【AIとサービス】アドエビスー正確な広告効果測定を実現 事例詳細|つなweB

広告効果測定を阻むクロスデバイス/クロスブラウザ

広告効果測定市場で、国内トップシェアを誇るマーケティングツール「アドエビス」。2004年のサービス開始から、世の中の変化に応じて、広告効果を測るためのさまざまな機能を提供してきました。そんな人気サービスが2018年8月にリリースした新機能が、AIを用いた「クロスデバイス機能」です。同サービスを運営する(株)ロックオン代表取締役の岩田進さんは、開発にいたった理由をこう語ります。

「弊社では、2004年の創業当初からインターネット広告の効果を計測し、簡単に可視化できるソリューションを提供してきました。その中で、5年ほど前から、デジタルマーケティングのあり方が変わってきたと感じていました。従来の広告をクリックして、ランディングページへ飛び、購入してもらうというような直接的なマーケティングから、SNS広告でユーザーに接触し、リターゲティング広告などで再度接触し、徐々に態度変容が生まれたらしかるべきタイミングで検索などをして購入してもらうという、時間軸の長いものに変わってきたのです(01)。

こうした消費者の購買までの行動や思考のプロセスを設計する、カスタマージャーニーというキーワードが取り沙汰されるようにもなってきました。しかし、時間軸の長い広告効果を測定するにあたり、クロスデバイス/クロスブラウザというのは、大きな障壁となっていました」

移動中や休憩時間にはスマホで、自宅ではPCやタブレットでというように、いまや複数デバイスでインターネットにアクセスする人は多くなっています。しかし、どのデバイスでも何らかのIDでログインしているというような場合を除いて、別のデバイスを同一人物が利用していると特定するのは困難でした。また、Cookieで計測しているため、同じスマホ内のFacebookアプリで広告を見て、Safariで検索・購入するというようなクロスブラウザでも、同一人物と特定できなかったのです。

「これには、マーケティングツールを提供する立場として、重大な課題感を持っていました」

そこでアドエビスが取り組んだのが、AIを用いたクロスデバイス機能でした。

 

AIが同一ユーザーの行動を紐付け

アドエビスのさまざまな機能の中でも、国内で初めてとなる独自開発のAIを導入したクロスデバイス機能により、クロスデバイス/クロスブラウザしたユーザーの特定が可能になりました。これはどのような仕組みで行われているのでしょうか。

「アドエビスで保有しているアクセスログデータが、年間で120億以上あります。これに加えて、さまざまな外部のサービスから、同一IDでログインしていて行動を追えるクロスデバイス/クロスブラウザしたユーザーのデータを購入しました。それらのデータをもとに、AIでバラバラの行動データからこれは同一人物のものだと類推していきます(02)」

たとえば教師データにあるAさんの行動パターンと近いタイプの人を不明ユーザーデータの中で見つけたら、きっとAさんと同じような行動をするだろう、であれば分断された行動の中でこれとこれが同一人物のものだろうと判断していくわけです。

「現在のところ、クロスデバイスと判定できたユーザーに関しての精度は90%にもなります。AIの学習が進めば、判定できる量や精度はさらに上がるでしょう」

 

クロスデバイス機能で何が変わるのか

クロスデバイス機能が登場したことにより、マーケティングはどのように変化するのでしょうか。

「SNS広告が気になってクリックすることはあっても、なかなかすぐそのまま購買とはなりませんよね。そうすると、その後にコンバージョンに繋がったとしても、従来は出稿した企業側は最初のSNS広告が顧客接点になったことがわからないので、せっかく効果が出ているのに『あのSNS広告は価値がなかったよね』と判断してしまいかねませんでした。このように効果がわからないことで、機会損失をしてしまうことを防げます」

取材時点でクロスデバイス機能はリリース前でしたが、数社のクライアント企業がテストユーザーとしてプレ導入をしていました。管理画面には、クロスデバイスしたユーザーの人数などがシンプルなUIで表示されます(03)。

「自社で立てた獲得単価の予測と倍以上違っていたなど、予想外の結果に驚いているクライアントがほとんどでした」

かつてない機能を実現した高機能なサービスですが、月額10万円ほどのアドエビスの一般的なパッケージを契約することで、誰でも利用できます。

「価格や使い勝手の面で極力ライトに導入できるようにすることで、なるべく多くの方に使っていだきたいと考えています。その方がみんながハッピーじゃないですか。デジタルマーケティングってとても難しくて大変なので、どんどん高度化しコストもかかるようになっています。そこをAIなどのテクノロジーを使ってできるだけシンプルに使えるようにしていくのが、我々の使命なのかなと思っています。ゆくゆくは、ボタン一つである程度のことまでマーケティングを自動化するくらいのところまで進化させていきたいですね。そのために、今後も企業努力を続けていきたいと思っています」

 

 

平田順子
※Web Designing 2018年10月号(2018年8月18日)掲載記事を転載

関連記事