徴を表しやすい項目にフォーカスした分析を行うことが、ミスリードのない分析につながる

3回目の購入に至る割合を上げる

以上の2ステップでベンチマーク企業のWebサイトを設定したら、次に自社とベンチマーク企業の差分を調査し、自社に活かせる最適な手段の仮説を立てることに進むことができる。

 

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Text:中川 太
ウェブ解析士マスター。デジタルマーケティングのサービス提供を主業務とし、メディア構築、広告、CRM、などの広告代理店的な業務全般を提供。分析、プランニング、ディレクションなどの他、サービス開発も行う。また、VR/AR/IoT/AI/Robotなどのフィジタルコンテンツをマーケテイング活用するためのデータプラットフォーム事業にも取り組む。
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Text:一般社団法人ウェブ解析士協会
事業の成果に導くWeb解析を学ぶ機会の創出、研究開発、関心を持つ人たちの交流促進、就業支援などで、Web解析を通じての産業振興やWeb解析の社会教育を推進する。

掲載号

Web Designing 2018年12月号

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2018年10月18日発売 本誌:1,559円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

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2017年、訪日外国人の数は2869万人にのぼり、毎年400万人のペースで伸びてきているといいます。政府は、2020年に4000万人に乗せるという計画を公表しており、今後ますます国をあげて「訪日外国人増大」の波は確実に大きくなっていきます。

日本国内に向けた商品展開や売上に行き詰まりを感じている企業をはじめ、当然この「訪日顧客」の存在を無視する手はありません。さらに言えば、インターネットにより訪日外国人だけでなく世界中の人々に自社の商品・サービスの情報を届けることができる時代に、国内だけを見て一喜一憂していていいのでしょうか?

…とはいえ、

じゃあ何をすればいいのよ?
日本との文化の違いは大きな壁じゃないの?
どこの国を狙えばいいかわからない
売りたい商材、狙う国によってウケるアプローチは違うよね?

などとおっしゃる方も多いでしょう。そこで、海外を相手に「売り込む」「呼び込む」「買ってもらう」3つのアプローチを軸に、海外マーケティング戦略の基礎から1年で実現できる具体的な手法・考え方を、はじめの一歩から教えます。


[第1部]
■海外進出のために考えるべきことと準備すること
 ●売るのは「モノ」から「コト」へ
 ●海外の人に向けて、自社商品は何がウリなのか
 ●海外顧客に対応するためのWebでの受け入れ対策

■[Webで海外を相手にするアプローチ①]海外進出(アウトバウンド)
 海外に売り込む
  海外で取り扱ってもらうにはまず何をすればいい?
  ルールや法律はどちらの国のものが適用される?
 
■[Webで海外を相手にするアプローチ②]インバウンド
 ●日本向けと海外向けでコンテンツマーケティングの考え方は違うのか
 

■[Webで海外を相手にするアプローチ③]越境EC
 ●海外から自社ECショップへの集客術
 ●関税・免税はどう対処すればいい?


など

[第2部]

■世界地域別:進出とらの巻
第1部「海外を相手にする3つのアプローチ」を、自社ではどの国に仕掛ければいいでしょうか?
市場、文化、国民性、言語、法律、税制などアジア、ヨーロッパ、アメリカ、その他。地域独特の課題とクリアするヒントを解説します。

●自社の商品はどの国が狙い目?
 ターゲットにする国の選定基準

●各地域別攻略のヒント
 中国、東南アジア、アメリカなど


[第3部]

■言葉の壁をのりこえろ!

・ただの自動翻訳では客は集まらない!
・翻訳サービスの実際:作業期間・費用感
・サイトの海外対応で必ずぶつかる諸問題をできるだけ低予算で解決する
・テキストを使わないアプローチ



[第4部]

■海外戦略は決済対応が基本!

・地域別決済システムの有利不利・そのキメテ
・各国の決済事情への対応方法
・海外との決済関連の注意点
・低コストで導入できるサービス

など

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