【AIとサービス】specifyー音声をタグ付きテキストへ 事例詳細|つなweB

音声のテキスト化にとどまらぬその可能性

レッジが提供する「specify」は、リアルタイムで音声をテキスト化すると同時に、その内容を分析し、自動でタグ付けをしてくれるサービスです。

サービスをリリースしたレッジの中村健太さんは、specifyは会議録の作成やコールオペレーションの記録、さらにはお客様の声の収集といった分野におけるデータ活用や解析に、大きな進歩をもたらすツールだと話します。

「これまでは会議録にしても、コールオペレーションの記録にしても、音声をいったん録音するなどして、後から誰かがテキスト化する必要がありました。経験したことのある方ならおわかりかと思いますが、書き起こしのテキスト入力は手間と時間のかかる、面倒な作業です。しかもせっかくテキスト化しても、情報の一部が欠損したり、担当した人の主観が入り込むことで、データとしての価値を失ってしまうことも少なくありません。また、せっかく書き起こされたテキストも、ひと目で内容を確認できないために、読まれることなく終わってしまうこともあります。そういったさまざまな課題を解決するのがこのspecifyなんです」

 

リアルタイムでタグが付くことのメリット

specifyの最大の特徴はというと、なんといっても「タグ付け」を自動で行ってくれる部分。あらかじめキーとなる単語を登録し、任意のタグと関連付けしておけば、会話の中にその単語が登場したところで、リアルタイムにタグ付けをしてくれます。

「タグ付けにはAIが使われていますので、事前の設定が必要になりますが、正確かつ柔軟に対応してくれます。現状で、すでに実用的に利用していただけると思います」

中村さんはこのタグが大きな意味を持つと言います。

「テキスト化した文章にタグがついていれば、仮にそれが長文でも、発言の意味の流れを容易に捉えることができます。またタグを目安にして、必要な箇所だけを選んで読んでいくこともできる。タグのないテキストと比べて、圧倒的に活用しやすくなるんです」

specifyの応用範囲はとても広いと言えるでしょう。例えば、議事録をタグ付きテキストにしておけば、会議でどんな内容が話されたのかを即座に理解することができますし、採用面接や面談の場で活用すれば、そこで何が伝えられたのかだけでなく、伝えられなかったのかも即座に明らかになります。面談者のみならず面接官の力を測る用途に活用することもできるのです。また、タグの数や出現頻度を数値化するなど、違う角度からの分析も可能になります。

「もうひとつ、タグがリアルタイムに付与される点を利用して、話しながら内容をチェックするといったこともできるようになります。これもまた大きな可能性を秘めた機能だと思います」

例えば、顧客との会話中に内容を分析し、「もう一息で契約に持ち込めそうだ」というアラートを表示するとか、話し忘れを指摘するといったことも可能でしょう。specifyは音声認識とタグ付けという2つのシンプルな機能を組み合わせたサービスですが、応用の幅は広く、さまざまな分野で力を発揮するサービスなのです。

 

AIの可能性を引き出す新しい枠組み「AISS」

さまざまな活用法が想定されるこのspecifyは、実は、レッジが提供する、新しいスタートアップ支援サービスである「AISS(AI Startup Studio by Ledge)」というスタートアップ支援サービスを利用してサービス化されたもの。同社の鈴木貴大さんによるとAISSは新しいタイプの支援サービスだと言います。

「AISSはコンサルのように単にアドバイスをするだけのものでも、インキュベーターやアクセラレーターのように物的・人的支援をするにとどまるものでもありません。協同で事業を起こすことで、人やモノ、ノウハウ、さらには資金に至るまで、サービス化に際して必要となる要素をすべて提供しようというものです。specifyに関しても、もともとベンチャー企業が持っていたアイデアを、協力しながら育ててきたものなんです」

 

AIのビジネス化を支えていく

なぜAIの分野でこうした取り組みが行われるのでしょうか。そこには「AIならでは」の事情があると言います。

「AI技術は進化の途上にあります。アイデアが良くてもビジネス化が難しいという側面もありますし、ビジネスを成長させていくスキームにも特性があります。レッジにはこれまでAIコンサルティングサービスを提供してきた経験とビジネス化を進めてきた知見があります。また、それを売る営業チームもいる。その点を活かしてほしいと考えているんです」

レッジとしては、自社の資産や既存の技術を活かすために「AIで新しい事業を起こしたい」と考えている企業や、その逆に、アイデアはあるものの、「それを実現するための資金や営業力がない」という起業家に、この仕組みを活用してほしいと考えていると言います。

この枠組を使ってspecifyのような、実用性が高く、将来に向けた可能性を秘めたサービスが登場することが期待されます。

 

小泉森弥
※Web Designing 2018年10月号(2018年8月18日)掲載記事を転載

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