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ECサイト業界研究 Web Designing 2018年12月号

越境ECのイロハ ますます拡大路線の越境ECを始めるポイント

一昨年ぐらいから一気に注目が集まった越境ECは、次のステージに向かっています。以前はEC未経験者も集まり、ちょっとしたブームになっていましたが、現在ではかなり具体的な実績を残しつつ、各社それぞれの越境EC事業を進めています。また、東京都や各行政機関も積極的に越境ECに展開しようとしています。この背景や現状について今回はお話します。

越境ECの背景

越境ECの周辺は、現在かなり盛り上がっています。この盛り上がり方は一昨年の「越境ECブーム」とはまったく違い、具体的な実績で形になっています。例えば、日本でボトルや中国向けのパッケージをつくっている企業は年内から年初にかけても仕事が入らないぐらいの活況です。この流れを受け、行政も活発な動きをし始めました。東京都は現在TVCMも行って平成30年度東京都メディア活用販路開拓支援事業で越境ECを行いたい企業を集めています(01)。

他の行政や関係機関もふるさと納税のように、越境ECをやりたいと考えている都道府県が多くあり、私はますますこの先も越境ECは拡大傾向にあると考えています。

私自身、その潮流を肌で感じた出来事がありました。2017年9月に中国では最大規模の深セン越境EC協会が来日し、私が代表するJECCICAと情報交換会を実施しました。30名を超える中国の方が来日し、中国と日本の越境ECをもっと盛り上げたいという主旨で話し合いをしました(02)(03)。

社会的に見ても、日中の政府間でも経済の話がされていることもあり、かなり前向きに越境ECが捉えられることがわかります。この背景としては、「越境ECのための物流や決済方法といったECに必要なインフラが整ってきた」「中国の新EC関税が、ふらつきながらもなんとか軌道に乗り始めた」「中国政府としても越境ECを伸ばしたい意向がある」といった3つがあり、この流れで深セン越境EC協会が来日したと考えられます。

余談ですが、越境EC協会の皆さんは会談終了後、全員でドラッグストアに行って大量の化粧品や目薬などを購入されていきました。ひとつの買い物かごに「大盛りの目薬」を見たときは日本の商品の人気の高さを感じました。

01 東京都の越境ECを活用した中国での販路開拓支援企業募集
東京都の産業労働局では、インターネットなどのメディアを活用して新たな販路開拓に取り組む都内中小企業に対し、今年度新たに中国における越境ECを活用した支援を実施しています。2018年は中国の越境型海外嗜好品ECプラットフォーム「寺庫(Secoo)に開設された東京都特設サイトに商品が掲載する試みを実施し、出品企業を9月末まで募集していました
02 深セン越境EC協会が来日
2017年9月の深セン越境EC協会とJECCICAとの会談を受け、同年12月には深セン越境EC交流ツアーを開催し、日本から15名が深センに訪問しました。ここでも、日中の越境ECをお互いに盛り上げたいという情報交換が行われました
03 深セン市の日本館
中国広東省の深セン市には「日本館」という施設があります。そこには化粧品やサプリ、バッグ、雑貨など日本のさまざまな商品が所狭しと並んでいます。この日本館の目的は、日本企業と中国企業のマッチングです。私もこのマッチング大会に参加したのですが、とても白熱した取引という感じで販売するぞと言う気持ちがないとただ単に冷やかされて終わりになってしまいます。この商品は絶対に良いという気持ちを持った販売スタッフや開発したメーカーでないと圧倒されてしまいます

 

越境ECを始める手順

越境ECをスタートさせる順番としては

①商品の選択 ②ショッピングカートと決済の選択 ③翻訳してサイト反映 ④物流の契約 ⑤カスタマーサポート

まずはこの順番でスタートしてみましょう(04)。お試しで始めて、いけそうだと思えばマッチングやテストマーケティングなどでどんどん進めていくのがよいでしょう。

中国において大事なのはマーケティングです。中国向けにまったくローカライズされていない、名前も知られていないブランドや商品などは見向きもされません。これは香港でも台湾でも同じなのですが、日本の食品やお酒がスーパーや百貨店に並んではいても、やはりブランディングされている商品の方が売れているとはっきりわかります。売れている商品はマーケティングもしっかり行っています。

そのあたりは今号の特集にお任せするとして、本連載では先述の手順におけるポイントを簡単にまとめたいと思います。 

04 越境ECを始める5段階
これから越境ECを始めるなら、まずはこの順番で決めていくのをお勧めします。ポイントになるのは「その商品は越境ECに適しているか」、そして、ターゲットとする国の主要決済手段への対応と、多言語化になります。そして最後に、関税や条約、その国の法律に則った物流の確保ということになります

「できる」商品と決済対応

まずは「商品の選択」。よく日本酒やジャパニーズウイスキーを売りたいという要望を聞くのですが、お酒は国対国の関税や法律がありますので、越境ECではほぼ売れないと思ったほうがよいでしょう。スイーツや食品も同じで、国によって法律や植物検疫がありここを乗り切らないと売れたとしても越境で送ることができず、税関通関で止められてしまいます。よく調べてから実施しましょう。例えば、お茶は中国では売れません。EUはOKです。中国は放射能の関係で関東7県での食品は工場での生産だけでなく、商品がこの地域を通過しただけでNGになります。

続いて決済です。現在、越境ECを見込んだ決済が出てきており、日本の決済会社も合弁の形で進出しています。海外で有名な決済と言えば、PayPal決済やアマゾンペイメント、中国ならAlipay決済、Wechat決済などです。もちろん為替のリスクや越境ECならではの課題はありますが、以前より確実に進歩しています。例えば、買い物された中国元をどうやって日本円にするかも、以前はかなりハードルの高い内容でしたが、現在ではさまざまな手法があります。

例えば、ペイオニアの決済システムは、中国以外では有効です。為替リスクがなく手数料も1%や2%という格安でドルやユーロなどの海外通貨と円の取引ができます。このあたりは各決済会社に詳細をお問い合わせください。

 

翻訳の注意点

日本のショッピングカートで最大の課題は、多通貨決済よりも多言語対応です。データベースはユニコードでもフロント側がEUC-JやShift-JISなどになっていることも多く、対応が迫られているシステム会社も多いはずです。フロントエンジニアも含めて今後の越境EC、インバウンド対応を考えた多言語対応を行うべきです。

ショッピングカートは、多言語対応のカートをお選びください。最低でも英語と中国語(簡体字または繁体字)が必須で、できれば順にハングルとスペイン語、フランス語まで対応できるとよいでしょう。越境ECユーザー向けとして言語をお考えください。

越境ECはインバウンドで日本に来た方にもアピールできます。本当は東南アジアのシンガポールやタイ、マレーシアのユーザーにもあわせた言語対応があるとベストです。翻訳は「GENGO」のようなクラウドソーシングのサービスならかなり安くできて、本格的な多言語サイトになります。Google翻訳は、現在のところまだサイトの翻訳には難しいと考えたほうがいいでしょう。ただ、メールやチャットでの会話は、Google翻訳も大丈夫です。一度翻訳した後、もう1度日本語に翻訳した時に、意訳があっていればOKです。

ひとつ注意としては、バナーに入っているキャッチコピーは、翻訳しないようにしてください。英語や中国語にはキャッチコピーという概念がありませんので翻訳できません。例えばスマッシュヒット!とかキレカワ女子などと言うキーワードを翻訳しても、ほぼ通じません。ご注意ください。

 

物流のポイント

次は、物流です。現在、日本郵便のEMS(国際スピード郵便)は税関通関でかなりの確率で止められてしまいます。これは中国の新EC関税の影響が大きく、中国物流企業から入る日本の商品は新EC関税があるため通るのですが、残念ながら日本物流企業の商品は新EC関税がないため止められてしまいます。新EC関税は中国人のIDが必要であり、かなりこだわった商品CSVでやりとりをする必要があります。この内容は公開されていないため、やれると思った日本企業が断念する理由の一つになっています(05)。香港や台湾は、ヤマト運輸やANAが実績も出していますし、越境ECでの流通も伸びているため、活発な動きと言ってよいでしょう(06)。

決済と物流でいえば、箱のサイズや重さでの料金設定の手間が越境ECの大きな課題であると言えます。出荷時での料金決定とユーザーとのやりとりといった工程は、ひと手間二手間掛かるところですが、ショッピングカート内でAPI連携して、この最終工程での梱包状態の費用まで決めてしまう流れも強くなっています。

最後に、 カスタマーサポートは、中国ユーザーはチャットでメールは文化としてまったくありません。電話でのサポートはあります。ただ、ほとんどチャットだと思って大丈夫です。他の国はメールで大丈夫です。Facebookユーザーが多い国は、Facebookメッセージも有効です。

05 中国への物流はECMSやSF
物流に関しては、中国はECMS社やSF社を選べば大丈夫です。日本企業は本文のとおり税関通関できませんのでご注意ください。その他は日本郵便のEMSやSAL便で行けます。写真は香港のSF車
06 現地のヤマト運輸は大活況
実際に香港のヤマト運輸に訪問してきましたが、特に台湾は定期的に訪問するたびに巨大化しています。内部の写真は取れないためどのようなイメージか分かりにくいと思いますが、ざっくり言うとユニクロの物流倉庫並みと言うとなんとなく感覚がわかるかなと思います

現地調査の方法

越境ECというとすぐにシステム改善を依頼されることも多いのですが、まずはどこの国にどの商品を販売するかです。これは自社の本店サイトでGoogleアナリティクスや競合先のサイトでどの国からアクセスが来ているかを調べることからスタートしてください。

すでに越境ECで売れている商品があれば、それを伸ばすことを選択するのがよいでしょう。他の商品も検討したいということであれば、越境ECの倉庫見学もよいです。実際にどのような商品が越境ECで売れているかが一目瞭然です。

こういう調査もせずに、海外の国すべてに販売したいとか、行きたい国順に販売したいとおっしゃる社長や店長がいるのですが、まったくもってその国のユーザーを無視していると言わざるを得ません。やはり現地に行って、現地の会社や植物検疫などを回り、情報を得るのが大切です。

中国で言えば、日本の10倍の人口があってセレブも日本人以上にいると言われていますが、北京や上海と深センや広州ではまったく別のユーザーです。同じ中国人でも言葉さえ通じないこともあります。

一般貿易と違って、越境ECはすぐには爆発的な売上にはなりにくいものです。だからこそ、まずは越境ECを始めて、現地調査も行いながら進めましょう(07)。

07 生の声は現地で聞く
深センの日本館でのマッチングに参加したり、上海の三越伊勢丹の地下にあるスーパーではテストマーケティングも実施してくれます。中国人がどんな商品が欲しいかの生の声を聞くのがよいです
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Text:川連一豊
JECCICA(社)ジャパンE コマースコンサルタント協会代表理事。フォースター(株)代表取締役。楽天市場での店長時代、楽天より「低反発枕の神様」と称されるほどの実績を残し、2003 年に楽天SOY受賞。2004年にSAVAWAYを設立、ECコンサルティングを開始する。現在はリテールE コマース、オムニチャネルコンサルタントとして活躍。 http://jeccica.jp/

掲載号

Web Designing 2018年12月号

Web Designing 2018年12月号

2018年10月18日発売 本誌:1,559円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

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2017年、訪日外国人の数は2869万人にのぼり、毎年400万人のペースで伸びてきているといいます。政府は、2020年に4000万人に乗せるという計画を公表しており、今後ますます国をあげて「訪日外国人増大」の波は確実に大きくなっていきます。

日本国内に向けた商品展開や売上に行き詰まりを感じている企業をはじめ、当然この「訪日顧客」の存在を無視する手はありません。さらに言えば、インターネットにより訪日外国人だけでなく世界中の人々に自社の商品・サービスの情報を届けることができる時代に、国内だけを見て一喜一憂していていいのでしょうか?

…とはいえ、

じゃあ何をすればいいのよ?
日本との文化の違いは大きな壁じゃないの?
どこの国を狙えばいいかわからない
売りたい商材、狙う国によってウケるアプローチは違うよね?

などとおっしゃる方も多いでしょう。そこで、海外を相手に「売り込む」「呼び込む」「買ってもらう」3つのアプローチを軸に、海外マーケティング戦略の基礎から1年で実現できる具体的な手法・考え方を、はじめの一歩から教えます。


[第1部]
■海外進出のために考えるべきことと準備すること
 ●売るのは「モノ」から「コト」へ
 ●海外の人に向けて、自社商品は何がウリなのか
 ●海外顧客に対応するためのWebでの受け入れ対策

■[Webで海外を相手にするアプローチ①]海外進出(アウトバウンド)
 海外に売り込む
  海外で取り扱ってもらうにはまず何をすればいい?
  ルールや法律はどちらの国のものが適用される?
 
■[Webで海外を相手にするアプローチ②]インバウンド
 ●日本向けと海外向けでコンテンツマーケティングの考え方は違うのか
 

■[Webで海外を相手にするアプローチ③]越境EC
 ●海外から自社ECショップへの集客術
 ●関税・免税はどう対処すればいい?


など

[第2部]

■世界地域別:進出とらの巻
第1部「海外を相手にする3つのアプローチ」を、自社ではどの国に仕掛ければいいでしょうか?
市場、文化、国民性、言語、法律、税制などアジア、ヨーロッパ、アメリカ、その他。地域独特の課題とクリアするヒントを解説します。

●自社の商品はどの国が狙い目?
 ターゲットにする国の選定基準

●各地域別攻略のヒント
 中国、東南アジア、アメリカなど


[第3部]

■言葉の壁をのりこえろ!

・ただの自動翻訳では客は集まらない!
・翻訳サービスの実際:作業期間・費用感
・サイトの海外対応で必ずぶつかる諸問題をできるだけ低予算で解決する
・テキストを使わないアプローチ



[第4部]

■海外戦略は決済対応が基本!

・地域別決済システムの有利不利・そのキメテ
・各国の決済事情への対応方法
・海外との決済関連の注意点
・低コストで導入できるサービス

など

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